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【イベントレポート】全国まちづくり会議2025の紹介

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全国各地で地域づくりに取り組む人たちが、年に一度集まる「全国まちづくり会議」。日本都市計画家協会が主催するこのイベントは行政だけではなく、民間の力でまちづくりを進めていこうという思いが形になる会議で、今年は記念すべき20回目を迎えました。今回は、日本都市計画家協会の会長で明治大学の専任教授でもある山本俊哉先生と山本研究室に所属する学生実行委員の皆さん5名(全員4年生)にお話を伺い、全国まちづくり会議の魅力や学生団体が主催したプログラムをご紹介します。

Fig1 サムネール

 

全国まちづくり会議の特徴について伺うと、山本先生はまず「この会議のいちばんの価値は、偶発的な出会いにあるんです」と話します。全国で草の根のまちづくりを続けている人たちが一堂に会し、そこで思いがけない対話やつながりが生まれていく。その化学反応こそが、この会議の核だといいます。

この会議はもともと「全国都市再生まちづくり会議」という名称で2005年に始まりました。第1回に小泉純一郎首相(当時)が登壇したことも象徴的で、「これからは民間の力で都市を再生していく」という時代の流れのなかで、都市計画の専門家だけでなく、市民や企業が主体となる場として形づくられてきました。行政や公的資金に依存せず、現場の実践者が運営してきた点も、この会議らしさの一つです。

主催する日本都市計画家協会も、職能団体としての出発から、社会課題の解決に踏み込む実践へとミッションを広げてきました。山本先生は現在その会長を務めて4年目になります。「全国まちづくり会議は、協会にとっても最も重要なメインイベントの一つです」と会長は説明します。

今年の大会は記念すべき第20回にあたり、テーマは「日常にきらめく魅力 埼玉から愛をこめて」一見何気ない暮らしの中にある地域の魅力を見つめ直し、全国の実践者たちと共有する場が目指されました。

そして近年、山本先生が特に力を入れてきたのが大会における学生の存在です。2年前、明治大学駿河台キャンパスで大会を開催した際、「学生をまちづくりの一員としてきちんと位置づけよう」と打ち出しました。地域と企業の間に入って動ける担い手として、学生が重要な役割を果たすはずだという考えです。今年も学生実行委員が中心となり、伝統的なポスター展示に加えて過去最大規模のセッションが組まれ、会場は熱気に包まれていたそうです。「来場者の引っ張り合いになるくらいでしたよ」と山本先生が振り返る言葉からも、この会議が持つ活力が伝わってきます。

具体的なプログラム紹介

全部で20以上のセッションが開催された2025年の全国まちづくり会議。その中でも明治大の学生が主体的に関わった4つのセッションを紹介します。

Fig2 当日のプログラム

全まちケンミンshow

学生企画のなかでも特に会場の熱量が高かったのが、「全まちケンミンshow」です。明治大学・芝浦工業大学・立教大学の学生が中心となり、それぞれ自分の出身地やゆかりのある地域を代表して登壇しました。企画の出発点は、埼玉県が魅力度ランキングで初めて最下位になったという話題でした。そこから「ランキングに振り回されるのではなく、自分たちの視点で魅力を語り直してみよう」という発想が生まれ、テレビ番組『秘密のケンミンshow』のオマージュとしてこのセッションが組み立てられました。

当日は「交通」「観光」「人柄」といったテーマごとに各地域の魅力が持ち寄られ、北海道、茨城、栃木、埼玉、千葉、京都、福岡、愛知、富山、香川の10地域が登壇しました。テーマごとに県の魅力を語っていくのですが、「そのポイントならうちの県も負けてない」とやり取りが応酬する場面も多く、2時間があっという間に過ぎていったといいます。

学生だけの内輪の議論にならないように、埼玉県庁OBの若林祥文さんや日本都市計画家協会副会長の木村静さんらを有識者として呼ぶことで、議論を支え会場の視点を広げていきます。木村さんは広島への愛が強く、香川の登壇者と意気投合するなど、場に独特の空気が生まれていたのも印象的だったそうです。

なかでも盛り上がったのが観光の話題です。香川側がうどんの「コシ」を激推しすれば、福岡側は「柔らかさの文化」で応戦し、会場には笑い混じりのバチバチした空気が走りました。また交通の議論では、空港やバス網が発達した地域が語られる一方で、香川ではフェリーの話が紹介され、「日常の交通としての船」が強く印象に残ったといいます。

最終的には観客の投票によってランキングが決まり、香川県が1位に選ばれました。ただ一方で、企画側としては「来場者にももっと議論に参加してもらいたかった」という反省もありました。来場者が想定以上に多く、かえって客席側が前に出づらい雰囲気になってしまったこともあったそうです。数字では測れない土地のリアリティを、言葉と対話で掘り起こしていく。その場の熱量こそが、このセッションの魅力だったように思います。

Fig3 全まちケンミンshow 当日の様子  Photo : Nozomu Ishikawa

見つけよう、まちの課題!〜地図とデータで読み解く、地域のリアル〜

学生実行委員の皆さんにお話を伺うなかで、「準備に特に力を入れた企画」として挙がったのが、この地図ワークショップでした。

対象となったのは生田・大宮・新座の3地域。高齢化率や人口密度、路線図、スーパーなどの日常施設、観光資源、今昔マップまで、さまざまなデータを地図に重ね合わせ、「歩くだけでは見えない地域の構造や問題点を発見してもらいたかった」と学生は話します。

当日はA0サイズの大きな地図を4分割し、班ごとに読み解きを進める形式でした。参加者は1班3〜4人ほどで、有識者も入りながら議論を深め、最後には「地域課題発見シート」と「未来のまちづくりアイディアシート」にまとめていったそうです。

Fig4_見つけよう、まちの課題 議論の様子

大宮班では交通の課題が中心となり、「南北は強いけれど東西が弱い」という指摘から、グリーンスローモビリティやLRT導入の可能性まで話が広がりました。一方で別の班では、高齢化率と防災を重ねて見ることで、交通問題を別の角度から捉え直す議論も生まれたといいます。

生田班は「初めての人に地域像を掴んでもらう難しさがあった」と振り返っていました。高台や緑地といった地形条件、大学以外の図書館がない点、都心アクセスの良さゆえの人口流出など、データを通して複数の問いが立ち上がったそうです。

学生は最後に、「知らないまちでも、データを重ねると急に見え方が変わる。その感覚を持ち帰ってもらえたら」と語ってくれました。

Fig5 見つけよう、まちの課題 当日の様子  Photo : Nozomu Ishikawa

論ぜよ学生!!まちづくりディベートバトル

学生企画の中でも異色だったのが、「論ぜよ学生!!まちづくりディベートバトル」です。JR大宮駅東口の再開発計画を題材に、「経済性を優先すべきか」「歴史や文化を重視すべきか」という対立軸で学生同士が討論するセッションでした。

登壇した学生は、実行委員3人に有識者1人が加わった4人編成のチームで議論に臨んだそうです。討論の合間には相談タイムが設けられ、「その場で有識者に助けてもらいながら進められたのが心強かった」と振り返っていました。

企画した学生によれば、ディベートをやろうと思った背景には、「まちづくりの議論は専門家の中だけで進みがちで、住民視点で意見をぶつけ合う機会が少ない」という問題意識があったといいます。だからこそ、学生があえて正面から意見を交わす場をつくりたかったそうです。

当日は「コミュニティを壊してしまうのではないか」という懸念に対して、「防災的にも再開発が必要では」という反論が返されるなど、ハードとソフトの価値がぶつかる議論になりました。一方で審査員からは、「コミュニティという言葉を使うなら、もっと具体的に語る必要がある」といった厳しい指摘もあったそうです。

学生たちは「準備が必要なので参加者を巻き込む形にはできなかった」と課題も語っていましたが、それでも実際にやり切ったことで、「まちづくりを自分の言葉で論じる経験になった」と感じたようです。緊張感のある討論を通して、学生にとっても大きな学びの場になったセッションでした。

Fig6 論ぜよ学生!!まちづくりディベートバトル 投票の様子

知ってさいたま!ーあなたは何問わかる?知って谷中!ーあなたにとってまちあるきとは?

企画した学生によれば、狙いは「歩く・見る・語る」という行為を通して、地域の違いや“らしさ”に気づくきっかけをつくることだったそうです。

前半は、さいたま市の浦和・大宮・岩槻を題材にした写真クイズです。学生があらかじめ撮影した風景写真を見て、「これはどの地域でしょう?」と問いかけ、参加者が配布されたマップを手がかりに考えていく形式でした。クイズのたびに学生が地域の特徴や背景を解説し、正解数に応じて景品も用意されていたといいます。

後半は谷中を対象にしたまち歩きワークへと続きました。現地ではクイズや対話を交えながら歩き、最後には三重の同心円になったワークシートを使って振り返りを行ったそうです。一番外側には印象に残ったこと、その内側にはまち歩きの魅力、中心には「まちづくりとは何か」という問いを書き込む構成でした。

企画した学生は、「建物を見ることも面白いけれど、結局いちばん印象に残るのは“見知らぬ人と出会うこと”だった」と話していました。まち歩きが単なる観光ではなく、地域や他者との距離を少し変える体験になる。その感覚を共有できたことが、このセッションの成果だったように思います。

Fig7 知ってさいたま!知って谷中!_会場の様子

会議が目指す未来

全国まちづくり会議は、年々その規模を拡大しつつも、「誰もが参加できる場」であり続けようとしています。今回の学生企画から見えるのは、データに基づいた分析や対話を通じて課題を見つけ、楽しみながら地域の魅力を語り合う姿です。来年以降の会議でも、こうした若い担い手が中心となり、新たな発想を生み出すことが期待されます。

まちづくりに正解はありません。さまざまな立場の人たちが出会い、語り合うことで、自分のまちの未来が少しずつ形になっていきます。全国まちづくり会議は、そんなプロセスを支える大切な舞台なのだと、取材を通して実感しました。

Fig8 インタビュイーのみなさん(左から山本先生、長谷川智大さん、川上桃香さん、佐藤奈生さん、吾郷茉菜美さん、平田葉月さん)

各種URL

・イベント情報:https://sites.google.com/view/zenmachi2025

・山本研究室HP:https://www.isc.meiji.ac.jp/~onepiece/

・facebook:https://www.facebook.com/yamamotolab/?ref=embed_page#

 

※本記事に掲載した情報や写真は、山本先生、カメラマンの石川望さん(撮影写真はキャプションに明記)および山本研究室学生の提供によるものです。

取材・文-波島諒