☆設計コンペ取材記事☆「第52回 五三会建築設計競技」の魅力
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第52回五三会建築設計競技の概要・テーマ
第52回目を迎えた今大会は、課題・テーマ・概要が下記の通り発表されました。
■課題テーマ
概要は次の通りです。
■日程
2025年11月29日(土)13:30~ / 表彰式16:00~
■会場
オルタナティブスペース・コア 広島市中区基町19-2-448基町ショッピングセンター内
■応募資格
中国地方5県(広島県、岡山県、山口県、鳥取県、島根県)において建築を学ぶすべての学生。個人、グループどちらも応募可。
グループの場合は、全員が応募資格を満たす必要があります。
■審査方法
1次審査通過者の中から、公開審査会上でのプレゼンテーション、質疑応答を経て入賞者を決定します。
■入賞賞金
総額30万(※入賞数、賞金額他は、当日、審査員に一任とされています)
■審査員およびプロフィール
今大会は、SYnK(Studio Yamashita & Kang)共同主宰の山下貴成さん、YoungAh Kangさんを審査員としてお迎えしました。
SYnK は、2025年、「広島県営日吉台住宅1期新築その他工事に伴う基本設計及び実施設計委託」の公募型建築プロポーザルで特定者となり、現在、設計プロジェクトを進行中です。
■応募総数・一次審査結果
●応募総数は全体で47作品。応募大学内訳は下記の通りとなりました
・岡山県3作品(岡山県立大3)
・広島県43作品(近畿大工学部7、広島工大33、広島大1、福山大1、呉高専1)
・島根県1作品(島根大1)
応募学年の内訳は下記の通りでした。
・M2:1名、M1:16名、4年:2名、3年:24名、2年&高専4年:3名、1年:1名
●一次審査結果
審査会に先んじて、11月10日に一次審査結果が発表されました。下記9作品が選出され、公開審査に進むことになりました。
一次審査では2名の審査員により、設計作品の完成度や、その提案が「豪華な家」というテーマに相応しいかなどが十分検討されました。出展者の氏名や大学・学年等はブラインドで厳正に審査されましたが、47作品から選出された9作品中、7作品が大学院修士1年生によるものとなりました。選出された9作品は、公開審査会までに設計案のブラッシュアップと模型制作が進められました。
公開審査会レポート/高度なプレゼンと例年以上に作り込まれた作品群
公開審査会は昨年に引き続き、「広島市営基町高層アパート」に併設する、基町ショッピングセンター内のギャラリースペース「オルタナティブスペース・コア」で開催されました。
本年は、二次選出から公開審査会まで約2週間半のインターバルがあり、この期間で制作された模型は例年以上に大きく、「周辺環境がわかるように」という課題指定に対して、卒業設計なみに作り込まれた力作が多い印象を受けました。
タイトな会場は、開場から間もなく出展者や関係者で埋まり、開会式を経て、プレゼンが開始されると、次第に登壇者の熱気が伝わり、白熱した議論が展開されていきました。
プレゼンテーションが終わると、質疑応答を進め、最優秀賞、優秀賞、審査員特別賞を決定すべく、審査員による意見交換が行われました。
最優秀賞に選ばれたのは、近畿大学工学部大学院1年生の土屋優希さんと、長野耀さん、高橋遼さん、濱本悠伽さん、浦川良維さんのグループによる「都市を内包する住宅-フラクタルな関係性による選択的住まいの豊かさ-」となりました。
本作品は『現代住宅を「都市との関係を分断された箱」と捉え、敷地に地域住民が通行できる新しい道を設けて、外部の人が行き交うことで、住民の内と外の間に緩やかな関係を生む建築を提案します。「豪華さとは、他者や自然との距離を自らの感覚で調整できる緩やかな関係を持つこと」とし、「建具の取替を選択的に行う」ことで、住民自らが「私的領域と公共的領域を選択的に調整できる仕組み」をもつ「都市を内包する住宅=豪華な家」としていくストーリーを、テストケースを示して描いた作品』です。
優秀賞は広島工業大学大学院1年生の小西美海さんの「ひとつの円卓から、家へ」が選ばれました。
当初、優秀賞は2点の予定でしたが、もう1点の優秀賞を選ぶ過程で、山下審査員が推す「私をあらわすコスチューム」と、カン審査員が推す「みんなの家」が候補となりましたが、甲乙つけがたく、審査評価を重視すべきとの意見により、優秀賞は1点として、学部生によるこの2作品を審査員賞に決定しました。
審査員の意向で入賞4作品以外の5作品はすべて佳作として賞金授与対象となりました。
■受賞作品紹介
最優秀賞、優秀賞1点と審査員賞2点に選ばれた作品を紹介します。
(画像クリックで作品プレゼンボードにリンクしています)
■佳作一覧
(佳作作品は「作品名」がプレゼンボードにリンクしています)
重光真広、和才竜士、山中祥、山形歩夢
近畿大学 大学院 / 近畿大学
山本彩世
広島工業大学 大学院
殿村桃果、小島宗也、小西愛悠、牧野穂夏
近畿大学 大学院 / 近畿大学
石井杏奈、堀部孔太郎、山本ゆめ、横関竜弥
近畿大学 大学院 / 近畿大学
村上寛明、岡本珠羽、國司蒼真
広島工業大学 大学院 / 広島工業大学
■総評(要約)
審査員 山下貴成氏
本日はお疲れさまでした。受賞者の皆さんはおめでとうございます!
発表された作品は、それぞれ意欲的な提案ばかりで、レベル高いプレゼンになっていました。またテーマに対して、違う観点からの提案が多くでてきたことに驚きました。
私たちも日頃は実務で審査を受ける側にいまして、いざ審査をする側に立つと、結構、評価が難しいと感じました。
二次審査の流れや他の案とのバランスによって、僅差で受賞が決まることが現実ですので、佳作の皆さんも、今回はたまたま受賞に至らなくても、続けて違うコンペなどに出してもらえたらよいと思います。
これまで本コンペが52回も続いているのは素晴らしいことだと思っています。私は最初に学部2年生でアイデアコンペに出しましたが、それまでは学校の課題に、がむしゃらに向き合っているだけでした。建築雑誌でアイデアコンペの存在を知り、誌面に同世代の学生の作品が掲載されているのを見て焦りました。これはちょっと学校の課題だけではまずいと思い、それからいろいろなコンペに応募するようになりました。
そして、いまでも実務でひたすらコンペに挑戦し続けています。以前のコンペで表彰式の際に、建築家の古谷誠章さんがいわれていたのですが、最初はコンペに出しても、あるところまでは、毎回、落ち続けてしまう。でもチャレンジするうちに、こういう見せ方をしたら提案が伝わりやすいとか、今回は、こんなアイデアで攻めていった方がよいとか、なんとなくコツのようなものがわかってきます。そうして選考に残れるようになり、受賞経験も積みました。意外とそういうものだと思っていて、皆さんが設計をやる上では、実務でもコンペはついてまわるものだと思うので、本日は良い機会になったと思います。
今回、「豪華な家」というテーマとしましたが、それに正攻法で応えることがひとつ大事なことであるし、常々考えている建築的な問題意識を、コンペのテーマに当てはめて考えてみることも大切です。自分の問題意識を作品に投影してみせることは、いい経験になると思います。ぜひ今後の糧に、他のコンペにも積極的にチャレンジしてもらいたいと思います。
取材後記
原点回帰を進め、昨年より、中国5県の建築学生コンペとなった五三会建築設計競技は、本年47作品応募と前年(41昨品)を超えました。また1次予選結果発表から公開審査まで半月程度のインターバルを設け、十分時間を掛けてプレゼン準備や模型制作を行うことができるようになり、全国的にも高レベルの学生アイデアコンペになったと感じています。
今大会で目にした模型はスケールが大きく、細かな箇所まで作り込まれ、プレゼンボードも緻密且つ具体的な提案に溢れたもので、まさに卒業設計レベルといって良いでしょう。
設計提案も、建築物だけではなく、構造体、共用部、暮らし、環境、余白、住戸以外、公共と住民の関係性、最適なスケールなど実に多岐に渡り、7組の修士1年作品の中で、学部4年、3年による2作品が何ら遜色なく、「思いが伝わる設計提案」として審査員賞を受賞したことも大変印象深く感じました。
本年も「第52回五三会建築設計競技」の企画に尽力された五三会の皆様や大会運営を担った学生部会「匠会」の皆様に敬意を表し、感謝申し上げます。
建築学生の皆さんで、「第51回五三会建築設計競技レポート」、建設学生団体「匠会」の紹介記事を未読の方は、ぜひこの機会にご一読くださいませ。
☆設計コンペ取材記事☆ 「第51回五三会建築設計競技」の魅力
【建設学生団体・紹介】広島工業大学建築・環境系学科同窓会学生部会「匠会」
(記事構成:総合資格naviライター kouju64)
(取材・写真撮影:ARCS Field 水野高寿)
















