
「施工管理」の仕事内容とやりがい、向いている人のポイントについて【建設業の仕事】
施工管理は、建設学生の志望職種のなかでも、設計職と並んで最も人気が高い仕事だと思います。皆さんの多くが建設という「ものつくり」に興味をもって、建設系の学校で学んでいると思います。
究極のものつくりとは、原寸大の建造物を自らが造りあげることになるでしょう。
本記事では、施工管理者を目指して就活を開始している人から、興味があって、自分に合っているかどうか知りたい人までを対象に、施工管理の具体的な仕事内容や、やりがい、魅力について解説していきます。
どんな人が施工管理に向いているのか?適性を判断するポイントも紹介していきますのでご一読ください。
施工管理の仕事とは?
建設業の強みは何といっても施工能力。現場監督ともいわれる施工管理は、建設業の花形職種です。土木職では、トンネル・ダム・橋・道路などの社会インフラを扱うことが多く、建築職では、ビル・マンション・病院・学校などが多くなります。
建設現場では、施工管理の他に、職人や協力会社の担当者、発注者、設計者など多様な立場の人材が集まり、建造物の完成に向けて各自が役割を果たし、全員で協力して工事を進めていきます。
施工管理は建設工事のマネージャーとして、また建設現場のリーダーとして、現場全体を管理・監督し、建設工事を竣工まで導いていく仕事です。
施工管理が行う具体的な仕事は「Q・C・D・S・E」の管理
施工管理は、「Q・C・D・S・E」の管理を行ないます。
Q・C・D・S・Eとは、次の通り5大管理のイニシャルをとったものです。
それぞれについて詳しく解説していきます。
■品質管理(Quality)
設計通りの性能や安全性を確保すること。素材選びや施工方法が品質に直結します。
■原価管理(Cost)
予算内で施工を完了させるための費用管理をすること。材料費・人件費・設備費などを適切にコントロールすることにより、自社の売上・利益を確保する重要や役割です。
■工程管理(Delivery)
予定された納期・工期を守ること。工程表を作成して工事の進捗管理を行います。
工事期間中は天候や資材納期遅れ、事故など不測の事態も起こり得るのですが、定められた工期内で工事を完了するために手段を尽くします。
■安全管理(Safety)
作業員や周辺住民の安全を確保すること。事故防止のための教育や設備点検が含まれます。現場に立入り、危険個所を確認して是正指示も行います。
■環境管理(Environment)
自然環境や地域社会へ配慮し現場周辺を汚染しないことを徹底します。廃棄物管理、省エネ、騒音・振動対策などが求められます。現場作業員が働きやすい環境を整えることも重要です。
5つの管理業務は、それぞれが実は深く絡み合っています。たとえば、安全性が確保されていないと品質も保てませんし、環境への配慮がなければ地域との信頼関係も築けません。これらの専門的な管理業務を行いながら、発注者(お客様)、設計者、そして数多くの専門工事会社の職人さんたちと密に連携し、一つの目標に向かってチームを動かしていくことが、施工管理の使命です。
経験者が語る「施工管理のやりがい」5つの実例
施工管理の仕事は厳しい面も多くありますが、業務を通じて得られる経験や成果について、経験者から聞き取りをした具体的な事例を紹介していきます。
1.ゼロから巨大な建造物を完成させた時
施工管理は工事開始から竣工までの全工程に深く関与します。設計図書に基づき作業が進み、建造物やインフラが完成した瞬間には大きな達成感を得ることができます。また、担当した施設が多くの人に利用される様子や、生活・交通インフラとして機能し始めた場面にも立ち会います。完成した建物は長期間社会に役立ちます。
2.チームを統率し目標を達成した瞬間
施工管理は現場の統括者として、職人や協力会社の担当者、発注者、設計者など多様な立場の人をまとめ、目標達成に向けて調整します。困難やトラブルも発生しますが、コミュニケーションを重ね、チームとして協力して工程を進めます。全員で無事に工事を完了した際には、全員が達成感を感じ、連帯感が生まれます。
3.現場経験を経て成長を実感する
施工管理は経験を重ねることで問題解決能力や判断力、交渉力などを身につけます。工事中の様々な課題への対応やトラブル解決を経て、専門知識と技能が向上します。過去の経験を活かしながら、冷静に現場の課題に対処できるようになります。
そうすることで、自らの成長を実感し喜びを得ることになるのです。
4.信頼と評価が得られた時
業務経験の蓄積によって、より高度な工事や重要な役割を担当する機会が増えていきます。自身の提案や工夫が採用されることで工事が円滑に進む場合もあり、関係者から高評価や感謝を受けることがあります。資格取得など公的な認定を得ることで、自らの専門性が高まり、より責任ある立場を担うことも可能です。
5.社会への貢献を実感した時
施工管理は、道路や鉄道、ライフラインや建物の品質・安全性確保を担い、社会基盤の維持と発展に寄与しています。災害復旧工事や公共施設建設等の事業に携わった際には、地域・社会に貢献していることを実感する場面が多くあります。これらの業務は社会の安全と快適な暮らしを支える重要な役割を果たしています。
経験者が語る「施工管理の魅力」6つの実例
施工管理には、他の職種では得難い、たくさんの「魅力」があります。経験者が語る、この仕事ならではの魅力のポイントをまとめてみました。
1.成果が目に見え、カタチとして長く残り続ける
施工管理の仕事では、自分が携わった建造物が何十年、時には百年以上もその場所に残ります。完成した建物を家族や友人に誇りを持って紹介でき、多くの人に利用されることは大きな魅力です。
2.大きな裁量と責任でダイナミックに活躍できる
建設プロジェクトは現場ごとに異なり、新しい課題へ柔軟に対応する力が求められます。若手でも主体的に判断し、多くの人を動かす大規模プロジェクトに関われるチャンスがあります。責任は重いですが、その分自分のアイデアを形にでき、早期にリーダーシップやマネジメント能力を身につけ成長できます。向上心のある人には魅力的な環境です。
3.実務経験や資格取得がキャリアと収入に直結する
施工管理では、実務経験や1級・2級施工管理技士などの資格によってキャリアアップや昇給が見込めます。経験を積み、難関資格を取得することで、より大規模なプロジェクトや役職に挑戦でき、給与も上がります。特に経験豊富な1級施工管理技士であれば、年収700万~1000万円以上も可能です(企業規模や地域等により異なります)。努力が評価されやすいことが大きな魅力です。
4.多様なプロフェッショナルとの出会いで人脈が広がる
建設現場では発注者、設計者、職人、協力会社、資材メーカーなど多くの専門家と関わります。意見交換や協力を通じてコミュニケーション力や調整力が高まり、信頼や人脈は今後のキャリアにも役立ちます。
5.常に進化する技術や知識を学び、専門家として成長できる喜びがある
建設業界は、伝統的な技術を重んじる一方で、革新的でもあり、新しい技術や工法、環境配慮型の建材、省エネ設備などが次々と登場します。施工管理者は最新技術や動向を把握し、プロジェクトに適切に取り入れる必要があります。多くの技術者は「新しい技術を学ぶのが楽しく、スキルが上がる実感がある」と感じています。自己成長できる環境は大きな魅力です。
6.社会に必要不可欠な仕事であり、明るい将来性がある
建物や社会インフラは私たちの生活に欠かせず、新設だけではなく、維持・補修工事の需要は今後も拡大します。災害対策や環境配慮型建築、GX関連施設など、新たな社会的ニーズも増加中です。建設業界は人手不足ですが、その分、施工管理技術者の需要が高く、安定したキャリアを築きやすい仕事です。
施工管理に向いている人の特徴とは?
施工管理に向いている人には以下のような特徴があります。
1.コミュニケーション力と協調性が高い
施工管理者は多くの関係者と連携し工事を進めるため、コミュニケーションが得意な人が適しています。職人や設計者などとの協力が不可欠で、トラブル対応でも話し合いと代替策の提案が必要です。現場運営には周囲と協力する力が重要です。
2.責任感があり、意欲的にやり遂げる
施工管理には、工事全体の管理を担う、強い責任感と最後までやり抜く意欲が必要です。納期や安全、品質などの課題にも責任を持って対応し、予算調整も計画通り進める力が求められます。問題に対して責任を持ち完遂できる人が活躍できます。
3.トラブルへの柔軟な対応
施工管理では日常的に予想外の問題が発生します。天候不良などの遅延が起きた場合も迅速かつ冷静にスケジュールを見直すなど、柔軟に対処できる人が向いています。
4.屋外での体力仕事に抵抗がない
施工管理は屋外作業が多く、体力が必要です。夏の暑さや冬の寒さの中で作業したり、資材運搬や巡回などで長時間現場に立つこともあります。屋外で働くことが苦にならない人に向いています。
5.スケジュール管理が得意
施工管理に向いている人は、工事のスケジュールを把握し、各工程の調整ができる能力があります。工程が遅れた場合でも、次の作業や工数を整理し、影響を最小限に抑えます。スケジュール管理が得意なら、工事を円滑に進行できます。
6.マルチタスクが得意
施工管理には、多くの業務を同時に進行する力が必要です。例えば、進捗確認・資材発注・報告書作成などを並行して行います。そのため、マルチタスク能力のある人は施工管理に適しています。
施工管理に向いていない人の特徴とは?
すべての人が施工管理に適しているわけではありません。ここでは、施工管理に向いていない人の特徴を紹介します。
1.一人作業が好きな人は、施工管理にはあまり向いていません。
施工管理は、多くの関係者と協力して進める仕事です。コミュニケーションが苦手で単独作業を好む場合、現場で問題解決する際に支障が出やすく、チームワークが求められる職種です。
2.プレッシャーに弱く、変化が苦手
プレッシャーに弱く、変化への対応が苦手な人は施工管理には向いていません。建設現場では悪天候や資材の遅れなど予期せぬ事態が頻発し、柔軟な対応とストレス耐性が必要です。
3.トラブルに対してストレスを感じやすい
施工管理には予期せぬトラブルがつきものです。資材不足や機材故障などの問題発生時に、冷静さを欠くと、現場全体に影響してしまいます。ストレス耐性が低い人は、施工管理に不向きです。
4.リーダー役や指示出しが苦手
施工管理は現場全体をまとめる役割です。指示を出すのが苦手だと現場の進行に支障が出ることがあり、作業員の信頼を得られません。リーダーシップに自信がない人には負担が大きい仕事です。
5.体力仕事や長時間勤務が苦手
施工管理は現場での体力作業や、勤務時間が長くなることも多いため、体力に自信がない人には厳しい職種です。夏の暑さや冬の寒さの中での作業、緊急対応による早朝や深夜勤務もあり、体力に不安がある人には向いていません。
6.スケジュール管理ができない
施工管理では、プロジェクトの進行と各工程を計画通りに管理する力が必要です。スケジュール管理が苦手だと現場が止まり、納期遅延にもつながります。例えば、次の工程や資材の準備を忘れると作業が遅れます。計画性やスケジュール管理が苦手な人には、施工管理は向いていません。
施工管理が変わる!建設業が目指す「新4Kの実現」
かつて施工管理は、3K(きつい・きたない・きけん)のイメージを持たれていました。現場のマネジメントを行う施工管理と、実際に工事現場で作業を担う技能工を混同することもあったと思います。建設現場を見学したことがある学生は知っていると思いますが、現場を取り巻く環境は著しく変化しています。建設業界は技術者、技能職ともに人手不足進んでいますが、建設DXやICT施工の導入が進み、国土交通省が強力に進めているi-Construction2.0(建設現場のオートメーション)により、遠隔施工、自動施工が日進月歩で導入されて、現場事務所もクリーンな環境となっています。
建設現場の大変革に合わせて、日本建設業連合会が進めているのが「新4Kの実現」です。
新4Kとは、「給与が良い・休暇がとれる・希望がもてる・かっこいい」の4つを意味します。
給与面では、年平均7%以上の賃上げで「所得倍増」をはかることや、 40代の平均年収1,000万円超を実現することを目標としています。
休暇については、すべての現場を「土日祝日(夏季、年末年始休暇を含む)一斉閉所」とし、個人として多様な働き方・休み方を選択できるように改善することです。この実現のために、休みが無理なく取れる工期で受発注が進められるよう、業界をあげて取り組んでいます。
将来への希望については、退職金1,000万円超の確保や、技能労働者の 「社員化」の推進、技能労働者育成システムの導入があげられています。
最後の「かっこいい」は、DXの更なる活用でスマートな働き方を実現することなどをあげ、人材不足への対策は、女性の活躍促進、外国人材の登用、建設系以外の多様な人材の登用などで、「かっこいい建設業で働きたい」と選んでもらえるように、「建設業の本来の魅力」を積極的に発信していく方針としています。
総合資格ナビでは、本記事を読んで「施工管理で活躍したい」と感じた皆さんへ、今後も情報提供を通じて応援していきます。
(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)