
2025年 設計事務所 設計・監理収入上位30社・用途別上位10社ランキング【業界研究】
設計事務所の売上動向を把握する方法は?
設計事務所の2025年決算業績(前期決算)は、前年と比較して好調な結果でした。
但し、設計事務所の多くが非上場企業のため公開データが少なく、業界比較が難しい点があります。業界研究において、設計事務所の売上を把握する方法としては、大きく分けて2つあり、その1つは日経アーキテクチュア(日経BP社)による毎年恒例の経営動向調査です。
本年は、日経アーキテクチュア9月11日号で、設計事務所の経営動向調査が掲載されました。
多くの意匠系研究室や建築設計事務所が同誌を定期購読しており、皆さんも内容を確認済みかもしれません。110社以上のデータは非常に有用ですが、アンケート回答に応じた設計事務所に絞った集計である点は注意が必要です。
設計事務所の経営動向を知る、もう1つの方法は業界紙を購読することです。
業界紙には、売上高や個別事務所の設計プロジェクトなどが、タイムリーに掲載されます。反面、毎日チェックしていないと見逃してしまうことがあります。但し、業界紙は定期刊行物も発刊しています。
本記事では、日刊建設通信新聞社が2025年9月24日に発刊した「建設人ハンドブック2026」に掲載された「設計事務所の設計・監理収入」をもとにランキング形式で紹介します。
設計事務所上位30社ランキングと業界動向
設計・監理業務収入とは、設計事務所が設計業務と工事監理業務を通じて、建築主から得た収入=本業売上のことです。
2025年決算業績における設計事務所上位30社の設計・監理業務収入をランキング表としたもの掲載します。
2024年度の設計・監理業務収入は、上位30社のうち前期から実績を伸ばした設計事務所が25社で、全体金額も3年連続で増加となりました。
首位は日建設計、2位が三菱地所設計、3位が日本設計、4位がNTTファシリティーズです。 トップ4の設計・監理業務収入は3年連続で200億円を超えています。
日建設計は、約444億円の収入を確保しており、国内外の大規模プロジェクトや持続可能な設計に積極的な姿勢が高く評価されています。2024年度の収入は前期比6%減となったものの、業務効率化および採算性向上施策が奏功し、営業利益は約39億円へと拡大し、前年同期比298.6%増を達成しました。
NTTファシリティーズは、売上高を伸ばし、前年4位から3位へランクアップしましたが、営業利益も前年度比95.6%増の約47億円と大きく伸ばしました。
2024年度は、上位7社までが100億円以上の収入を確保しており、順位の変動はあるものの、8年連続で同じ事務所がランクインしています。
上位11位以下で、前年から伸長が著しい事務所を紹介すると、30位の奥野設計は収入が前年度比64.5%増で、39位から9ランクアップとなりました。また、収入が前年度比29.9%増となったINA新建築研究所は前年24位から19位へランクアップしました。
個々の設計事務所については、非上場で決算短信などが公開されていない企業も、自社ホームページに決算公告などを掲載している場合があります。
気になる設計事務所については、個別に企業ホームページを閲覧して、企業研究を進めていってください。
建物用途別の収入 上位10社について
本記事では、建物用途別の設計・監理収入上位10社をランキング表として掲載します。掲載する建物用途は、集合住宅・事務所ビル・商業施設・医療福祉施設・生産系施設・文教施設です。
■集合住宅
集合住宅分野の設計・監理収入で、日企設計が8年連続1位となりました。同社は再開発や超高層建築に強く、タワーマンションの実績が豊富です。アール・アイ・エーは増収に転じたものの5位へ後退しました。日建設計、日本設計、あい設計は特に前期比伸長が目立ちました。
■事務所ビル
事務所ビル分野の上位5社は変わらず、1位は日建設計(183億円)、2位三菱地所設計(172億円)、3位日本設計(95億円)、4位久米設計(45億円)、5位NTTファシリティーズ(34.5億円)です。
■商業施設
商業施設1位は日建設計です。続いて、2位には駅等の複合開発プロジェクトに強みを持つJR東日本建築設計がランクインしています。3位に三菱地所設計、4位に日本設計、5位は日企設計と、大規模組織設計事務所が上位を占めています。
■医療福祉施設
1位内藤建築事務所、2位梓設計、3位久米設計。10位には、規模は小さくなりますが、医療福祉施設で多数の実績をもつ、伊藤喜三郎建築研究所がランクインしています。
■生産系施設
生産系施設のランキングでは、NTTファシリティーズが172億円で首位です。日立建設設計が49億円で2位、JR東日本建築設計が44億円で3位となっています。また、東急建設コンサルタントは前期比81.9%増で8位に入りました。
■文教施設
文教施設は、教育・文化・スポーツのための公共施設を指し、学校や図書館、博物館、公民館、体育館、文化ホールなどが含まれます。
設計・監理収入のランキングは、1位久米設計(51億円)、2位佐藤総合計画(45.5億円)、3位梓設計(45億円)です。
まとめ
ここ数年、設計事務所の経営環境は改善傾向にあり、日経アーキテクチュアの調査によると、2025年度の売上高見通しで増加を予想する企業は54%、横ばいが39%、減少は7%であったということです。
多くの設計事務所が人手不足の解消を重要課題と考え、採用強化に取り組んでいます。
但し、新卒大量採用は一部大手事務所のみで、応募数や教育面の課題があります。
そのため、多くの事務所は年齢や経験を考慮し、即戦力となる有資格者のキャリア採用を重視しています。
設計職を目指す学生は、近年では設計事務所だけでなく、総合建設業の設計部門も含めて幅広く就職活動をしています。企業選びでは、関われる建築用途や仕事の進め方、キャリアパス、職場環境、安定性など多くの点を比較する必要があります。
設計事務所は選考が早い業界なので、志望する分野を参考に早めに企業研究を始めましょう。
(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)