特集【14】国土交通省が原則化!「土木工事の脱炭素アクションプラン」を公表しました【建設知識 土木編】

国土交通省は、直轄工事の建設現場で二酸化炭素(CO2)排出量を削減できる建設機械(GX建機等)や低炭素型コンクリート等の使用を原則化する方針を示しました。

2025年4月21日、この方針を「土木工事の脱炭素アクションプラン」として、ロードマップや施策をまとめて発表をしました。本記事では、この背景やプラン内容について紹介します。

「土木工事の脱炭素アクションプラン」公表の背景

■建設分野におけるCO2排出量の状況

わが国のCO2排出量の概ね2/3がインフラ分野に関わりのある排出とされており、インフラ分野の脱炭素化の取組を進める必要性が高い。

このインフラ分野に関わるCO2排出量については、建設機械からの直接的排出と主要材料の生産・建設輸送というサプライチェーンを通した間接的排出を含めて、インフラ等の建設段階が約13%、インフラの供用段階が約 15%、建築施設の利用段階が約33%の3つのフェーズに大別されている。従来は、土木工事の建設段階においての脱炭素化は民間企業に委ねられてきたため、発注者の立場から取組みを後押しする施策を「脱炭素アクションプラン」として、まとめ公表したものです。

■脱炭素アクションプラン公表の背景には品確法改正がある

国土交通省が脱炭素アクションプランを作成した背景には、2024年6月に改正された公共工事品質確保促進法があります。同法では、発注者の責務として、これまでの価格や工期などに加え、脱炭素化への寄与も考慮して資材や機械を採用するよう求められており、これに応える施策ということになります。

■「脱炭素アクションプラン」CO2排出量の削減方針

脱炭素アクションプランの対象には、施工者が建設現場で排出する「スコープ1」と「スコープ2」だけではなく、材料や製品の調達など製造等の過程で、工事業者以外が発生する間接的なCO2排出である「スコープ3」が含まれています。

スコープ1・2に該当する「建設機械の脱炭素化」と、スコープ3に該当する「コンクリートの脱炭素化」、「その他建設技術の脱炭素化」を合わせた3本柱として、国土交通省が直轄工事の建設現場で先進的かつ計画的に建設業界をけん引して、カーボンニュートラルを目指していくことをアクションプランの方針としています。

脱炭素アクションプランのリーディング施策と具体的なロードマップは?

脱炭素アクションプランで進めていくリーディング施策は、前述通り、「建設機械の脱炭素化」、「コンクリートの脱炭素化」、「その他建設技術の脱炭素化」となります。

アクションプランではそれぞれのロードマップが公表されました。

【1】建設機械の脱炭素化

2030年度を目途に、油圧ショベルから燃費基準達成建設機械の使用を原則化して、普及状況を踏まえながら対象機種を広げていく。

また2025年度から電動建機(GX建設機械)やバイオ燃料などを導入した建機の普及・促進を図ります。GX建機等は現在、導入が急速に進行中です。

「建設機械の脱炭素化」ロードマップは下表となります。

【2】コンクリートの脱炭素化

セメントの代わりに産業副産物のフライアッシュ(石炭灰)や高炉スラグを混ぜ込む低炭素型コンクリートについて、2027年度以降に用途を限定しながら使用を原則とします。

低炭素型コンクリートは既に導入した工事実績が多くなっており、導入コストの検証も進んでいる状況で、国土交通省によると、低炭素型コンクリートを試行した直轄工事において、43%が従来のコンクリートと同価格もしくは安価で導入できています。

従来品より導入コストが増える場合でも、CO2排出削減量を国が認証する「J-クレジット」によるインセンティブを踏まえると、2%がコストに見合っているとのことで、今後も試行工事を踏まえながら、原則化対象の用途や地域を検討していきます。

コンクリートにCO2を吸収・固定させるタイプについては、導入実績が少なく開発段階であるため、2030年度ごろまで技術開発や現場導入を進め、導入コストに対するCO2削減量の費用対効果を踏まえて、使用を原則とするか検討していきます。

「コンクリートの脱炭素化」ロードマップは下表となります。

【3】その他建設技術の脱炭素化

「その他建設技術の脱炭素化」では脱炭素の取り組みが評価される環境を整備していきます。

国交省国土技術政策総合研究所はCO2を含めた温暖化ガス(GHG)排出量算定マニュアル案を2024年6月に作成し、2026年度以降に直轄工事で本格運用を開始する予定です。建設現場での取り組みを可視化することで、費用対効果の優れた技術の開発や普及を後押しすることが狙いです。

2027年度以降には、脱炭素の実績に応じた工事成績評定や表彰制度でインセンティブが設けられます。2035年以降は、総合評価落札方式の入札でインセンティブを検討しています。

その他にも鋼材やアスファルトなどコンクリート以外の低炭素材料も用途を限定しながら使用を原則化していく方針です。

「その他建設技術の脱炭素化」ロードマップは下表となります。

まとめ

これまでも総合資格ナビでは、国土交通省直轄工事における脱炭素の取り組みや、GX建機について紹介してきましたが、今回、「土木工事の脱炭素化アクションプラン」として使用の原則化や、そのロードマップが明らかとなったことで、建設産業全体のカーボンニュートラル実現に向けた重要な施策となりますので、本記事で取り上げました。

2025年発表の国土交通省報道資料は下記リンク先で確認できますので、ぜひご参照ください。

国土交通省 土木工事の脱炭素アクションプランを公表しました!~建設現場のカーボンニュートラルに向けて~

 

(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)