特集【18】戸田建設が多目的最適化技術を活用したZEB設計支援ツール「とだゼブくん™」を開発、運用開始しました 【建設DX】

戸田建設は2025年5月9日、多目的最適化技術を活用したZEB設計支援ツール「とだゼブくん」を開発し、4月から社内運用を開始したことを発表しました。意匠図を基にコストや省エネ性能など相反する要素を同時に最適化し、顧客の要望に合わせたZEB提案を可能にするものです。

ZEBツールの必要性が高まっている

2050年カーボンニュートラル実現に向けて、建物の省エネ化が急務となる中、ZEBへの注目が高まっています。一方で、ZEB設計には以下の通り二つの大きな課題があります。

【1】設計にエネルギー計算を伴うため、作業負荷が非常に高い

【2】顧客ごとに異なるニーズを読み取り、最適なZEB提案に結び付けるまでに時間を要する。

上記課題は業界共通の悩みであり、建設各社が様々なZEB設計ツールを模索して開発しています。戸田建設は世界的に実績のある多目的最適化技術「modeFRONTIER®」を活用した設計支援ツール「とだゼブくん」の開発により、これらの課題を解決しました。

「modeFRONTIER」とは?

「modeFRONTIER」は、設計開発プロセスを革新する多目的ロバスト設計最適化支援ツールです。単なる計算ツールではなく、設計者の意思決定を支援するツールとして以下のことが可能です。

■主な機能と特長

【1】複数の目標(コスト削減・性能向上・重量軽減など)を同時に最適化

【2】CAD/CAE/Excel/MATLABなど様々なソフトウェアと連携し、設計検討を自動化

【3】多様な最適化アルゴリズムで効率的に最適解を探索

【4】ロバスト設計(環境条件などのばらつきがあっても性能や品質が大きく低下しない設計)の実現

【5】50以上の結果処理・多変量解析機能により「なぜ最適か」が理解可能

【6】直感的な日本語GUIで操作が容易

「とだゼブくん」の独自性について

多くのZEBツールが「計算の効率化」に主眼を置く中、「とだゼブくん」は「最適化」という新たな視点で差別化を図っています。

■他社ツールとの違い

【1】多目的最適化技術の採用

イタリアのESTECO S.p.Aが開発し、日本では(株)IDAJが販売する世界トップクラスの最適化エンジン「modeFRONTIER」をZEB設計に応用。「コスト」と「省エネ性能」という相反する要素を同時に最適化する「パレート最適解」を導き出し、顧客の優先事項に応じた最適提案を実現します。

【2】意匠図だけで設計可能な自動化技術

従来のZEBツールが詳細な建物情報を必要とする中、本ツールは意匠図だけからZEB設計が可能。わずかな建物情報から外皮・設備情報を自動補完し、設計初期段階で高精度なZEB提案を可能にします。

【3】短時間で数百の設計パターンを自動検証

窓や断熱材などの外皮仕様や空調機器を自動選定し、数百パターンのケーススタディを短時間で作成・分析。従来手作業では1~2週間かかっていた作業を数時間に短縮します。

【4】・コストと省エネ性能を「見える化」した意思決定支援

投資コストとBEI※1を軸にしたグラフで複数の最適解を視覚的に提示。「コスト重視」「省エネ重視」など、様々な選択肢からお客様のニーズに合わせた最適案を選べます。

「とだゼブくん」のシンプルな6つのステップ

①意匠図から外皮・室面積などの建物情報を抽出

➁建物情報から外皮仕様の自動選定と熱負荷計算を実施、最適な空調機器を自動選定

③外皮・空調機器情報をWEBPRO※2入力シートに自動転記、その後WEBPROの自動計算でBEIを算出

④コストを自動算出し、BEIとコストの関係を評価

⑤④の結果を踏まえ、外皮・空調機器を自動調整し、WEBPROにて大量の再計算

⑥お客様と一緒にグラフを見ながら、最適なZEB提案を選択

※1 BEI(Building Energy Index):建築物の設計一次エネルギー消費量を基準一次エネルギー消費量で除した値。値が小さいほど省エネ性能が高いことを示す。

※2 WEBPRO:国立研究開発法人建築研究所が提供する建築物のエネルギー消費性能を計算するプログラム。

戸田建設における今後の展開・まとめ

戸田建設では、ZEB設計の効率化を展開していくため、社内で「ZEB化のための設計ガイドライン」(2023/3/1発行)、「リニューアルZEB化のための設計ガイドライン」(2024/7/17発行)を周知して、設計業務に活用しており、今後は「とだゼブくん」と連携を図ることで更なるエネルギー計算の負担軽減を目指していくとのことです。

戸田建設では、「とだゼブくん」の活用を通じて、2025年度までに自社設計・コンサルティング業務のZEB化率50%以上を目指していく計画で、今後は、BIMと連携した外皮情報の自動拾い機能や、「コスト」と「ホールライフカーボン」の最適化機能の拡充などを進め、より包括的なZEB支援ツールへと発展させていく方針です。

出典:戸田建設株式会社プレスリリース2025.05.09

 

(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)