
【2025年3月決算】空調設備工事 上場大手5社売上高ランキングを掲載しました
本年も空調設備工事業 上場大手5社の2025年3月決算が出揃いました。
空調設備工事業界の受注環境は全体的に非常に好調となっています。2025年3月決算でも、各社の売上は増加基調にあり、企業努力や価格適正化への動きにより採算の改善も進んでいます。
今回、発表された決算短信では2026年3月期の見通しも開示されており、各社決算結果とその要因、今期の見通しについて、各社の決算報告書等をもとに解説します。
空調設備工事業 上場大手5社の2025年3月期連結決算は絶好調!最高益を更新する企業も!
下表は空調設備工事業 上場大手5社の決算結果を売上高順にランキング表としたものです。いずれも2025年3月期でグループ企業を含めた連結決算数値となっていますのでご確認ください。
出所:2025年3月期決算短信
空調設備工事業が好調である主な要因
近年、日本の建設業界はコロナ禍からの緩やかな経済回復を背景に、建設投資が増加基調にあり、2024年度の建設投資額は前年度比+2.7%増の約73兆円に達するとされていました。政府の公共工事への投資が堅調である上、企業の設備投資も拡大しており、大都市圏の再開発や工場新設など大規模プロジェクトの動きが活発化している現状です。これらを背景として、建築工事のボリュームが拡大していることが空調設備工事業界へ追い風となっています。
同時に日本全体で省エネ・脱炭素ニーズが高まっており、政府は2050年カーボンニュートラル実現に向けて、既存建築物の断熱改修や高効率空調機器の導入を支援する補助事業を展開しており、企業や施設に対してエネルギー効率の高い設備への更新を促進しています。
ビルのZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化や省エネ法改正により、オフィスビルや商業施設でも老朽した設備の更新需要が増加し、空調設備工事各社には省エネ改修工事の受注機会が増えています。
また空調設備工事業者自身も、環境意識の高まりから、エネルギー効率やカーボンフットプリント※を意識した提案を強化しており、施主側の需要喚起につながっていると思われます。
※カーボンフットプリント:商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して温室効果ガスの排出量を把握すること。
2024年度の空調設備工事業界全体の受注環境は非常に好調で、旺盛な需要に支えられて、各社の売上は増加傾向にあり、各社の企業努力や価格適正化への動きにより採算の改善も進んでいることで利益率が向上し、業績が大幅に伸長する結果となりました。
空調設備工事 大手5社の決算報告書より
1.高砂熱学工業(連結業績の概要)
高砂熱学工業は、売上規模や高い技術力を背景とした取得特許件数は空調設備工事業界トップで、業界のリーディングカンパニーです。
2024年度通期連結業績は、売上高、売上総利益以下の各段階利益、利益率で過去最高を更新しており、売上高、売上総利益は3期連続で最高値を更新しています。
受注高は、製造業・非製造業ともに豊富な情報量のもと繰越高と併せて、過去最高を更新して4期連続の更新となりました。
■売上高増進要因
大型産業系工事を中心に、蓄積してきた設計・施工ノウハウを活かして順調な工事進捗となったこと等により、過去最高の売上高を更新したものです。
2026年3月期見通しでは、売上高は4100億円(7.4%増)としています。
■営業利益以下、各段階利益の増進要因
受注や施工段階で採算改善に向けた取組みを進め、成長戦略の実行に伴う販管費の増加をカバーしたことで、営業利益以下の各段階利益および利益率ともに2期連続で過去最高を更新しました。
2.大気社(連結業績の概要)
大気社は前年(2023年)度決算が良好であったこともあり、2024年度連結決算では、売上高で前年度比5.9%マイナス、営業利益で同1.6%マイナスとなりましたが、受注工事高、完成工事高、経常利益において予想を上回り、工事の採算性改善を進めたことにより、経常利益は過去最高を達成しています。(経常利益は199億、前年度比0.4%プラス)
海外市場は減速懸念がありますが、2024年度前期は各メーカーの設備投資が堅調に推移して、国内市場では半導体関連、自動車メーカー、データセンター関連の投資が継続しており、都市圏の再開発需要が堅調に推移したことが決算業績に寄与したものです。
2026年3月期見通しでは、主に成長投資による経常利益減を見込むものの、受注工事高は過去最高額となる見通しです。
3.ダイダン(連結業績の概要)
ダイダンは2024年度通期の売上高(完成工事高)が2627億円で、前年度比33.1%と高い伸びを示しました。
2024年度は、前期から繰り越した比較的短工期の産業施設工事や大型の医療関連施設などが進捗したことにより、売上高が増加しましたが、受注工事高も、工場、データセンター、医療関連施設などの受注が引き続き好調に推移したことにより増加しており、2026年3月期売上高は2024年度とほぼ同額の2600億円を見込んでいます。
2024年度は、受注工事高、売上高(完成工事高)、各段階利益において過去最高値を更新しましたが、本年度も同様に好調推移すると予想されています。
4.三機工業(連結業績の概要)
三機工業は、2025年4月に100周年を迎えた大手設備工事業者で、売上の82%を建設設備事業、13%を環境システム事業(上下水道、廃棄物処理場など)が占めています。
2024年度決算は、民間企業の堅調な設備投資に支えられ良好な受注環境が継続し、順調な工事進捗と利益率改善により、受注高・売上高は前期を上回り、各段階利益は過去最高を更新しました。
売上高は2531億円で前年度比14.1%プラスでしたが、売上構成比では、ビル空調衛生が約696億円で前年度比31.2%の増加となり、電気設備も約404億円で前年度比57.9%増加するなど、メインの建築設備工事が好調であることが全体の伸びに寄与しました。逆に機械システム、環境システムなどプラント設備系は約443億で前年度比4.9%マイナスとなりました。
2026年3月期も2024年度とほぼ同額決算となる見通しを公表しています。
5.新日本空調(連結業績概要)
新日本空調の2024年度決算は、増収・2ケタ増益、受注工事高と完成工事高がいずれも増加という結果になりました。
売上高は約1376億円で前期比7.6%増。営業利益が約113億円で同22.9%増、経常利益が119億円で同23.2%増、当期純利益が96億円で同34.7%増です。
2026年3月期の連結業績見通しでは、売上高は前期比4.6%増の1440億円、営業利益は同5.8%増の120億円、経常利益は同4.4%増の125億円、純利益は同8.9%減の88.00億円を見込んでいます。
空調設備工事業 上場大手5社の2026年3月期見通し
前項、各社決算報告の概要に書き加えていますが、空調設備工事業 上場大手5社の2025年度通期連結決算の見通しを集計したものが下表となりますのでご確認ください。
出所:2025年3月期決算短信
前年度に引き続き工事受注が好調な2025年度は、各社が前年度並みか増額の見通しを示しています。
2025年度の世界経済は、各国の政策転換や地政学的リスクの高まりにより、不確実性が一段と強まり、成長の鈍化が懸念されています。わが国では、エネルギー価格の上昇や為替変動に伴う輸入コストの増加が企業活動に影響を及ぼす一方で、内需の回復やインバウンド消費の拡大を背景に、設備投資は引き続き堅調に推移する見通しです。
また、製造業の生産設備投資や都市再開発、老朽建築物のリニューアルといった需要は、2025年度も引き続き、底堅く推移するものと見込まれます。
(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)