パシフィックコンサルタンツHD 1月設立、国内・海外・民間へ成長投資を強化【建設知識 土木編】
2026年1月5日、建設コンサルタント大手のパシフィックコンサルタンツが、純粋持ち株会社「パシフィックコンサルタンツホールディングス(HD)」を設立しました。
パシフィックコンサルタンツは、昨年10月1日に明らかにしていた「中期経営計画2028(2025.10-2028.9)」のなかで、持ち株会社設立によるグループ企業構造の変革を発表しており、今般のHD設立は、この計画に沿って、子会社を含めたグループ全体で事業分野のポートフォリオを可視化し、HDが経営資源の配分や成長戦略を一元的に判断する体制を構築することを目的としたものです。
本記事では、パシフィックコンサルタンツHDの概要や成長戦略を中心に解説していきます。
パシフィックコンサルタンツHDの概要について
2026年1月5日に設立されたパシフィックコンサルタンツHDの資本金は10億円で、社長には大本修氏(パシフィックコンサルタンツ社長)が就任しました。
HD傘下にパシフィックコンサルタンツを置くかたちで始動し、HDがグループ企業を含めた全体の経営戦略を策定・推進していきます。
事業展開は国内・海外・民間の3領域を中核に、市場環境やビジネスモデルに応じて、事業会社を設立し再編することで加速的な展開を狙う計画です。
海外事業では再成長に向けた足掛かりとして、新たに「国際事業会社」を設立し、パシフィックコンサルタンツやグループ会社のパデコに分散していた機能や人材を集約することで、案件獲得力や事業運営の効率向上を目指します。
その他にも、新たな事業会社を設立するなど、HDが戦略的にリソースの調達や配分を行い、グループ人材の流動化や成長投資を進めていくものとしています。
パシフィックコンサルタンツHDは、当面の経営目標として、2028年9月期の連結業績で売上高1000億円、営業利益率10%の達成を掲げており、売上高の内訳は、国内公共分野550億円、国内民間分野300億円、海外事業分野150億円としています。グループ企業再編については、パシフィックコンサルタンツが担ってきた既存領域の一部を段階的にグループ会社に移行していき、新たな市場や顧客の開拓と価値創造に向けてグループとして展開をしていく計画です。
下図は「中期経営計画2028」で示された、HDの財務目標、方針・施策となります。
パシフィックコンサルタンツHD設立において、大本社長は、「従来の発想や手法にとらわれず、事業領域の偏りを是正しながら成長を図りたい」とグループの経営方針を語りました。
HD傘下の各事業会社が、現場に近い立場で戦術の具体化と実行を担い、役割分担を明確にすることで持続的な成長につなげる計画で、国内・海外・民間の3本柱による事業展開体制を早期に整えていくことになります。
再挑戦となる「パシフィックコンサルタンツの持ち株会社」
パシフィックコンサルタンツは、2000年に持ち株会社の「パシフィックコンサルタンツグループ」を設立して、国内事業のパシフィックコンサルタンツと、海外事業のパシフィックコンサルタンツインターナショナル(PCI)を完全子会社として傘下に置いていました。
2008年にアジアに対する日本のODAに関連する詐欺や特別背任、不正競争防止法違反などの刑事事件があり、PCI元社長らが逮捕されるなどの不祥事を受け、海外事業をオリエンタルコンサルタンツに譲渡したうえで、持ち株会社制を廃止した経緯がありました。
その後は、一度海外事業から撤退した後、2018年に海外事業部門として設けた「グローバルカンパニー」と、国際開発コンサルタントとして1983年に設立された株式会社パデコを2023年に買収するなどして、積極的に海外事業に取り組み、2025年9月期には売上高100億円を見込む規模まで伸ばしています。
今回のパシフィックコンサルタンツHD設立を契機に、新設される「国際事業会社」に機能や人材を集約して、海外事業に適した戦略に特化することで、2028年9月期に海外売上高150億円を目指すことが当面の目標となります。
HDが目指しているのは独自のポジション
中期経営計画で明らかにした、国内・海外のインフラプロジェクトへの取組みは、建設コンサルタントとして培ってきた既存領域の事業を拡大発展させていく方向性となりますが、パシフィックコンサルタンツHDでは、民間に向けた事業を3本柱の1つとしています。
具体的な事業として、再生エネルギー事業やインフラ施設の運営事業など、従来の建設コンサルタント事業以外で成長を見込んでおり、さらに各グループ会社の取組みによる新事業展開の経営管理や成長投資をHDが強化していく構想としています。
■従来の子会社が、順次HD事業会社になっていく
従来のパシフィックコンサルタンツ子会社によるグループ体制は下図の通りです。
新事業展開では、これら子会社を、順次HDの事業会社に位置付け、グループとしての経営管理と成長投資を強化する青写真を描いています。
株式会社パデコは前述の通り、2023年にパシフィックコンサルタンツが買収した国際開発コンサルタント会社で、東アジアを中心に英欧など海外7カ国に拠点展開しており、ポーランドに現地法人を設立しています。パデコはパシフィックコンサルタンツの海外事業部門、グローバルカンパニーと共に、新設する国際事業会社に統合される予定です。
パシフィックリプロサービスは、BIM/CIMやGISをはじめとしたICT技術システムの受託開発や情報処理支援、媒体印刷などを手掛ける子会社であり、公民連携事業のプロジェクトマネジメントなどを手掛けるプロジェクトブレイン、ICT領域に特化したトリオン、地域新電力事業を担うパシフィックパワーなど、非建設分野を含めた事業領域で事業拡大を進めていきます。
パシフィックコンサルタンツHDは、建設コンサルタントの枠にとらわれることなく、複雑化し多様化する課題の解決を図ることを基本方針として、様々なパートナー企業と協力して、イノベーションを創出し、事業ポートフォリオの高度化を図り、新たなビジネスを模索し、次の事業会社の設立を目指すことで、グローバルな企業グループとして成長していくとしています。
■社会インフラサービス領域で独自のポジションを目指す
大手建設コンサルティング会社として、深い顧客理解に基づき、社会や顧客の真の課題を発見し、「建設コンサルティングの高い競争力」を礎に、「構想力」と「実装力」で顧客の価値を創造していき、国内、海外インフラプロジェクト事業を収益の2本柱として確立し、インフラビジネス/ソリューション事業として、民間企業や共創パートナーと価値提供を主体とする新たなビジネスモデルの探索と共創を進め、3本目の柱になり得る事業を創出して育てていくことで、「社会インフラサービスの先駆者」として、独自のポジションを目指していきます。
まとめ・パシフィックコンサルタンツHDが進める成長投資
建設コンサルタント業界では、近年、業界再編や事業統合の動きが活性化しています。
昨年(2025年)2月には、日本工営を傘下にもつ株式会社ID&Eホールディングスを異業種の東京海上ホールディングスが買収するなど、M&Aも活発に行われています。
パシフィックコンサルタントHDでも、この先、国内企業や海外の現地企業のM&Aを視野に入れており、「中期経営計画2028」では合計120億円の成長投資を表明しており、その内、国内外のM&Aや事業提携など「事業投資」に40億円以上を当てています。
その他の成長投資としては、自律型AIの技術開発等を含む「先端技術開発」に35億円、自動設計など「生産性改革」に15億円、人材獲得・育成など「人的資本投資」に30億円と計80億円を内部統制の向上に当てています。
建設コンサルタント業界を進路として意識している建設系学生にとっては、新事業展開と同じくらい、人材の採用や育成方針が気になると思いますが、パシフィックコンサルタンツHDでは、人材へ積極投資して、2024年9月現在、約3000名の社員規模を2028年9月期までに約3500名規模とし、グループ全体で500名の純増を計画しています。(正社員、契約社員、嘱託社員等を含む)
基本は多様な人材の採用強化と適正配置により、グループ内での流動化をもとに、多様なキャリアと専門力を自律的に高めるための育成・登用を進めていく予定です。
現在時点では、始まったばかりの持ち株会社体制、および「中期経営計画2028」ですが、同社の事業展開や採用育成など人材戦略については、また動きが明らかになれば、他の建設コンサルタント会社と合わせて、続報として紹介していきたいと思います。
参考:未来を切り開くグループ経営の新しい基盤として、パシフィックコンサルタンツホールディングス株式会社が設立されました(プレスリリース)
参考:特集【15】東京海上HDが建設コンサル最大手を買収した目的はどこにあるのか?【建設知識 土木編】
(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)




