
【業界研究】気になるポイント!日本でZEHは実際どこまで普及しているのか?
ZEH(ゼッチ)(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、住宅で消費するエネルギー量を、創エネ(太陽光発電など)によって実質ゼロにすることを目指した住宅のことです。
高断熱・高効率設備を活用し、エネルギー消費を抑えながら、再生可能エネルギーを活用することで、環境負荷を軽減しつつ快適な住環境を実現します。
日本では、政府がZEHの普及を推進しており、補助金制度も整備されています。
例えば、ZEH基準を満たす住宅には、建築費の一部を補助する制度があり、導入を後押ししています。
ZEHのメリットとしては、光熱費の削減、快適な室内環境、災害時のレジリエンス向上などが挙げられます。特に断熱性能が高いため、冬は暖かく、夏は涼しい快適な住まいを実現できる点が魅力です
さて、そんなZEHは現在、どこまで普及しているのか?大変気になるところです。
調べてみると、経済産業省では、「2020年のハウスメーカーが新築する注文戸建住宅においては、約56%がZEHとなりました。」とホームページに記載したままです。
2020年って、もう5年も前のことじゃないの?現在は、どこまで普及が進んでいるの?「ハウスメーカーが新築する注文戸建住宅」に限定されているのも、結構、気になりますね?ハウスメーカーじゃなければどうなの?注文住宅以外はどうなっているの?建築学生だったら、もう疑問がいっぱいですよね?
そこで本記事では、現状を再確認して解説してみたいと思います。
ZEH情報を公開している「環境共創イニシアチブ(SII)」の報告から
ZEHの現在に関して情報公開している組織は、一般社団法人環境共創イニシアチブです。略称はSIIとされています。
SIIでは、戸建ZEH、集合ZEH-Mに関する補助事業をはじめとした事業推移や申請状況に加え、ZEHのエネルギー使用状況に関する調査・分析を行っています。
2024年12月25日、SIIは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業 調査発表会2024」として、2024年度の調査報告を行いました。その報告にZEH普及率に関して記載されておりますので、この報告を次項で紹介します。
【ZEHビルダー/プランナー実績報告】 新築戸建住宅のZEH化率27.6%に上昇
「ZEHの普及に取り組むZEHビルダー/プランナーの実績報告によると、2023年度の新築戸建住宅におけるZEHシリーズ供給戸数は97,065戸となり、着工統計にみるZEH化率は27.6%となりました。」
「注文戸建住宅においてはZEH化率が40.2%となり、ハウスメーカー単体では72.0%と高水準になっています。また、一般工務店はハウスメーカーに比べるとまだ低位ですが、前年比7ポイントを超える伸びを見せ、ZEH化率向上に大きく貢献しています。」
「建売戸建住宅においてはZEH化率は7.0%にとどまっていますが、昨年の4.6%に対しては大きな増加が見られ、今後更なる取り組みの加速が期待されます。」
※「」内は、SII「ZEHビルダー/プランナー実績報告」からの引用です。
上記グラフが2024年12月時点で、SIIが把握しているZEH化率です。これは複数年度の累計ではなく、2023年度単年度における新築戸建て住宅に関する数値です。
まとめると下記のようになります。
★注文住宅(戸建て)全体では、約4割がZEH
★ハウスメーカーの注文住宅(戸建て)では7割超がZEH
★一般工務店の注文住宅(戸建て)では約14%がZEH
★建売戸建住宅のZEH化率は7.0%にとどまる!
◎以上をまとめて、新築戸建て住宅全体では、ZEH化率27.6%
新築戸建て住宅では、これが現状ということですね。2023年度の着工に関する統計になりますので、2024年度はもう少し進捗していることを予想します。
建売戸建て住宅は、初めて住宅を購入する層に土地付き住宅として販売をするため、「いかに安く質がよい住宅を購入できるか」が最大のポイントになっています。そのため高価となりがちなZEH化は除外されていたり、オプション扱いとなっていたりで、顧客に選ばれなければ採用されません。このことが低いZEH化率にとどまっている理由と思われます。
ZEHビルダー/プランナーとは?
ZEHビルダー/プランナーとは、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及を目標に掲げ、その実現に努める住宅事業者として登録された業者のことです。具体的には、ハウスメーカー、工務店、建築設計事務所、リフォーム業者、建売住宅販売者などで登録申請した事業者が該当します。
この制度では、登録事業者は自社で受注する戸建住宅(新築注文住宅、新築建売住宅、既存改修)のうち、ZEH、Nearly ZEH、ZEH Orientedの割合を50%以上とすることが目標とされています。
また、ZEHビルダーは主に注文住宅の建築やリフォーム、建売住宅の販売を行い、ZEHプランナーは住宅の設計を担当するという違いがあります。
ZEHビルダー/プランナーの2024年10月末時点の登録数は累計5,922社となっています。
ハウスメーカー志望者は各社のZEH普及率と商品内容に注目!
ハウスメーカーに進路を希望している学生は、業界研究・企業研究を進める際に各社のZEH商品と販売実績におけるZEH普及率に注目、比較してみましょう!
■ZEH商品の特徴・強みを生む技術力
各ハウスメーカーが取り扱うZEH商品をチェックする際には、以下のような技術力を確認しましょう。
ZEHは一般的な住宅よりも高性能となる分、初期費用が多くかかります。またアフターメンテナンスや定期点検の費用も多く掛かります。さらに太陽光発電や省エネ家電の導入が同時に必要となることで、一般的な住宅よりも割高になります。
そのため、ZEHの新築やリフォームには補助金制度が活用できることを訴求すると同時に、各社の技術力や省エネ・創エネによる長期的且つ経済的なメリット、住まいの快適性など、環境性能を大いにアピールしていくことになります。
■ハウスメーカー各社のZEH商品比較一覧
ZEH対応ハウスメーカーの商品比較をするために技術力3つのポイントをもとにした比較一覧表を作成してみましたので、確認してみましょう!
出所:ハウスメーカー各社ホームページ情報(2025年5月現在) 表は筆者による作成
※UA値とは
UA値とは「外皮平均熱貫流率」のことで、数値は低いほど断熱性能が高いことを表しています。ZEH基準はエリアによって異なりますが、南東北~南九州はUA値0.6が基準とされています。
注)実際にはハウスメーカー各社のプランにより詳細は異なりますので、業界研究の参考に留めてください。ハウスメーカー各社のZEH技術や商品開発は日進月歩で更新されていきますので、企業研究を進める際は各社の実際を再確認してください。
企業の比較研究をする際にはZEHについては着眼点の一項目にすぎません。住宅展示場に出向いて、実際の戸建て住宅を見学したり、商品カタログ等を収集したりすることも非常に有効だと思います。
(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)