建設業で働く外国人労働者は約18万人で前年比22.7%増。ベトナム人が約7万人で最多【厚生労働省】

建設現場で働く技能労働者の多くを外国人が占めるようになってきています。日本で働く外国人労働者、建設業で働く海外人材の現状はどうなっているのでしょうか?

わが国では、外国人雇用状況の届出制度があり、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」に基づき、外国人労働者の雇用管理の改善や再就職支援等を目的とし、すべての事業主に外国人の雇入れ・離職時に、氏名、在留資格、在留期間等を確認し、厚生労働大臣(ハローワーク)へ届け出ることを義務付けています。

厚生労働省の外国人労働者に関する最新雇用状況集計は、2024年10月末時点の集計で、2025年1月31日に公表されています。

本記事では、この最新集計をもとに、外国人労働者全般について情報を掲載し、後半部分で「建設業で働く外国人労働者数等」について解説します。

全国の外国人労働者数は約230万人、就業者の3.4%を占めている

■全国の外国人労働者数は2,302,587人で前年比253,912人増加し、届出が義務化された2007年以降で過去最多を更新しました。対前年増加率は12.4%と前年と同率でした。約230万人は、全就業者数の3.4%を占めていることになります。

■外国人を雇用する事業所数は342,087カ所で、前年比23,312カ所増加し、届出義務化以降で過去最多を更新し、対前年増加率は7.3%と前年の6.7%から0.6ポイント上昇しました。

【国籍別】外国人労働者数の状況

外国人労働者数を国籍別にみると、ベトナムが最も多く570,708人(外国人労働者数全体の24.8%)、次いで中国408,805人(同17.8%)、フィリピン245,565人(同10.7%)の順となります。

対前年増加率が大きい主な3ヵ国は、ミャンマーが61.0%(43,430人)増加、インドネシア39.5%(48,032人)増加、スリランカ33.7%(9,863人)増加となっています。

【在留資格別】外国人労働者数の状況

外国人労働者数を在留資格別にみると、「専門的・技術的分野の在留資格※1」が届出義務化以降、初めて最も多くなり718,812人、前年比122,908人(20.6%)増加しています。

次いで「身分に基づく在留資格※2」が629,117人、前年比13,183人(2.1%)増加し、「技能実習」が470,725人、前年比58,224人(14.1%)増加、「資格外活動」が398,167人、前年比45,586人(12.9%)増加、「特定活動」が85,686人、前年比14,010人(19.5%)増加となりました。

なお、「専門的・技術的分野の在留資格」のうち、「特定技能」の外国人労働者数は206,995人、前年比68,477人(49.4%)増加となっています。

※1=「専門的・技術的分野の在留資格」には、「教授」、「芸術」、「宗教」、「報道」、「高度専門職1号、2号」、「経営・管理」、「法律・会計業務」、「医療」、「研究」、「教育」、「技術・人文知識・国際業務」、「企業内転勤」、「介護」、「興行」、「技能」、「特定技能1号・2号」が含まれます。

※2=「身分に基づく在留資格」には、「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」が含まれます。

【都道府県別】外国人労働者数の状況

外国人労働者数を都道県別にみると、東京が585,791人(全体の25.4%)、次いで、愛知229,627人(同10.0%)、大阪174,699人(同7.6%)となっています。

また対前年増加率は、長崎が28.1%、北海道が23.8%、福井が22.5%となります。

【産業別】外国人労働者数の状況

外国人労働者数を産業別の割合でみると、「製造業」が26.0%と最も多く、次いで、「サービス業(他に分類されないもの)」が15.4%、「卸売業、小売業」が13.0%となっています。

「建設業」は177,902人で7.7%を占めており、前年比は約3.3万人増加して、前年比22.7%増、建設業就業者数の3.7%を占めている状況です。

建設業については詳細を最終章に記載します。

下図は、産業別外国人労働者数の推移(2008年~2024年)をグラフ化したものです。

「建設業」で就業する外国人労働者数(詳細)

■建設業で働く外国人労働者は約18万人、前年比で22.7%増加しました

日本の建設業で働く外国人労働者は、2024年10月末時点で17.8万人でした。前年比で3.3万人増え、また増加率は22.7%増と大きく増えています。

2014年は2.1万人であったため、以降10年間で約8.5倍に増えたことになります。

新型コロナの影響を受けた2021年、2022年を除き、前年比2割増が続いています。

建設業就業者に占める外国人労働者の割合も年を追うごとに増え続けて、2024年には3.73%となり、全就業者に占める外国人労働者の割合(3.4%)を超えました。

■建設業では約6割が「技能実習」で「特定技能」も約2万人と大幅増

在留資格別では、約6割にあたる10.7万人が「技能実習」で、約2割となる3.7万人が、「専門的・技術的分野」の在留資格で就業しています。

特に「専門的・技術的分野」に含まれる「特定技能」(建設技能工が含まれる)が1.9万人となり、前年から57.9%増と大幅に伸びています。

建設業での特定技能の受け入れ上限は「2024年からの5年間で8万人」とされており、建設技能工の不足を背景に、今後数年間は特定技能で就業する外国人労働者は、上限まで増え続けることが予想されます。

■国別ではベトナムが最多で約7万人、続いてインドネシアが3.7万人と大幅増

出身国別では、ベトナムが約7万人と最多で、インドネシアの3.7万人が続いています。インドネシアは前年比55.5%と大幅に増加しており、ベトナムとインドネシアの2カ国で、建設業で働く外国人労働者の約6割を占めている状況です。

次いで、約2万人のフィリピン、約1.4万人の中国が続き、まだ人数は少ないものの、ミャンマーが前年から36.9%増、またネパールも前年から34.4%増となり、徐々に存在感を高めています。

まとめ

直近で行われた参議院選挙では、各政党候補者が語る「移民政策」が争点として注目を集めたり、新聞・ニュースなどで外国人労働者や、インバウンド需要による外国人観光客の増加が連日、話題になったりしています。

その中には、外国人の増加を忌避する発言や意見も増えていますが、産業界は人手不足を背景にして、外国人労働者の受入れ増加で労働力の補完をしている現状です。本記事の情報から、建設業では東南アジアを中心に技能労働者として、外国人労働者が増加していることがわかると思います。

建設現場では、DX推進やi-Construction2.0により省力化が進んでいますが、一方で、未だ手作業に多くを依存する工程もあり、また企業規模、請負工事の規模・種別によっては技能工が必要な工事が多くなっています。

建設業界・企業では、技能工の技術向上や、多能工として活躍できるように育成環境の充実化をはかることが重要課題となっており、労働環境改善と同時に取組んでいることを押さえておく必要があります。

出典:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)厚生労働省

 

(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)