鹿島が「A4CSEL」4機種連携により盛土の一連作業を自動化しました【建設DX】

鹿島が開発した自動化施工システム「A4CSEL®」(クワッドアクセル※1) は、建設機械の自動運転を核とした自動化施工システムです。総合資格ナビでは、本年2月に前記事で「岡崎市阿知和地区工業団地造成事業」における本格運用について紹介しました。

本記事では、2025年6月20日付、鹿島のプレスリリースをもとに、「A4CSEL」の新規展開について紹介します。前記事未読の方は、この機会にぜひご確認ください。

前記事:特集【12】鹿島が現場の工場化を目指して造成工事に「A4CSEL」を初適用【建設DX】

自動化施工システム「A4CSEL」 に2機種を追加、盛土作業に適用

鹿島では、従来は「A4CSEL」をダム工事中心に現場適用してきました。代表的な工事実績としては、「成瀬ダム堤体打設工事」でCSG打設の自動化施工において、生産性と安全性の向上を実証しました。工事を通して技術を進化させ、より多くの工種への展開を進めるべく、2025年からは造成工事へ本格適用を開始しています。

その最初の取り組みは、前記事で紹介した「岡崎市阿知和地区工業団地造成事業」における、自動振動ローラ2台による盛土作業の自動化施工です。

A4CSELは、最大の生産性を得る施工マネジメントシステムと、最大の作業効率を得る自律自動運転システムで構成されていますが、造成工事の盛土作業は、積込み、運搬、敷均し、転圧の4つの作業で構成されており、今後、さらなる生産性向上を図るためには、自動化施工が可能な作業を増やすことが重要です。

A4CSELがこれまでにダム工事で培ってきた、自動ダンプトラックによる運搬、自動ブルドーザによる敷均し、自動振動ローラによる転圧からなる一連の自動化施工技術は造成工事においても活かせますが、今回は自動バックホウによる積込みと、造成工事の仮設道路を走行できる自動アーティキュレートダンプトラック※2による運搬を加えることで、盛土作業を構成する一連の作業の自動化を4機種の連携作業により実現しました。

※1=「A4 CSEL」は「Automated/Autonomous/Advanced/Accelerated Construction system for Safety,Efficiency,and Liability」の略語(登録商標)

※2=「アーティキュレートダンプトラック」は中折れ機構のため、リジッドダンプトラックに比べてより悪路の走行、小範囲での旋回が可能です。

バックホウとアーティキュレートダンプトラック、2機種の自動化概要

1.自動バックホウ:積込み作業の自動化

・機体に搭載したセンサーで周辺環境を認識

・材料山の形状をリアルタイムに認識して最適な掘削を実施

・自動アーティキュレートダンプトラックの停止位置を認識し、最適な量の積込みを実施

2.自動アーティキュレートダンプトラック:仮設道路での運搬の自動化

・アーティキュレートダンプトラックの最大の特徴である中折れ式の機構を活かした自動制御により、悪路の走行、小範囲での旋回が可能

・これまで培ってきた最適な経路生成技術と新たに開発した中折れ式の機構特有の後進操作の最適化 により、施工箇所まで最短距離で効率的かつ正確に材料を自動運搬

盛土作業自動化、実証実験は神奈川県小田原市で行われた

鹿島では、自動バックホウによる積込み、自動アーティキュレートダンプトラックによる運搬と荷下ろし、自動ブルドーザによる敷均し、自動振動ローラによる転圧にいたる一連の作業を、自動化機械4機種の連携実験として、鹿島西湘実験フィールド(神奈川県小田原市)で実施して、一連の作業を自動化できることを実証しました。

4機種連携による造成工事の自動化は、バックホウが搭載したLiDAR(ライダー)で点群データを取得し、変化する土砂山の形状を捉えて土砂を掘削。GNSS(全球測位衛星システム)で位置情報を取得したダンプトラックに積み込む。ダンプトラックは現場の3次元データや荷下ろし位置などを基に生成した経路に沿って土砂を運搬。荷台から下ろした土砂をブルドーザで敷きならし、振動ローラで転圧する仕組みです。

今回、新機種と連携した自動ブルドーザと振動ローラは、現場実証を経て既存システムをバージョンアップさせたもので、自動ブルドーザはAIによる材料形状の認識や最適な経路生成により、階段状やスロープ状の整形にも対応するなど繊細な作業が可能となっています。また、自動振動ローラは専用の作業計画システムにより複雑な形状や狭小エリアでの作業も可能となりました。

今後の展開について

鹿島は引き続き、A4CSEL(クアッドアクセル)の技術開発を進め、機能・性能の向上ならびに適用機種を増強するとともに、汎用性の高いシステムへ発展させて、普及させる展開を進めていきます。

すでに連携する他建設会社が元請けの工事にA4CSELを適用しており、今後も、様々な現場で導入を目指していきます。A4CSELの適用実績を積み重ねることで、連携する建設会社からも、使い勝手や自動建機による作業の改善点などのフィードバックを受けて、より汎用的なシステムにするための改善を続けていくことが狙いです。

鹿島では、A4CSELの適用推進を、建設現場の工場化による「施工のDX」、複数現場の遠隔集中管制による「業務プロセスのDX」、最適な作業方法のコード化による「技能伝承のDX」推進につなげていき、建設業界の課題解決に貢献していくとしています。

出典:自動化施工システム「A4CSEL」 4機種連携により盛土の一連作業を自動化(鹿島プレスリリース)

 

(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)