
新設住宅着工戸数4カ月連続で減少。本年度は前年比4.4%減の78万戸と予測【住宅業界NEWS】
2025年8月29日、本年7月の新設住宅着工戸数が公表されましたが、4ヶ月連続で減少という結果となりました。本記事では、7月単月だけではなく、4月~7月累計の減少状況と2025年度、2026年度の新設住宅着工戸数予測についてまとめて紹介していきます。
2025年7月の新設住宅着工戸数(概要)
国土交通省が8月29日に発表した「建築着工統計調査報告」によると、2025年7月の新設住宅着工戸数は6万4,109戸となり、前年同月比9.7%減でした。
■2025年7月新設住宅着工戸数の概要
1.新設住宅着工戸数:61,409戸(前年同月比 9.7%減・4カ月連続減少)
2.新設住宅着工床面積:4,733 千㎡(前年同月比 9.1%減・4カ月連続減少)
3.季節調整済年率換算値:712千戸(前月比9.9%増・2カ月連続増加)
※季節調整済年率換算値とは?
月ごとの変動が激しい住宅着工数を、より安定した指標として把握するため、短期的な変動ではなく「実質的なトレンド」を見るために使われます。
■利用関係別の戸数(持家・貸家・分譲マンション、分譲一戸建て)
利用関係別では、2025年7月は持家、貸家、分譲住宅(マンション・戸建て)の全てが前年度比マイナスとなり、4月から連続4カ月減となりました。
新設住宅着工戸数の減少は2025年4月1日施行の省エネ基準適合義務化等による、前年度駆け込み需要の反動によるものとされてきました。
次第に月度の下げ幅は小さくなっており、新基準の確認申請に時間を要する点も解消傾向にありますが、4カ月累計のマイナスは建設コスト高騰による住宅価格の上昇等の影響も大きいと予想され、次月以降どこまで回復するのか?今後の展開に懸念が感じられるところです。
2025年4月~7月累計の新設住宅着工戸数、連続した減少状況は?
2025年4月以降、4カ月間の新設住宅着工戸数をそれぞれ表示してみます。
2025年4月~7月累計の新設住宅着工戸数の各数値は下表の通りです。
2025年7月現在の新設住宅着工戸数(累計)は、21万6,790戸で、前年同月比で約6万戸減となり、前年同月比21.7%減となりました。表中では省略していますが、着工床面積は16,560千㎡で、前年同月比4,771千㎡減となり、前年同月比22.4%減となっています。
利用関係別では持家が1万4,911戸減で、20.1%減。貸家が2万6,038戸減で、21.4%減、分譲(マンション・戸建て含む)が1万9,657戸減で、25.0%減となりました。
月度マイナスのピークは、GW期間に停滞した影響を感じさせる5月度がピークで、6月、7月と続けて下げ幅が小さくなっていますので、緩やかに回復していくとも思われますが、年度上旬累計としては、約1ヶ月分近く、前年よりも遅れているといってよい状況です。
2025年度最終の新設住宅着工戸数、予測値について
2025年7月11日に、(一社)経済調査会、(一社)建設経済研究所が発表した「建設投資の見通し」によると、2025年度の民間住宅建設投資額は16兆8,500億円で、前年比0.1%減と見込まれています。
これにより民間住宅建設は低調に推移すると予測され、2025年度の新設住宅着工戸数は、前年比4.4%減の約78万戸と前年度を割れると予測されています。
持家は2025年度は前年比8.5%減の20.4万戸、貸家は前年比4.0%減の34.3万戸、分譲は前年比1.1%減の22.7万戸と予測されています。
前年度は年度末の駆け込み需要から、一転、前年比プラスに転じていましたが、新設住宅着工戸数は年々減少傾向にあり、各研究機関の予測では2030年度には70万戸まで減少するといわれています。
大手ハウスメーカーは、戸建て住宅の販売戦略を海外市場に向けて、実績を伸長している傾向があり、また各社が建設費上昇などの価格転嫁を進めていますので、決算報告上の売上高は伸ばしていますが、国内市場が中心となる中小住宅関連企業にでは、価格転嫁も進まず、厳しい状況が続くことが予想されます。
特に住宅価格の高騰、実質賃金の低下、展示場への来場者数の伸び悩み、住宅ローン金利の上昇等、懸念材料が多いため、分譲は厳しくなり、経営の多角化や商品の高付加価値化が重要な展開になると予想されます。
2026年度新設住宅着工戸数の予測値について
「建設投資の見通し」では、現段階の2026年度予測を発表しています。
両研究機関の予測では、2026年度の新設住宅着工戸数は2025年度の反動減等の影響から回復すること等により、前年度比1.4%増の約79.1万戸と予測されています。
2026年度の民間住宅建設投資額は、前年度比2.6%増の17兆2900億円と予測されています。
新設住宅着工戸数のうち、持家は前年度比0.7%増の20.6万戸と予測され、価格上昇や賃金低下等の影響で水準は横ばいと見込まれています。
貸家は前年度比2.7%増の35.2万戸で、単独世帯の増加などにより需要は維持される見通しです。
分譲住宅は前年度比0.2%減の22.6万戸と、分譲マンション・戸建ともに大きな変化は予想されず、ほぼ横ばいの予測とされています。
(一社)経済調査会、(一社)建設経済研究所が発表した、住宅建設投資(名目値)、新設住宅着工戸数の推移グラフを掲載します。
(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)