【2025年版】測量士補とは?建設業界で活躍する国家資格の完全ガイド

建設業界は2024年から2025年にかけて、「2024年問題」や急激なDX推進など、大きな変革期を迎えています。2024年4月に施行された改正労働基準法により、建設業でも時間外労働の上限規制が適用され、従来の長時間労働に依存した働き方からの脱却が急務となっています。

マイナビの2024年調査によると、「不動産・建設・設備・住宅関連」分野では中途採用担当者の53.2%が人材不足を感じており、2021年の50.0%から継続的に増加傾向にあります。このような環境変化の中で、測量士補の価値はますます高まっています。

建設DXの波と測量技術の革新

2025年現在、建設業界ではDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進展しており、その中核を担っているのが測量技術の革新です。従来の地上測量から、ドローンを活用した3次元測量、UAVレーザー測量、そしてiPhoneのLiDARセンサーを活用した簡易3D計測技術まで、測量の現場は劇的な変化を遂げています。

特に注目されているのが、EARTHBRAINが開発した「Smart Construction Quick3D」のような技術です。これまで数千万円の専用機器が必要だった高精度な3D計測が、iPhone一台で可能になるという画期的なソリューションが実用化されています。

こうした技術革新により、測量士補の業務内容も大きく変化しています。単純な測定作業から、3Dデータの解析、点群データの処理、BIM/CIMとの連携など、より高度で専門性の高い業務へとシフトしているのが現在のトレンドです。

測量士補とは何か?基本的な理解

測量士補は、国土交通省が認定する国家資格の一つで、測量法に基づく測量業務を行うために必要な資格です。建設プロジェクトにおいて、土地の形状や面積、高低差などを正確に測定する専門技術者として認められた証明でもあります。

この資格の最大の特徴は、受験資格に制限がないことです。年齢、学歴、実務経験を問わず、誰でも挑戦できる開かれた国家資格となっています。そのため、建設業界を目指す新卒学生にとって、在学中に取得可能な実用的な資格として高く評価されています。

測量士補の業務範囲は測量士の指導監督の下で行われますが、実際の測量作業の多くを担当することができます。建設現場では、工事の開始前から完成まで、さまざまな段階で測量業務が必要となるため、測量士補の存在は不可欠です。

賃上げトレンドと測量士補の処遇改善

2024年から2025年にかけて、建設業界では大規模な賃上げが実施されています。厚生労働省の調査によると、建設業の2025年春季賃上げ妥結額は2万1,537円となり、賃上げ率は5.96%と4年連続で上昇しています。

大手ゼネコンでは特に顕著な賃上げが実施されており、スーパーゼネコン5社(鹿島建設、大成建設、大林組、清水建設、竹中工務店)はいずれも2025年4月入社の大卒初任給を30万円、大学院卒初任給を32万円に引き上げています。これは2024年4月入社の大卒28万円・院卒30万円から大幅な増額となります。

この賃上げの波は測量士補にも波及しており、資格手当の増額や基本給の底上げが多くの企業で実施されています。特に最新技術に対応できる測量士補については、通常の技術者よりも高い評価を受ける傾向があります。

測量士補試験の概要と合格のポイント

測量士補試験は毎年5月の第3日曜日に実施される国家試験です。試験形式はマークシート式で、全28問(700点満点)の中から18問以上(450点以上)正解すれば合格となる絶対評価制度を採用しています。

国土地理院の「令和7年測量士補試験の合格者を発表」によると、令和7年(2025年)の受験者数は13,363人で合格者数は6,837人となり、合格率は51.2%という結果になっています。国家資格としては比較的取得しやすい水準といえます。

試験の出題範囲は、測量に関する法規、測量数学、多角測量、水準測量、地形測量、写真測量、地図編集、応用測量、GNSS測量の9分野に分かれています。特に重要なのは測量に関する法規と測量数学で、これらの分野だけで全体の約40%を占めています。

効果的な学習方法として、過去問演習が非常に重要です。測量士補試験では過去に出題された問題が形を変えて再出題されることが多く、過去10年分の問題を繰り返し解くことで、合格に必要な知識と解答テクニックを身につけることができます。

学習時間の目安は約200時間とされており、1日2時間の学習を3か月間継続すれば十分な準備ができる計算になります。独学でも合格は十分可能ですが、効率的に学習を進めたい場合は、通信講座や予備校の活用も検討してみてください。

最新技術に対応した仕事内容と活躍の場

現在の測量士補の仕事内容は、従来の地上測量から大きく進化しています。ドローン測量では、広範囲を短時間で計測できる3D点群データの取得が主流となり、オルソ画像の作成や地形解析なども日常業務に含まれています。

UAVレーザー測量技術の導入により、森林や急傾斜地など、従来は測量が困難だった場所でも高精度なデータ取得が可能になりました。また、3次元空間情報の利活用が進む中で、BIM/CIMとの連携業務も測量士補の重要な役割となっています。

勤務先としては、従来の測量会社や建設会社に加えて、デジタル技術を駆使する建設テック企業での需要も急増しています。災害復旧工事や防災関連工事での測量需要、再生可能エネルギー施設の建設に伴う測量業務、スマートシティ構想に関連した測量プロジェクトなど、活躍の場は多岐にわたっています。

年収とキャリアパス

厚生労働省の「職業情報提供サイト(jobtag)」によると、令和6年(2024年)調査では測量士の年収は501.6万円となっています。測量士補については、Indeed(インディード)の調査データによると、全国平均年収は310万円となっており、地域別では東京都424万円、北海道275万円、沖縄県239万円と地域差が見られます。

ただし、2024年から2025年にかけての建設業界の賃上げトレンドを受けて、これらの数値は上昇傾向にあることが予想されます。新卒初任給についても、大手建設会社の大幅な引き上げに伴い、測量士補を含む技術職全体の処遇改善が進んでいます。

キャリアパスとしては、実務経験を積んだ後に測量士の資格を取得するのが一般的なルートです。測量士補として1年以上の実務経験を積むことで、測量士試験を受験することなく測量士の資格を取得できる制度もあります。

さらなるキャリアアップとしては、技術士(建設部門)や土地家屋調査士などの関連資格の取得、建設テック企業でのデジタル技術スペシャリストへの転身、独立開業などの選択肢があります。

測量士補の将来性と2025年以降の展望

AI技術の発達や建設DXの進展により、測量士補の将来性はこれまで以上に明るいものとなっています。国土交通省の方針により、2025年までに公共事業の受注には3Dデータ活用力が不可欠となり、点群データを扱えない企業は受注機会を失う可能性すら指摘されています。

2025年以降は、デジタルツインの構築、メタバース空間での建設計画、リアルタイム監視システムなど、これまでにない新しい分野での測量需要が期待されています。また、カーボンニュートラルの実現に向けた環境測量、都市のスマート化に向けた高精度位置情報の整備など、社会課題解決に直結する業務への参画も見込まれています。

新卒での測量士補取得のメリット

2024年から2025年にかけての建設業界の変革期において、新卒で測量士補を取得することは極めて戦略的な選択といえます。建設DXやデジタル技術への対応が求められる中で、国家資格を保有する新卒者は即戦力として高く評価されます。

また、働き方改革により効率性が重視される現在の建設業界では、最新技術を活用できる測量士補への期待は非常に高く、入社後の配属や昇進においても有利に働くことが期待されます。経済面でも、業界全体の賃上げトレンドにより、初年度から他職種を上回る収入を得られる可能性が高まっています。

まとめ

測量士補は、建設業界の大変革期において最も注目される国家資格の一つとなっています。DXの進展、働き方改革、賃上げトレンドといった業界を取り巻く環境変化は、すべて測量士補の価値向上に寄与しています。

比較的取得しやすい難易度でありながら、就職活動から将来のキャリア形成まで長期間にわたってメリットをもたらすこの資格は、建設業界を目指す新卒学生にとって必須の武器といえるでしょう。在学中の資格取得により、変革期の建設業界で活躍するための確実な基盤を築くことができます。

参考資料・出典

・厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(2025年3月17日発表)
・厚生労働省「職業情報提供サイト(jobtag)」測量士データ(令和6年調査)
・国土地理院「令和7年測量士補試験の合格者発表」
・Indeed(インディード)測量士補年収調査データ
・マイナビ「2024年の労働問題調査」
・日本建設業連合会調査データ
・建通新聞「主要企業の春季要求・妥結額調査」(2025年)