中小ビルのバリューアップ改修投資の促進に向けたモデル調査事業で12件が採択【建設NEWS】

2025年12月26日、国土交通省は「中小ビルのバリューアップ改修投資の促進に向けたモデル調査事業」の第2期募集で、日建設計や大成建設、東急不動産など12件の取り組みを採択したことを発表しました。

中小ビルのバリューアップ改修モデル採択の概要

「中小ビルのバリューアップ改修投資の促進に向けたモデル調査事業」は、改修期を迎える多くの老朽不動産の更新を推進するために、改修時期を迎えた中小ビルをモデルとした、社会課題に対応したバリューアップ改修のあり方や改修による効果の把握・発信を行うモデル調査を目的として実施しています。

この調査事業で対象となる「中小ビル」の要件定義は次の通りです。

◆中小ビルの要件

・規模:延べ面積3,000坪未満

・築年数:築20年以上

・用途:改修前の用途が住宅以外の用途であること

第2期募集では、募集期間を7/29~10/31として、【A_改修提案】・【B_既改修事例】の各募集枠に応募された提案等について、専門家からなる外部委員会における評価結果を踏まえて採択が行われました。各募集枠の概要、及び採択結果は次の通りです。

◆募集枠の概要

【A_改修提案】:これから改修を行おうとする中小ビルの改修の提案(R7年度末迄に着手)

【B_既改修事例】:既に改修を行った中小ビルの事例(R2年4月1日以降に改修済とする)

◆第2期採択結果

改修提案で日建設計のゼノべプロジェクトなど5件が採択

【A_改修提案】では、日建設計のゼノべプロジェクトなど5件が採択されました。

■日建設計後楽園ビル ゼノべ改修案件

「日建設計後楽園ビル」は、東京都文京区にある1992年新築(築33年)、地上8階、地下1階、延べ床面積6283.04㎡の既存ビルです。(下図)

日建設計の改修提案は、環境性能と経済価値の向上の両立により、築古ビルへの環境投資を促進する取り組みを「ゼロエネルギーリノベーション(ゼノべ)プロジェクト」と位置付けて推進していくものです。

現状は環境性能向上の社会的要請に十分対応できていないことや、老朽化によりオフィスビルとして賃料競争力が低下していることが課題となっています。

断熱性能の向上や高効率設備への入替、空調設備容量の合理化などを実施してCO2排出量削減を進めるとともに、近年のオフィスニーズを踏まえ、入居者専用ラウンジの新設やテナントのウェルビーイング実現を図る改修を提案しています。

外部委員会講評要約

外部委員会は、老朽化したオフィスビルの多くが直面する環境性能の不足と賃料競争力の低下という課題を明確に示し、2050年ネットゼロに向けたZEB化推進とバリューアップの先導的な役割を果たそうとしている点や、ゼノべプロジェクトとして、中小ビル環境改修投資のモデルケースを目指している点を高く評価しました。

環境改修メニューの構成や省エネ対策実施による費用対効果のバランスを丁寧に整理しており、技術的な汎用性が高い提案として、今後、具体的な改修内容やプランニングについての説明が事例集に掲載されることが期待されます。

■マードレ松田ビル改修プロジェクト

「マードレ松田ビル」は、東京都千代田区にある、新築年1987年(築38年)、地上6階 地下2階、延べ面積3830.39㎡の既存ビルで、大成建設が改修提案を応募しました。(下図)

マードレ松田ビルは老朽化が進み、物理的劣化に加えて収益性低下という課題に直面している物件であり、建替えも検討されていたため、本格的な修繕が未実施となっていました。

大成建設では、ストック活用が社会的に求められていることから、建物診断を行い、指摘された安全性の確保や緊急性が高い修繕項目の改修に加えて、供用ラウンジや共用テラス、防犯カメラ設置、シェアオフィス等テナントに寄与する魅力づけやZEB Ready認証取得を目指して環境負荷低減を図る改修提案を行いました。

外部委員会講評要約

ストック活用を選択し、安全安心を目的としたレジリエンス確保に加え、テナントの快適性・生産性といった社会課題や不動産価値向上も意識したプロジェクトで、緊急性の高い修繕項目、オフィスとしての魅力づけ、省エネ改修と課題別に詳細プランの検討ができている。

老朽化した設備(空調・照明・給水排水)、外壁・防水の劣化、トイレ・共用部の陳腐化は中小ビルに普遍的なものであり、明るさセンサーや空調の高効率化、ラウンジの設置、テラスの活用、交流コーナーなど、再現性の高い施策が採用されており、他の事業者にも参考になる点が高評価とされました。

【A_改修提案】では、この他に、サンフロンティア不動産の「TRUST VALUE 神田須田町RN工事(築37年)」「本町ハイエストビルRN工事(築37年)」「THE PORTAL IWAMOTOCHO RN工事(築34年)」が採択されました。

サンフロンティア不動産が応募した3件に共通するのは、築年数経過により、法適合性調査により判明した違法箇所を改修において是正工事を実施し、遵法性や安全性を確保して、新たに確認検査済証の交付を得る計画とするなど、不動産ストックの健全性を確保して、物件の流動性向上や賃料向上による物件価値向上の要素が明確である点が評価されました。

既改修事例で「COERU渋谷道玄坂」など7件が採択

【B_既改修事例】では東急不動産のホテル改修など7件が採択されました。

■COERU渋谷道玄坂 改修プロジェクト

東急不動産の「COERU渋谷道玄坂」は、1985年新築(築40年)の地上10階 地下1階、延べ床面積954.01㎡のビルを改修したプロジェクトです。

「COERU渋谷道玄坂」はカプセルホテル及び店舗として新築され、その後3階にサウナが新設されたことにより積載荷重が超過するなど是正が必要な物件でした。

東急不動産では、建物全体の減築工事等を実施し、サウナを残して4階以上の外壁コンクリートを解体して、新たな開口部を設けることで遵法性を担保しながら上層階の採光と眺望を確保しました。

上層階はセットアップオフィスに用途変更して、スタートアップ企業が入居し成長する場所を目指す取組です。

外部委員会講評要約

スタートアップ向けセットアップオフィスへの転換や、既存サウナを活かした都市部オフィスビルへの再生を、遵法性確保や環境負荷低減等の社会課題に配慮して実現した点が高く評価されました。

採光の確保、セットアップ、サウナとの混合など、渋谷というエリアとオフィスマーケットに適合したビルへ生まれ変わらせることで、物件の魅力度を向上させている点、改修後の賃料水準は新築セットアップオフィスと同等であり、改修により空間性能を新築級にまで高めた効果が確認できるなどの評価を受けました。

【B_既改修事例】では、この他にプロフィッツの「BLOCKS恵比寿」、AP STUDIOの「成城学園前プロジェクト」、アマネクの「アマネクイン別府」、東郷神社の「東郷の杜 東郷記念館」、安田不動産の「HAMACHO FUTURE LAB」、リアルゲイトの「渋谷区千駄ヶ谷3丁目再生PJ」が採択されました。

まとめ

「中小ビルのバリューアップ改修投資の促進に向けたモデル調査事業」において外部委員会が高評価としたのは、主に次の2点です。

1.汎用性のある改修について

遵法性確保や検査済証のない建築物への対応、老朽化設備の認証取得水準への更新など、多くの中小ビルで直面する課題に対する汎用性観点が高評価され、取組が不動産市場における物件の流動性向上に寄与する点も評価されました。

第1期の「賃貸事務所」から、第2期で「住宅以外の用途」に対象が拡大されましたが、環境性能や防災機能の向上、地域へ開かれた不動産等、用途を問わず参考とできる点が評価されました。

2.社会のニーズを捉えた課題設定について

社会や地域のニーズを的確に捉えることは、社会的なインパクトの創出に加え、人流の活性化やにぎわいの創出などを通じて地域価値の向上を図り、ひいては不動産の経済的な価値向上に寄与するものと評価できるため、必ずしも賃料上昇が説明されていなくても、マーケットの調査・分析等を通して社会や地域のニーズを的確に把握し、そのニーズに適切に対応している改修は、不動産の経済的な価値向上を図る取組として高く評価されました。

近年は、建設ストックを活かす取組として大規模改修やリノベーションへの取組みが注目されています。

建設学生の皆さんもここに着目し、例えば卒業設計や修士設計などでも、既存建築の改修案やリノベーションをテーマとした設計作品が増えています。

今回、採択された全物件については、国土交通省のリリースに詳細が記載され、また改修提案物件では、改修工事の進捗や竣工に合わせて、今後、具体的事例が紹介されることも多いと思われますので、本記事で紹介いたしました。

 

出典:「中小ビルのバリューアップ改修投資の促進に向けたモデル調査事業」第2期採択モデルの決定(国土交通省)

 

(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)