能登半島地震の建築物被害の原因分析、最終とりまとめ公表について【建設NEWS】

2025年12月23日、国土交通省国土技術政策総合研究所(国総研)及び国立研究開発法人建築研究所による、「令和6年能登半島地震における建築物構造被害の原因分析を行う委員会」は、同委員会が4回にわたる委員会で調査分析を行った建築物の被害状況や被害要因の「最終とりまとめ」を公表しました。

同委員会は国土交通省が設置した有識者委員会で、東京大学生産技術研究所 中埜良昭教授を委員長として、建築構造の専門家等19名で構成されます。

令和6年能登半島地震における建築物等の被害状況

令和6年能登半島地震は2024年1月1日16時10分に石川県能登地方で発生し、輪島市や志賀町などで震度7が観測されたほか、能登地方の広い範囲で震度6強以上の地震動を観測しました。

同地震は数多くの建築物に倒壊などの被害をもたらしました。その人的被害や住家に対する被害状況を、令和7年10月15日時点でまとめたものが下表となります。

木造建築物の被害状況は耐震等級2以上で倒壊被害ゼロ

令和6年能登半島地震における木造建築物の被害状況について、同委員会は日本建築学会が石川県輪島市や珠洲市、穴水町で実施した「悉皆(しっかい)調査」の結果を利用し、被害を受けた計4,909棟の木造建築物について、航空写真や建築確認台帳から建築年代を推定し、建築主などから入手した設計図書や構造計算を基に倒壊要因の分析を行いました。

この結果、現行耐震基準である「2000年基準」が倒壊・崩壊防止に有効であり、年代に関わらず木造建築物全体では、倒壊・崩壊率が14.5%であるのに対して、2000年基準に適合した木造建築物では0.7%と低い結果であることを、2024年11月の中間発表で明らかにしていました。(下表)

2025年12月23日の最終とりまとめでは、さらに分析を進めた結果として、2000年基準に適合した木造建築物のうち、住宅性能表示制度により耐震等級2や3を取得した住宅と長期優良住宅の認定を取得した住宅について、いずれも大破や倒壊・崩壊といった被害がなく、大部分が無被害であったことを公表しました。(下表)

上表において、認定長期優良住宅19棟のうち14棟は耐震等級2または等級3の物件と重複しています。

耐震等級とは、極めてまれに発生する地震による力に対して、構造躯体の倒壊・崩壊等のしにくさを評価するもので、耐震等級1を建築基準法レベルとして、耐震等級2は等級1の1.25倍以上、耐震等級3は同1.5倍以上の地震力に耐えられるよう、「筋交い」や「面材」による耐震壁を多く配置しています。長期優良住宅では原則として耐震等級2の基準以上の耐震性能を求めています。

国土交通省及び委員会では、今後の地震対策の方向性として、住宅性能表示制度や長期優良住宅認定制度を、一層、活用促進していくことが倒壊・崩壊といった深刻な被害の防止に有効であると方針を公表しました。

転倒被害が確認された鉄筋コンクリート造建築物について

令和6年能登半島地震を象徴する被害の1つに、石川県輪島市で7階建てビルが転倒する被害がありました。このビルは1973年に建設され、1975年に竣工を迎えた、地上7階建ての鉄筋コンクリート(RC)造ですが、地震発生後に低層階が地面に3m以上めり込みながら横倒しとなりました。

杭基礎のRC造建築物の転倒被害として日本初の事例であり、委員会ではビルの上部構造を解体すると同時に、地盤を掘削して地盤中の基礎杭の損傷状態を調査しています。

当該ビルは基礎杭の耐震設計が確立されていない時期に建築されたもので、変形性能の小さい基礎杭であったことなどから、杭頭部が地震動によって破壊されたもので、建築物の立面形状が細長く、柱配置が偏っていたことなどから、建物重量が特定の柱に偏り、一部の基礎杭に負担が集中した結果、地震動によって片側へ傾斜が発生したものと分析されました。

基礎杭の破壊後に建物下面を支える表層地盤が軟弱であったため、建築物の沈下に伴い傾斜が更に進行し転倒状態に至ったとされ、転倒に至るメカニズムについて未解明の部分も多くあるものの、分析された状態が複合的に関連した結果、転倒被害が生じたものと、現時点で整理されました。

基礎杭の耐震設計における現行基準が導入された平成13年(2001年)以降に建築された建築物については、基礎杭及び接合部に一定強度や変形性能が確保されるため、転倒抑止が期待され、現行基準導入前に建築された建築物のうち今回と同様の地盤条件など、転倒の可能性がある建築物について、安全性の確保に向けた取組みを実施することが対策の方向性になるとしました。

非構造部材などの被害による建築物の継続使用性に関して

令和6年能登半島地震では構造部材・非構造部材の被害により継続使用性が損なわれた事例だけではなく、建築設備やライフライン(水道・電気・ガス等)の途絶により、継続使用性が損なわれた建築物が多数確認されています。(下図)

国土交通省では、2018年に「防災拠点等となる建築物に係る機能継続ガイドライン」を公表しており、防災拠点建築物の機能継続を図るうえでの企画・設計・運用について、各段階の考え方を示しています。

国土交通省は今回の最終とりまとめを受けて、非構造部材や建築設備の被害を抑える耐震設計の考え方について、今後、ガイドラインの充実を目指していきます。

まとめ

地震被害については、過去に発生した地震の大きさや頻度をもとにして、地域ごとに「地震地域係数」を定めています。

被害想定や建築物の構造計算において、「地震地域係数」が考慮されてきましたが、令和6年能登半島地震をはじめとして、近年は想定を超えた地震動が頻発傾向にあり、委員会では地震地域係数を用いた基準の在り方についても、見直し等の検討を行うと結論づけています。

下図は、新耐震基準が適用開始となった、「1981年6月以降に震度6弱以上の地震動を観測した地点」を地図表示したものです。

同委員会の担務は、建築物構造被害に対する原因分析が主ですが、令和6年能登半島地震では港湾隆起や主要道路の寸断等の被害が大きく、復興の足かせになったほか、水道をはじめとしたライフラインの復旧に多くの時間を要しています。

復興現場では特殊建機やUAV(ドローン)の活用など、復旧工事を担う建設業者によって、従来にない手法の導入が進められています。

委員会の分析や復旧・復興工事事例の蓄積が、南海トラフ地震など今後発生が想定される巨大地震の減災や被害抑止につながること、被害発生時に早期復旧・復興に適用されていくことが期待されます。

 

出典:令和6年能登半島地震における建築物構造被害の原因分析を行う委員会 最終とりまとめを公表します(国土交通省)

 

(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)