
業界再編!インフロニアHDが三井住友建設と経営統合へ【建設NEWS】
準大手ゼネコンの前田建設工業や前田道路を傘下に持つインフロニア・ホールディングスは、2025年5月14日、同じく準大手ゼネコンの三井住友建設に対して、完全子会社化を目的としたTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表しました。
この買収が成立すると、両社を合わせた売上は1兆円を超えて、大手5社に次ぐ規模となり建設業界の大型再編となります。
インフロニアHDと三井住友建設、経営統合の目的とスケジュール
2025年5月14日、インフロニアHDの岐部一誠社長と三井住友建設の柴田敏雄社長が合同記者会見を行い、今回のTOBによる三井住友建設の100%子会社化について両社が合意していることを表明しました。
建設業界では人手不足や資材価格の高騰に加えて、人口減少による将来の公共工事縮小など、国内事業環境が厳しくなる中、準大手建設会社同士の経営統合でスケールメリットを生むと同時に、両社がそれぞれ培ってきた土木・建築の技術を結集して、今後、老朽化によって維持管理・更新需要が高まることが見込まれるインフラ案件の受注拡大を目指すとのことです。
三井住友建設は、国内大型プロジェクトの工法変更などの影響で相次いで損失を計上するなど業績が低迷する中、「さらなる成長を目指すには経営統合がベストと判断し、財務体質の改善と早期の業績回復による企業価値向上を急務とする」とのことです。
インフロニアHDは「他の建設会社や異業種と差別化しないと勝ち残れない。両社のシナジーで強化されるのは、設計から施工管理まで、技術的なスキルを生かして進める『エンジニアリング力』である。唯一無二の総合インフラサービス企業としてさらなる進化を目指す」と述べました。
下表はインフロニアHDが発表資料で示した、「三井住友建設との経営統合で期待されるシナジーの詳細」です。
TOBは2025年7月に開始し、年内に経営統合への準備を進め、来年1月の子会社化を目指していくとのことで、買収総額は約940億円にのぼるということです。買収成立後は三井住友建設は上場廃止となります。
下表はインフロニアHDが発表資料で示した、「経営統合に向けたスケジュール」です。
経営統合により売上規模は大手5社に次ぎ、土木分野では大成建設グループに次ぐ!
インフロニアHDと三井住友建設はTOB実施の発表と同日、それぞれの2025年3月期決算を発表しました。インフロニアHDの連結売上高は前期比6.8%増の8475億円、三井住友建設は同3.4%減の4629億円でした。両社を合計すると売上高は1兆3105億円となります。
2025年3月期の連結売上は鹿島が2兆9118億円、大林組が2兆6201億円、大成建設が2兆1542億円、清水建設が1兆9443億円、2024年12月に決算を迎えた竹中工務店は1兆6001億円でした。(各社決算資料より)
インフロニアHDと三井住友建設の連結売上高を合算すると、売上高規模は、スーパーゼネコン5社に次ぐ規模となります。
また日経クロステックが発表した、土木売上高の合計は4600億円を超えます。
以下は、日経クロステック、2025年5月16日掲載記事からの引用です。
「前田建設工業と前田道路、三井住友建設の土木売上高の合計は4689億円となる。大手4社の各グループと比較すると、大成建設と大成ロテック、ピーエス・コンストラクションを合算した大成建設グループの5059億円に次いで大きい。鹿島と鹿島道路の計4646億円、大林組と大林道路の計4011億円、清水建設と日本道路の計3755億円を上回る。」
※「」内引用(出所:インフロニアHDが三井住友建設を買収へ、土木売上高で大手4社に比肩 日経クロステック2025.5.16)
これからも建設業の業界再編は続くのか?
インフロニアHDは2022年に、中堅ゼネコンである東洋建設を完全子会社とするべくTOBを試みましたが、開始直後に投資運用会社の介入により中止した経緯がありました。また今回の経営統合先である三井住友建設は、2003年に三井建設と住友建設の合併によって新会社となった総合建設業であり、グループに子会社22社、関連会社7社の合計29社を有するグループ企業でもあります。
両社に関わらず建設業界では合併や経営統合、資本出資や業務提携は今後も積極的に進められていく可能性は大きいと思われます。業種や業態についても総合建設業同士だけではなく、住宅メーカーが総合建設業を傘下としたり、最近では建設コンサルタント業界最大手の日本工営が保険業界最大手の東京海上HDに買収されたりするなど、異業種間の経営統合なども行われています。それらの多くは、経営環境の変化に対して、将来的な勝ち残りをかけて進められています。
近年も日産自動車やパナソニックの報道など製造業を中心に、業績不振や大規模リストラとともに語られることの多い経営統合ですが、建設業では受注が好調な背景があり、人手不足に対する対策や技術開発、利益改善、市場開拓を目的とした業界再編が順次進んでいくことでしょう。
出典:2025.5.14「総合インフラサービス企業」のさらなる進化に向けた インフロニア・ホールディングス株式会社と 三井住友建設株式会社との経営統合について 説明資料
(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)