2025年度 住宅着工戸数は駆け込み需要後、2カ月連続で大幅減。回復なるか?【住宅業界NEWS】

2024年度新設住宅着工戸数は、2025年4月からの脱炭素大改正(改正建築物省エネ法と改正建築基準法の全面施行)を控えた駆け込み需要で、第4四半期に着工戸数が急増し、81.6万戸と3年ぶりに増加していました。

その詳細は前記事で解説した通りですが、2025年度初頭は、当初よりこの反動で住宅着工戸数が減少するのではないかと見られていました。

国土交通省では毎月末に、前月末時点の「建築着工統計調査報告」を公表しています。本記事では、2025年6月30日に公表された、本年度5月末時点の住宅着工統計をもとに、4月、5月連月の状況と今後の見通しについて解説します。

なお、2024年度新設住宅着工戸数について、前記事を未読の方はこの機会にぜひご確認ください。

前記事:2024年度新設住宅着工戸数は81.6万戸で3年ぶりに一転増加へ!【住宅業界NEWS】

2025年5月の新設住宅着工戸数(概要)

国土交通省が6月30日に発表した建築着工統計調査報告によると、2025年5月の新設住宅着工戸数は4万3237戸となり、前年同月比で34.4%の大幅な減少となりました。

同じく、2025年5月30日に公表された2025年4月の新設住宅着工戸数は5万6188戸で前年同月比26.6%減少しており、2カ月連続で大幅に減少したことになります。減少が続いている最大の原因は、前年度末に「脱炭素大改正」を控えて、駆け込みで大幅に着工戸数が増加した反動と思われます。

2025年3月の新設住宅着工戸数は8万9432戸で、前年同月比39.1%増と大幅に増加していたのです。

■2025年5月新設住宅着工戸数の概要

1.新設住宅着工戸数:43,237戸(前年同月比 34.4%減・2カ月連続減)

2.新設住宅着工床面積:3,333千㎡(前年同月比 35.9%減・2カ月連続減)

3.季節調整済年率換算値※:529千戸(前月比 15.6%減・2カ月連続減)

出所:国土交通省

2025年5月の新設住宅着工戸数は、4月と比較しても1万2951戸減少しており、月度着工戸数が4万戸台になったのは1963年1月以来と、62年ぶりの低水準になるのです。

※季節調整済年率換算値とは?

月ごとの変動が激しい住宅着工数を、より安定した指標として把握するため、短期的な変動ではなく「実質的なトレンド」を見るために使われます。

■利用関係別の戸数(持家・貸家・分譲マンション、分譲一戸建て)

利用関係別では、2025年5月は持家、貸家、分譲住宅(マンション・戸建て)の全てが前年度比マイナスとなり、4月から連続2カ月減となりました。

減少幅は上記図表通りですが、統計で捉えている持家、貸家の資金別では下記の通りと発表されています。

■資金別の戸数(持家・貸家)

1.持家

・民間資金による持家 10,802戸(前年度比 31.8%減、2カ月連続の減少)

・公的資金による持家  1,118戸(前年度比 20.7%減、2カ月連続の減少)

2.貸家

・民間資金による貸家 17,133戸(前年度比 32.3%減、2カ月連続の減少)

・公的資金による貸家  1,760戸(前年度比  6.4%減、8カ月ぶりの減少)

■地域別の戸数

地域別戸数は下記の通り、首都圏・中部圏・近畿圏に比べると、大都市圏ではない「その他地域」の減少幅が大きくなっています。

1.首都圏

総戸数(前年同月比 31.5%減)

持家(同 26.5%減)、貸家(同 11.6%減)

分譲住宅(同 51.5%減)うちマンション(同 66.6%減)、一戸建(同 32.1%減)

2.中部圏

総戸数(前年同月比 22.3%減)

持家(同 22.7%減)、貸家(同 4.3%減)

分譲住宅(同 41.7%減)うちマンション(同 74.6%減)、一戸建(同 7.91%減)

3.近畿圏

総戸数(前年同月比 36.0%減)

持家(同 22.9%減)、貸家(同 51.26%減)

分譲住宅(同 29.2%減)うちマンション(同 25.9%減)、一戸建(同 34.8%減)

4.その他地域

総戸数(前年同月比 40.5%減)

持家(同 36.9%減)、貸家(同 46.1%減)

分譲住宅(同 38.3%減)うちマンション(同 49.0%減)、一戸建(同 31.9%減)

■都道府県別の戸数

さらに詳しく都道府県別に着工戸数を見ると、全国47都道府県で44都道府県が前年同月を下回っています。

特に50%以上減少したのは11県あり、その中でも特に減少が顕著なのは、青森県(前年同月比68.6%減)、和歌山県(同73.2%減)、鳥取県(同71.9%減)でした。

前年同月を上回った3都道府県は、秋田県(前年同月比24.8%増)、徳島県(前年同月比13.2%増)、大分県(前年同月比7.6%増)でした。

全都道府県の着工戸数は下表の通りとなります。

住宅着工戸数は、この先も減少が続くのか?取材結果の引用から

2025年5月に上場している大手住宅企業の決算短信が出揃いましたが、2026年3月期決算予想では、住宅売上は微減程度の計上が大勢を占めていました。

年度初めより、2カ月連続で新設住宅着工戸数が減少しており、特に5月は減少幅が拡大しているため、今後の動向に不安を感じられる中、2025年7月8日付の日経クロステックにて、住宅着工戸数の今後の見通しについて、「国土交通省 住宅局 住宅戦略官付住生活サービス産業振興官の永田幸樹氏にお聞きした貴重な取材結果」が掲載されました。下記に引用いたしますとともに、リンクにて記事を紹介します。

「」内引用

「今後の見通しについて永田氏は、「25年5月後半から6月前半にかけて交付された確認済み証の件数を見ると、過去10年で最多を記録した25年3月と同程度だ。6月ごろから一定程度は回復していくのではないか」と話す。」

引用元:日経クロステック2025年7月8日掲載

5月末までの住宅着工戸数大幅減少に関して、2025年4月の建築基準法改正により、「確認審査期間が7日以内から35日以内に延びた」影響が大きく、4月、5月を跨いでGW期間があったため、確認済み証の発行がずれている実態があるようです。

総合資格ナビでは、6月統計以降も引き続き、新設住宅着工戸数をはじめ、国内住宅市場の動向に注目していこうと思います。

動向については、総合資格ナビで紹介していきますので、引続き掲載をお待ちください。

 

(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)