【建設学生団体・紹介】近畿大学建築学部 建築研究会 あきばこ家
近畿大学建築学部には、歴史ある建築研究会(KENKEN)から派生した、3つの大学公認学生団体があります。
建築研究会(KENKEN)が活動理念としてきた「建築学部生が知見を広げるべく、研究の実践を行う」ことを継承して生まれた3団体は、建築見学や模型制作を中心にデザインで活躍するDesign Studio、ツリーハウスを建てる活動を中心とするTSURiHA、空き家利活用やリノベプロジェクトを通してまちが活きる場をつくる活動を行う あきばこ家です。
本記事では、あきばこ家2025年度代表 中村恭太郎さんと、同ものづくり班班長 石黒沙羅さんへのインタビュー結果をもとに、同団体の活動紹介をいたします!
あきばこ家の初プロジェクトは「ながせのながや」!
2014年に発足した あきばこ家は、「空き家をつかう・場をつくる・人をつなげる」の3つの軸をもとに、コミュニティを越えて人がつながり活動できるまちづくりを目指して活動しています。
現在、あきばこ家は、主な活動として、空き家のリノベーションをはじめ、DIY支援やサブリースによるストックの活用、地域向けイベントの企画、あきばこ家とつながりのある人同士の紹介までを積極的に行っていますが、その活動のきっかけとなった団体初の改修事例が「ながせのながや」です。
ながせのながやは、当時、築86年となる6軒長屋を2軒続きでリノベーションするプロジェクトでしたが、あきばこ家初代代表 浅井駿平さん等が中心となって、現況調査・改修案の作成・提案・施工などのサポートを担当して改修工事を進め、2016年に竣工しました。
改修後の建物用途は、2階に個室5部屋(4室はロフト付)を有するシェアハウスで、1階には地域サロンとして、各種イベントや交流の場に使えるレンタルスペースを備えています。シェアハウスの共用部として、1階にキッチンやリビング、洗面やシャワー室も完備しています。
長瀬駅から徒歩2分と駅近の好立地にあり、古い既存の柱や梁を活かした空間、漆喰で塗られた壁、無垢の杉フローリング、琉球畳のモダンな畳スペースなど、普通の賃貸アパートでは体験できない暮らしを創設する「地域と暮らす古民家シェアハウス・ながせのながや」は竣工時から大きく取り上げられ、地域で話題となりました。
現在では築年数95年を迎えた、ながせのながやですが、懐かしくも新しい素敵な建築に生まれ変わり、あきばこ家のシンボルといってよい存在なのです!
現在、ながせのながやは、あきばこ家と、初代代表を務めた浅井駿平さん等によって2019年に設立された、合同会社フーシャアーキテクチャ 一級建築士事務所(以降「フーシャ」と称します)によって管理・運営されています。
そして、ながせのながや2階のシェアハウスには入居者が住まい、1階では一般へのレンタルスペース貸出しを運営しながら、学生団体あきばこ家の主たる活動拠点となっています。
2019年に竣工した学生シェアハウス「かみこさかの家」
第3弾改修プロジェクトは、近畿大学から徒歩3分にある、築40年の戸建て住宅をリノベーションした、「かみこさかの家」です。
かみこさかの家は、1階に既存居住者の居室と地域サロンスペースを設けて、2階に個室2部屋と共同作業スペースを設けています。2階2室に学生が住まう想定で、玄関を経由しなくても、地上から2階に自由に出入りができるように、外部から2階バルコニーに向けて、螺旋状の階段を設置しているのが建物の特徴となっています。
古い既存の柱や梁を活かした空間、土で塗られた壁、無垢の杉フローリング、広いテラスなど自然素材をふんだんに利用した特徴的な内装デザインとしており、入居者の募集や賃貸管理などの運営を、あきばこ家とフーシャが担っています。
この他にも、あきばこ家は長瀬駅や近畿大学周辺で「長瀬近大通り長屋再生プロジェクト」に関わりを持ち、第2弾となった、当時築50年の「4軒長屋」改修工事も2018年に竣工しています。
以降も不定期ではありますが、これまでの活動実績やOBが経営するフーシャの営業展開などをもとに改修プロジェクトが立ち上がり、あきばこ家は学生団体でありながら、プロ事業者さながらに、リノベ案件の設計・施工を担務する活動が継続できているのです!
あきばこ家のすごいところ!アピールポイントやメリットなど
2025年度代表を務める近畿大学 建築学部 建築学科3年 中村恭太郎さんに、あきばこ家の「すごいところ」を3つ挙げていただきました。
・Point1:数多くのイベントを企画!実施!参加!しています。興味のあるイベントが必ずある!
・Point2:皆がパワフル!社会で役に立つ内容がたくさん学べる!
・Point3:学業は絶対におろそかにしない!大変なときは助け合い!!
2014年に発足したあきばこ家ですが、設立後2年は浅井駿平さんが初代代表を務めており、2025年度 中村恭太郎さんが10代目代表となるそうです。2016年に竣工した、ながせのながやも竣工後10年目となり、一つの節目を迎えた本年度も、あきばこ家は学生たちによる、新たな挑戦を継続中です!
あきばこ家の主な活動
空き家を改修した「ながせのながや」を拠点として、様々なイベントを企画、運営、参加などしたりしています!!全員があきばこ家を良くするために動きます!!!ながせのながやを通して、地域の人とつながり、東大阪といえば、あきばこ家!そう呼ばれる日を目指して頑張っています!
あきばこ家は学部生108名が在籍する大所帯となります。そこで代表、副代表、代理補佐、会計などコアなメンバーと、4名の班長が幹部となり、顧問教員 浦井先生やフーシャから参加されるOBを交えて定例会を実施しています。
2025年度幹部の組織体制は下表の通りです。
在籍する学生たちは、それぞれが各班に所属して、毎週、班会議を行い、班ごとの活動を進めていきますが、イベント運営や改修プロジェクトなどでは班を越えて、自主参加による活動も積極的に行うことができます!
■定例会:
会場は、①ながせのながや、➁近畿大学アカデミックシアター内 ACTで開催しています。
定例会は月に1度、第1火曜日に顧問 浦井先生&フーシャ&あきばこ家幹部で実施しています。
班会議は、前期は毎週火曜日昼休み、後期は毎週水曜日昼休みに実施しています。
■2025年度は「あきばこ家(大学生)×福祉事業者(メディケア・リハビリ)×建築士(フーシャ)によるコミュニティカフェ開設プロジェクト」を進行中
2025年度は、介護・医療・福祉事業を展開する株式会社メディケア・リハビリと、建築士事務所の合同会社フーシャ、近畿大学 あきばこ家が共同で、大阪府大東市の元クリニックビルを改装して、コミュニティカフェを誕生させるプロジェクトが進行中です。
このプロジェクトであきばこ家の学生が取組むのは、1階カフェのデザイン、設計、DIY施工です。メディケア・リハビリは1階をコミュニティカフェとして、地域の方が集う場、交流するイベントを行う場とするなど幅広い活用を考えています。また、メディケア・リハビリが運営するイベントだけではなく、近隣事業者やサークルに使って頂けるレンタルスペースとしても活用し、世代を越えた交流と学びの場として「賑わい」を作ることを目標にしています。
あきばこ家が担うDIYには、学生だけではなく、近所の子ども達に参加していただくことを企画しています。この地域活性化につながる多世代交流拠点は2025年秋オープン予定です!
参考:メディケア・リハビリ社 プレスリリース 2025.5.7(PRタイムズ)
■年間スケジュール(2025年度の例)
あきばこ家の活動紹介
■まちあるき(新入生歓迎会) 4月27日
新入生が入学すると、オリエンテーションであきばこ家の活動内容をお知らせします。同時に新入生歓迎会として企画した、近畿大学周辺のまちあるきへ参加を募りました。
新入生に、これまであきばこ家が行ってきた活動を知ってもらうために、ながせのながや、かみこさかの家、4軒長屋を見て回り、3回生から後輩に改修プロジェクトの説明を行いました。新入生と一緒に参加した上回生にとっても活動をより深く知る機会となり、飲み物やお菓子などを用意して歓迎懇談会も行い、学生同士の距離が一気に縮まりました。
■ふれあい祭り(3団体合同イベント) 5月10日
5月はDesignStudio、TSURiHAとの3団体合同イベントとして、花園ラグビー場で開催される、「東大阪市民ふれあい祭り」に参加しました。
例年、大阪府建築士会の地域サークル「建築士の会 東大阪」と合同出店で、地域の人へのPRや子供向けイベントを開催しています。学生たちで当日のテント屋根をデザインしました。子供たちが参加できるボーリングゲームなどを催し、多くの家族連れが来場参加して盛り上がりました。
■風鈴づくり @ながせのながや 6月15日
6月は本年度メンバーが、地域の人々との繋がりを作り直す第一歩として、イベント班が「風鈴づくりのワークショップ」を企画しました。参加費100円でながせのながや見学と、風鈴づくりを楽しんでいただける企画です。ながせのながやでは、定期的に催しを行いますが、続けることにより再来場いただける人が増えていくことも、私たちのやりがいとなります。
■七夕まつり in東大阪市近江堂リージョンセンター 7月6日
東大阪市には市民交流の場として、7つのリージョンセンターがあります。あきばこ家は、このうち最寄りの近江堂リージョンセンターで定期的にイベントを行います。
7月は七夕まつりに合わせて、子供たちがものづくりに興味を持ってくれるきっかけとするために、「木の家作り」を企画・開催しました。
子供たちと一緒に小さな木の家を作りましたが、参加したお母さんやお父さんも大変嬉しそうでした。家族のマイホーム購入に繋がるかもしれませんね!
■寺子屋イベント @ながせのながや 7月
地域の子供たちと交流を深め、ながせのながやの存在を知ってもらうため、定期的に寺子屋イベントを実施しています。7月はお菓子を準備して、縁日スタイルで実施し、参加した小学生は、なつやすみの宿題をしたり、ゲームで遊んだりしました。
■まちをつくろう @大阪市立住まい情報センター 8月2日、3日
8月2日、3日に大阪市立住まい情報センターが主催する、「住まいと暮らしのワークショップ 親と子の都市と建築教室」イベントに参加しました。
この催しは2001年から開催され、今年で25回目となるイベントで、同センター4階には、過去イベントの記録をパネルとして8月31日まで展示もしていました。
イベント企画には、あきばこ家OBでフーシャ代表の浅井駿平さんが関わり、参加大学も近畿大学だけではなく、大阪公立大学、摂南大学、滋賀県立大学、関西大学、神戸大学などから多数学生が運営参加し、イベントでは、子供たちに段ボールで家を作ってもらい、それらを集めてまちを形成するというものです。
1日目は子供たちによる設計を指導して、2日目は制作をする、2日間に渡る大掛かりなワークショップでした。あきばこ家メンバーは、1月以降、2週間に1回の企画ミーティングに参加するなど、準備段階から本イベントに関わることができました。
■あきばこ家 夏合宿 9月3日4日@岐阜
あきばこ家では、新型コロナ感染拡大の影響から合宿は一時休止をしてきましたが、今年の夏は念願の復活を果たし、参加希望メンバーで岐阜県に建築見学旅行に行ってまいりました。
行き先は1日目が岐阜県養老町の養老天命反転地と岐阜市のみんなの森 ぎふメディアコスモス、2日目は多治見市に向かい、セラミックパークMINOと多治見市モザイクタイルミュージアムを見学しました。
メンバー同士の親睦も深まり、普段見に行けない有名建築を見て勉強になりました。
■まちあるき(まちばこ見学会) @梅田 9月9日
メディア班が編集、制作している地域誌「まちばこ。」の取材で大阪梅田周辺のまちあるきをしました。建築見学は、国立国際美術館、グラングリーン大阪、梅田スカイビルを探訪しました。
この日、取材した内容をもとに、「まちばこ。2025秋号(11月発行)」を制作します。
まちばこ。は学生と長瀬をつなぐフリーペーパーとして発刊し、長瀬の商店街に置かせていただいています。もちろん、ながせのながやにも設置していますので、お寄りの際はぜひ手に取ってご覧ください!
毎号の記事では、近畿大学の学生に向けた学内情報や教授などへのインタビュー、長瀬の街のお店情報や観光スポット、喫茶店や飲食店レポートなどを掲載しています。
■まちあるき@大和郡山市 9月10日
奈良県大和郡山市を拠点にリノベーション・企画・運営など、広く活動されている大垣さんを訪ねて、お話を伺いながら、実際のリノベーション物件を見て回りました。
■秋祭り @ながせのながや 9月20日
あきばこ家の認知や地域の方々との交流を目的に、ながせのながやで秋祭りを開催しました。多くの子供が参加して、千本引きや紙飛行機飛ばし大会などを行いました。
■オープンナガヤ @ながせのながや 10月4日、5日
オープンナガヤ大阪2025は、大阪付近にある長屋の歴史を地域の方に知ってもらうためのオープンハウスイベントです。今年は全33箇所の長屋がイベント参加し、東大阪市からは、ながせのながやと「染め色あそび菱屋西」が参加しています。
あきばこ家は、来場者に、ながせのながやや、あきばこ家の活動紹介をしました。
■リージョンセンターフェスタ @東大阪近江堂リージョンセンター 10月5日
10月開催のリージョンセンターフェスタでは、子供たちにレーザーカッターで切り出したベニヤ板、アクリル板で家の模型を作ってもらうイベントをしました。
■その他のイベント @近畿大学 & ながせのながや
後期実施では、その他に次のようなイベントがあります。
・裏庭コンペ@ながせのながや9月 ※裏庭活用案をコンペで競い合い、実施も予定
・ハロウィンイベント@ながせのながや:10月19日
・生駒祭@近畿大学 例年11月初旬 ※模擬店出店とあきばこ家の活動紹介
・あきばこ家フットサル大会
・クリスマスイベント@ながせのながや
・模型の添景作りイベント
・もちつきイベント@ながせのながや
■第2回建築学生ピッチコンテスト 2026年2月27日@豊中文化芸術センター
昨年、第1回開催となった「建築学生ピッチコンテスト」は、兵庫県西宮市の総合建設業、株式会社ナビックが主催する、「建築を学ぶ学生による、サークル活動紹介をピッチ形式で発表する大会」です。
昨年度、近畿大学からは、TSURiHAとあきばこ家が出場し、他にも武庫川女子大学(古民家族)、京都大学×同志社大学(スタジオ鴨)が出場して競い合いました。
最終審査結果は、近畿大学TSURiHAが優勝、武庫川女子大学 古民家族が準優勝でした。あきばこ家も審査員から多くのよい評価コメントを頂き、第2回大会も入賞を目指して連続出場したいと思います!
昨年度大会のプレゼンの様子がYouTubeで公開されています!
ぜひ 「こちら」 からご覧ください。
あきばこ家 今後の展望
代表 中村恭太郎さんに、あきばこ家についての自身の想いや、今後の展望についてお聞きしました。
「僕たちが、あきばこ家を選んだのは、改修プロジェクトなどで、実務を実体験できることに魅力を感じたことや、日頃の活動を通して東大阪市や長瀬のまちに住まう人々や子供たちと直接関われることが尊いと思ったからなのです。
あきばこ家ができてからの11年間を通して、学生ならではの活動を支えていただけたり、挑戦する機会を設けていただけたりする先輩や団体、地域企業の方々がたくさんフォロワーになってくださいました。
この関係は学生時代のうちだけではなく、また自分たちの代から後輩たちへ、これからもずっと続いていくような実感があります。
あきばこ家で、様々なイベントを企画して、自分たちで運営していくことや、情報発信を通して、小さな子供たちにもたくさんイベントに参加してもらい、建築に興味を持ってもらうことに全力で取り組んでいけば、その活動が建築業界に活気をもたらし、10年後20年後に繋がるまちづくりを生んでいくのだと思っています。
今回、取材いただいた、あきばこ家の活動内容は、何より東大阪市の市民に向けて発信していきたいと考えていて、東大阪といえば「あきばこ家」、そう呼ばれる日を目指して、仲間たちと一緒に頑張っていきたいと思います!」
建築研究会 あきばこ家 メンバー構成(2025年度)
・合計人数:108人
・学年人数: 4年8人、3年32人、2年20人、1年48人
建築研究会 あきばこ家 各種情報
代表(2025年度)
近畿大学 建築学部 建築学科3年 中村恭太郎
代表メールアドレス : nagaya.renovation(a)gmail.com
※迷惑メール対策でアドレスを一部変更しています。連絡の際は、(a)を@に変えてください。
各種URL
・ホームページ : https://nagayarenovation.wixsite.com/akibakoya
・Instagram : 公式インスタグラム (kindai_akibakoya)
ながせのながやインスタグラム (nagasenonagaya_akibakoya)
※本記事に掲載した図版・写真は、近畿大学建築学部 建築研究会 あきばこ家の提供によるものです。
(本記事は、総合資格naviライター kouju64がインタビュー取材を行い、記事構成しました。)




















