大成建設等がワイヤレス給電システム「T-iPower Beam」を実証【建設NEWS】
2025年12月15日、大成建設株式会社と三菱電機株式会社は、共同でマイクロ波ワイヤレス給電システム「T-iPower Beam」を用いた実証実験を行い、オフィス空間に設置された環境センサへ離れた場所から人体や建物に影響を与えずに非接触で効率よくワイヤレス給電が行えることを確認し、実証試験の結果を公表しました。
本記事では、大成建設プレスリリースをもとに、同システムおよび試験内容について、紹介します。
実際のオフィス空間に機器設置して行われた実証試験
近年、IoTや高速通信ネットワーク、AIの活用により、建物の設備機器や電子機器の稼働状況をリアルタイムに監視・制御する「スマート化」が急速に進み、様々な情報を可視化し、省人化・省エネ化により作業環境の改善や業務効率の向上を図るなどのニーズが高まっています。
オフィスや商業施設、工場では、建物内に温湿度や照度、騒音、人流などを測定する環境センサの設置が一般化していますが、有線式では配線工事が、バッテリー式では交換・充電などのメンテナンス作業が随時発生するため、導入・設置や運用に係る手間とコストの増加などが課題となっていました。
これらの課題を解決するため、大成建設と三菱電機は、2022年にマイクロ波を活用したワイヤレス給電システム「T-iPower Beam」を開発しました。
今回の実証実験※では、大成建設技術センター(横浜市戸塚区)において、三菱電機開発の送電装置と大成建設開発の建材一体型受電装置を組み合わせ、オフィス環境で給電等を実施しました。
※実証試験:総務省の「電波資源拡大のための研究開発(JPJ000254)」における委託研究「空間伝送型ワイヤレス電力伝送の干渉抑制・高度化技術に関する研究開発」により実施した成果を含む。
ワイヤレス給電システム「T-iPower Beam」実証試験の概要
今回の実証試験では、オフィス空間の天井に設置した受電装置の周囲を電波吸収体で囲むことで周囲へのマイクロ波拡散を抑制した安全な環境を構築しながら、「数W級」の電力を環境センサへ非接触で安定的に給電できることを確認しました。
また、漏えい電力※の高精度な予測が可能な電波環境シミュレーションによる解析結果の妥当性を検証しました。
これにより、スマートビルやスマートシティ実現に向けた安全かつ効率的で持続可能なワイヤレス給電基盤の実現可能性を検証しました。
※漏えい電力:送電装置から送電し、受電装置にて受電できなかった電力。
本システムの装置構成、試験概要および試験結果は、以下のとおりです。
■送受電装置構成
・送電装置:最大出力200W級のマイクロ波ワイヤレス送電装置(三菱電機開発、写真1参照)
・受電装置:漏えい電力を抑制する電波吸収体を、建築仕上材に組み込んだ建材一体型受電装置(大成建設開発、写真2参照)
■実証試験概要
・実証場所:大成建設株式会社 技術センター 人と空間のラボ(ZEB実証棟)
・実証期間:2024年10月~2024年11月
・実証内容:移動式サービスロボットに搭載した送電装置から、1.8m離れた天井に設置した2台の建材一体型受電装置へ送電。受電量と漏えい電力を計測(写真3参照)
漏えい電力の実測データと既存シミュレーション(2018年開発)を比較し妥当性を検証(写真4参照)
■実証試験結果
1.安全かつ効率的なワイヤレス給電を確認
送電装置から受電装置に最大4Wの非接触給電が可能。
例えば、消費電力180mW/h程度の環境センサでは、約60分間の給電で24時間稼働が可能となりました。さらに建材一体型受電装置の活用により、周囲への漏えい電力を50%以上低減し、人体や建物への影響を抑制しました。(図1参照)
2.シミュレーションによる電波環境の高精度な予測を実証
漏えい電力の実測値はシミュレーション計算値と±10dB以内で一致しており、シミュレーションを用いて漏えい電力などの電波環境の高精度な予測が可能であることを確認しました。(図2、図3参照)
まとめ
大成建設、三菱電機の両社は「T-iPower Beam」の実用化に向けた実証を、今後も継続して行い、マイクロ波による安全・高効率なワイヤレス給電技術を確立し、建物内での電波環境の構築に取り組むことで、スマートオフィスやスマートシティの実現に貢献していく計画です。
出典:マイクロ波ワイヤレス給電システム「T-iPower ® Beam」によるオフィスでの送受電を実証(大成建設プレスリリース)
(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)


