2026年4月施行・第2フェーズ「GX推進法改正」建設業はどう関わるのか?【経済産業省】
カーボンニュートラルは、気候変動を脱炭素化で抑制するために、国際的に進められている施策です。わが国では、2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」が宣言され、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロ(排出量から吸収量を差し引いて合計をゼロ)にする目標が定められました。
近年はこの取り組みをGX(グリーントランスフォーメーション)という用語で示すようになり、GX政策を進めていくための法律として、2023年5月にGX推進法が制定されました。GX推進法は、2025年5月28日に改正法が成立し、2026年4月1日に施行されます。
本記事では、GX推進法や改正のポイント、GXに対する建設業の関りなどについて解説します。
GX推進法と資源法とは?
GXとは?
GXとは、Green Transformation(グリーントランスフォーメーション)を略した用語です。
CO2排出量を実質ゼロとするカーボンニュートラル実現に向けて、化石燃料をできるだけ使わず、クリーンエネルギーを活用する経済に転換していくことを意味します。
GX推進法とは?
GX推進法は脱炭素と経済成長を両立すべくつくられた法律で、正式名称は「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」です。
GX推進法は2023年5月に成立し、2024年2月に施行されました。
GX推進法には、脱炭素と経済成長の両方を実現するための施策として、「排出量取引制度の導入」や「GX経済移行債の発行」などが盛り込まれています。
日本はエネルギー資源の乏しい国であり、化石燃料は他国からの輸入に頼っている現状があります。2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻により、エネルギーの安定供給が難しい状況が続きました。
GX脱炭素電源法とは?
GX推進には脱炭素電源の確立が不可欠であり、2023年5月には、GX脱炭素電源法(「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」)が成立しました。この法律は地域と共生した再エネの最大限の導入促進と、安全確保を大前提とした原子力の活用について制定しています。
資源法とは?
資源法は、正式名称を「資源の有効な利用の促進に関する法律」とし、製品の設計・製造から廃棄まで、3R(リデュース・リユース・リサイクル)を推進し、持続可能な循環型社会を目指す法律です。パソコンや自動車など、指定業種・製品に対し、省資源化や再資源化の設計、識別表示を義務付けています。
資源法の成立は2000年6月で、2001年4月施行ですが、GX推進に不可欠とされる再生資源の有効活用やCE(サーキュラーエコノミー)コマースの促進に向けて、2025年2月25日に改正され、3R(リデュース、リユース、リサイクル)を一層強化し、サーキュラーエコノミーへの移行を加速させる内容となりました。
2026年4月1日、改正GX推進法、改正資源法が施行されます。次項ではGX推進法成立から今日までの主な取り組みを紹介していきます。
GX推進法を基に行われてきた「GX実現への取り組み」
■GX実行会議開催と基本方針・ロードマップの決定
GX実行会議とは、GXを実行するために必要な施策を検討する場として設置された会議です。
議長は内閣総理大臣、副議長はGX実行推進担当大臣と内閣官房長官、その他有識者によって構成されています。
2022年7月に行われた第1回GX実行会議では、「GX実現に向けた基本方針~今後10年を見据えたロードマップ~」が閣議決定されました。内容は以下のとおりです。
■GX推進戦略と「GX2040ビジョン」
GX推進戦略は2023年に閣議決定され、正式名称は「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」といいます。最初のGX推進戦略には、GX推進法の成立などが盛り込まれていました。
2025年2月18日、改訂版となる新たな戦略「GX2040ビジョン」が閣議決定されました。ここでは、不確実性が高い現代社会でもGX関連投資が継続されるための施策が盛り込まれています。
■GX経済移行債と成長志向型カーボンプライシング
GX実現に向けた技術革新を進めるため「GX経済移行債」という国債を発行し、投資の原資として、今後10年間で150兆円超の官民投資を行うとしました。
GX経済移行債の償還は「成長志向型カーボンプライシング」を充当するとしました。
成長志向型カーボンプライシングは、排出量取引において、2033年度以降は政府が排出枠の一部をオークションで販売し、また2028年度以降は、化石燃料賦課金という企業がCO2排出に応じて政府に支払う賦課金が含まれるものです。
■成長志向型カーボンプライシング構想
成長志向型カーボンプライシング構想では、「GXリーグの設立」により、「排出量取引(GX-ETS)」を2023年度より実施しています。
1.GXリーグの設立
GXリーグは、国際ビジネスで勝てる企業群がGXを牽引する枠組みとして設立され、2024年4月時点で日本のCO2排出量の5割超を占める企業群が参画しました。
GXリーグでは参画企業が自主設定した排出削減目標達成に向けた排出量取引(GX-ETS)を実施し、GX製品投入やサプライチェーン上での排出削減への取組を促進するためのルール形成を行っています。
GXリーグのウェブサイトには、参画企業の取り組み事例が紹介されています。
例えば、川崎重工業株式会社はCO2排出量削減や水素事業による脱炭素化を推進しており、電源開発株式会社は経年劣化石炭火力の稼働抑制やバイオマス混焼の拡大に取り組んでいます。
2.排出量取引制度の段階的発展
GXリーグでは、2023年度から排出量取引(GX-ETS)を実施し、第1フェーズとして参画企業が自主設定する排出削減目標に向けて試行してきました。
2026年度からは第2フェーズに移行して、排出量取引市場の本格稼働を開始します。
2026年4月1日施行されるGX推進法改正のポイント
1.排出量取引(GX-ETS)は第2フェーズで法定化
2026年4月1日に改正GX推進法が施行されると、排出量取引(GX-ETS)は、第2フェーズに移行して法定化され、直近3年間のCO2排出量平均値が10万トン以上の企業は、排出量取引(GX-ETS)への参加が義務付けられます。
対象企業には業種ごとに特性を考慮して政府が定める基準によって、CO2排出枠が割り当てられます。その上で排出枠の割当量以上のCO2排出を行った場合は、GX-ETSを通じて枠に余裕のある企業から排出権を購入することが義務化されます。
年間10万トン以上のCO2排出量がある企業は、国内に300〜400社が存在します。
2.化石燃料賦課金の導入(2028年度から)
化石燃料賦課金は、2028年度から開始する制度で、石油などの化石燃料を採取したり輸入したりする事業者(企業)からCO2排出量に応じた賦課金を徴収するものです。
化石燃料賦課金は、排出量取引(GX-ETS)と合わせて、成長志向型カーボンプライシングの柱となり、これらでCO2排出を減らすことにインセンティブを与え、クリーンエネルギーへの転換を促していくものです。
3.GX分野への財政支援を整備
「GX経済移行債」の発行収入により、カーボンニュートラルに貢献する、炭素生産性を向上するための投資をした企業に税額控除が行われます。
大企業だけでなく、中小企業も対象としています。どれくらいの控除が行われるか、以下の表にまとめました。
中小企業は税額控除率が高く設定されており、企業規模に関わらず炭素生産性の向上に前向きとなれる制度といえるでしょう。
2026年4月1日施行される資源法改正のポイント
2026年4月1日に施行される、資源法(「資源の有効な利用の促進に関する法律」)の一部改正におけるポイントを解説します。
1.再生資源の利用義務化
今回の改正では再生資源の利用義務を課す製品が指定されます。
そして生産量が一定規模以上の製造事業者等に対し、当該製品における再生資源の利用に関する計画の提出及び定期報告を義務付ける措置が講じられます。
2.環境配慮設計の促進
資源有効利用・脱炭素化の促進の観点から、環境配慮設計を促進するための認定制度が創設されます。特に優れた環境配慮設計として、解体や分別のしやすさ、長寿命化につながる設計等が挙げられています。
3.GXに必要な原材料等の再資源化の促進
事業者による回収・再資源化が義務付けられている製品について、高い回収目標等を掲げて認定を受けた事業者に対し、廃棄物処理法の特例措置が講じられます。
4.サーキュラーエコノミーコマースの促進
サーキュラーエコノミーコマース事業者の類型が新たに位置付けられ、当該事業者に対して、資源の有効利用等の観点から満たすべき基準が設定されます。
GX推進について建設業はどう関わるのか?
GX(グリーントランスフォーメーションは)、幅広い産業に関連する政策です。
2022年に制定された「GX実現に向けた基本方針」では、「水素・アンモニア」、「蓄電池産業」、「鉄鋼業」、「化学産業」、「セメント産業」、「紙パ産業(製紙業)」、「自動車産業」、「資源循環産業」、「住宅・建築物」について、年次を追ったGX実現に向けた「今後の道行き」として、取り組んでいく施策が検討されました。
住宅・建築物に関する「今後の道行き」は下図の通りです。
建築業界は、施工や材料、建物の運用など、様々な面で脱炭素化が必要とされており、住宅や建造物の省エネ化、省エネ性能の高い建材の採用などが推進されています。また、実際に建築物分野は、日本の木材需要の約4割を占めています。
2025年4月には、改正建築物省エネ法・建築基準法が全面施行され、全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務付けられました。
建設業界ではGX実現に向けた取り組みは盛んになっており、今後も様々な取り組みが計画されています。
国土交通省が発表した、「建設施工におけるGXの実現に向けた取組」では、以下の3点を施策として挙げています。
1.建設材料の脱炭素化
2.ICT施工による施工の低炭素化
3.革新的建設機械の導入拡大
それぞれについて解説していきます。
1.建設材料の脱炭素化
建設現場では環境にやさしい原料を用いる取り組みが進められています。
具体的な取り組みとして、国土交通省が発注した公共工事では、低炭素コンクリートなど低炭素材料の導入促進などが進められています。
また、低炭素型コンクリートブロックを活用したモデル工事も実施され、モデル工事を通して、建設材料の調達面などで課題がないか検証が行われています。
2.ICT施工による施工の低炭素化
ICT施工では施工現場で生産性向上や品質向上のため、情報通信技術の導入により、作業軽減や作業時間の短縮を進めています。
作業時間の短縮は、建設機械の稼働時間削減によるCO2排出量の減少が期待できます。
3.革新的建設機械の導入拡大
国内産業部門では、建設機械がCO2排出量の約1.4%を占めているとされ、従来も燃費性能の向上などによりCO2削減を目指してきましたが、抜本的な機構やシステムの見直しが必要とされています。
建設機械の燃料を軽油からバイオマス燃料に転換したり、水素エンジンや再生可能エネルギー活用の電動建機などへ動力源の更新が行われたりしています。
2023年2月には「令和4年度 建設施工の地球温暖化対策検討分科会」が開催され、革新的建設機械の認定制度が検討されました。
GX実現には革新的建設機械の導入拡大が必要不可欠であり、認定機械使用に対するインセンティブも検討が進んでいます。
まとめ
建築業界で企業がGX実現に取り組むメリットとして、以下3点を解説していきます。
1.公的予算の増加や支援が期待できる
GXは重点投資分野のひとつと位置づけられており、企業がGXに取り組む際に活用できる公的な補助金制度には次のようなものがあります。
・グリーンイノベーション基金事業
・地域脱炭素の推進のための交付金
・革新的GX技術創出事業(GteX)など
今後もさまざまな補助金制度やサポート面の充実が進んでいく可能性が高いのです。
2.企業のイメージアップ
環境問題解決に積極的に取り組んでいる企業は、その実行や成果を社内外にアピールすることによって、企業イメージの向上に繋がります。
GXへの取り組みは国際的なトレンドであり、先進的な企業として国内外の消費者に伝わりやすいため、売上増加に寄与することが期待できます。
3.コスト削減に繋がる
GX実現は省エネへの取組が必須であり、消費エネルギーの削減はコスト削減に繋がります。建設業界でのコスト削減には、建設機械の省エネ化、建設材料の見直しなどが挙げられ、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーの導入を進めることで、さらなるコスト削減に繋がるでしょう。
以上、本記事ではGX(グリーントランスフォーメーション)に関連する法改正のポイントと建設業との関りについて紹介しました。
GXは建設業界への就活で押さえておくべき重要キーワードです。企業研究の際には、企業が取り組む具体的なGX推進計画や実施内容、実行の進捗を確認することを意識していきましょう!
(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)





