【建設業の基礎知識】2026【2】建設経済モデルによる「建設投資の見通し」2026年1月版
わが国の「建設投資の見通し」については、各年度で複数回検証されています。
総合資格ナビでは、2025年8月28日に、(一財)建設経済研究所等が「建設経済モデル」を用いて、2025年1月~3月期と2次速報を踏まえた「2025年度・2026年度の予測結果」を同年7月11日に公表した内容について解説記事を掲載しました。
この更新情報として、2026年1月14日に「建設経済モデルによる建設投資の見通し(2026年1月)」が公表されました。数値変動もあり、2026年度の建設業の動向を示すものになりますので、再び本記事で要点解説を行います。
参考・前記事:【建設業の基礎知識】2025【7】建設経済モデルによる「建設投資(見通し)」について
建設経済モデルとは?
「建設経済モデル」は、建設投資活動を需要動向や各種経済指標などと関連づけた方程式体系で表し、マクロ的な景気の動きと整合する形で建設投資の見通しを描くことを目的とした「マクロ計量経済モデル」です。
建設経済モデルによる予測は、四半期データをもとに向う1~2年のレンジで行い、当該年度や次年度の建設投資の水準、伸び、構成比等について、四半期別や年度別に定量的なデータを得ることができます。
建設投資額(名目値)の推移をグラフ化
2012年からの建設投資額(名目値)の推移を、建設投資額(政府投資・民間住宅・民間非住宅・建築補修)ごとにグラフ化したものが下表となります。(2026年1月更新版)
グラフで2024年度までの建設投資額は、2025年8月29日に国土交通省が公表した「令和7年度(2025年度)建設投資見通し」によるものです。
2019年9月公表分からは、2015年度以降の建築補修(改装・改修)投資額を計上されています。(それ以前はデータがないため未計上です)
グラフの「政府」とは、政府の総投資額(政府建設投資)から建築補修(改装・改修)を控除した投資額を表しています。また、民間非住宅とは、民間非住宅建築と民間土木の合計数値であり、民間建築補修(改装・改修)は含まない数値としています。
各項目は単位未満を四捨五入しているため、内訳の計と合計が一致しない場合があります。
2025 年度「建設投資(見通し)」について
2025 年度の建設投資(見通し)は、前回7月に前年度比2.5%増の75兆5,000億円と予測されていましたが、今回、前年度比4.8%増の76兆6,800億円と修正されました。
政府分野投資は、2025年度当初予算は、国・地方ともに前年度と同程度確保されていて、出来高も堅調に推移しています。そのため名目値ベースでは前年度比で増加、実質値ベースでは前年度比で微増と予測されています。
民間住宅投資は、新設住宅着工戸数が、2025年4月の省エネ基準適合義務化等に伴う、前年度の駆け込み需要の反動で、前年度比で減少が続き、実質値ベースでは前年度比で微減、名目値ベースでは物価上昇の影響で前年度と同水準になると予測されています。
民間非住宅建設投資は、企業の設備投資意欲が堅調で、着工床面積は前年度比で増加が予測され、投資額も前年度比で増加すると予測されています。
2026 年度「建設投資(見通し)」について
2026 年度の建設投資は、前回7月に前年度比5.0%増の79兆2,100億円と予測されていましたが、今回は前年度比5.7%増の81兆700億円と修正されました。
80兆円の大台を超えるのは、1996年度以来で、30年振りとなります。
政府分野投資は、2025年12月に閣議決定された、2026年度当初予算案で、公共事業関係費について、前年度当初比220億円増の6兆1,078億円を計上しており、同日成立した2025年度補正予算案では、2026年から2030年までの5ヵ年で実行する「第1次国土強靱化実施中期計画」の初年度分として、1兆5,500億円の公共事業関係費を計上しています。
民間住宅投資は、新設住宅着工戸数が、前年度の反動減から回復が見込まれ、前年度比で微増するほか、投資額は高付加価値化や大型化等の傾向が継続して、名目値ベース・実質値ベースともに前年度比で微増と予測されています。
民間非住宅建設投資は、企業の設備投資で堅調な動きがみられると想定され、投資額は名目値ベースでは前年度比で増加、実質値ベースでは前年度比で微増と予測されています。
2025年度・2026年度「建設投資額(見通し)」の分野別概況
2025年度・2026年度の建設投資額、政府分野投資、民間建設投資(住宅・非住宅)について、前年対比の増減状況をまとめると下表の通りとなります。
■建設投資額
2025年度は76兆6,800億円(前年度比4.7%増)、2026年度が81兆700億円(同5.7%増)と増加しています。建設費が高騰しているため、単純比較はできませんが、過去最高となった1992年度の建設投資額84兆円等、バブル期後期に並ぶ投資額となっています。
■政府分野投資
2025 年度の政府分野投資は、前年度比3.2%増の23兆1,200億円、2026 年度の政府分野投資は、前年度比7.8%増の24兆9,200億円と予測されています。
なお政府分野投資には、土木と建築(改装・改修を除く)の両方を含んでいますが、土木・建築別に2018年度以降の投資額推移をグラフとしたものが下表となります。
2026年度から始まる「第一次国土強靭化実施中期計画」は、2030年度までに20兆円強の事業規模を予定しており、老朽化したインフラの再整備や、南海トラフ巨大地震、首都直下型地震他、予測されている大規模災害への減災対策など、政府投資分野は、当面、手堅く続いていくでしょう。
2025年度補正予算案では、初年度分として1兆5,500億円が、2026年度初期予算案では、約6.1兆円と前年度並みの公共事業関係費が計上されています。
※「第1次国土強靱化実施中期計画」は過去記事で掲載していますのでご確認ください。
国土強靭化、次期5ヵ年計画を閣議決定!20兆円強の事業計画でインフラ老朽化への対応も推進【速報版】
■住宅着工戸数と民間住宅投資
2025 年度の住宅着工戸数は、前年度比9.8%減の73.7万戸と予測されており、減少要因は、省エネ基準適合義務化等に伴う、前年度の駆け込み需要の反動によるもので、2025年7月11日予測よりも約4万戸下回る予測となりました。
2025 年度の民間住宅投資額は、前年度比1.2%増の16兆3,600億円と予測されます。 住宅着工戸数は減少が予測されますが、物価上昇の影響により投資額は実質値ベースでは前年度比で微減、名目値ベースでは前年度比微増となる予測です。
2026 年度の住宅着工戸数は、前年度比5.5%増の77.7万戸と予測されており、 2025 年度の反動減から回復して、前年度比で増加すると予測されています。
2026 年度の民間住宅投資額は、前年度比4.5%増の17兆900億円と予測されます。 住宅着工戸数は前年度比で増加が予測され、投資額も高付加価値化の傾向が継続すると予想されるため、実質値ベースでは前年度比微増、名目値ベースでは増加と予測されます。
■民間非住宅建設投資(土木+建築)の推移
2018年度以降の民間非住宅建設投資額を、土木・建築別に、2026年見通しまでを推移表としたものが下グラフです。
2025年度の民間非住宅建設投資は、前年度比5.9%増の20兆4,000億円と予測されます。企業の設備投資意欲が堅調であるものの、2025年4月から10月までの着工床面積の実情が前年度比減少しており、着工床面積は前年度並みと予測されます。投資額は、名目値ベース、実質値ベースともに前年度比で増加と予測されます。
2026年度の民間非住宅建設投資は、前年度比6.7%増の21兆7,700億円と予測されます。 企業の設備投資に持ち直しの傾向が続くと想定し、土木も引き続き堅調に推移すると見込まれることから、名目値ベース・実質値ベースともに前年度比で増加と予測されます。
■建築補修(改装・改修)投資の推移
2025年度の建築補修(改装・改修)投資は、前年度比9.4%増の16兆8,000億円と予測されます。 このうち政府建築補修(改装・改修)投資は、前年度比13.3%増の2兆9,800億円、民間建築補修(改装・改修)投資は前年度比8.6%増の13兆8,200億円と予測されます。
2026年度の建築補修(改装・改修)投資は、前年度比2.9%増の17兆2,900億円と予測されます。このうち政府建築補修(改装・改修)投資は、前年度比3.0%増の3兆700億円、民間建築補修(改装・改修)投資は、前年度比2.9%増の14兆2,200億円と予測されます。
2018年度以降、2026年度見通しまでの建築補修(改装・改修)投資額を、政府・民間合わせて推移表としたのが下グラフとなります。
国土交通省の「建築物リフォーム・リニューアル調査」によると、政府建築補修(改装・改修)は、2025年度第2四半期の改装・改修工事の受注高は前年度比で34.1%増となりました。特に学校施設の設置更新については補助金の後押しもあり、引続き省エネルギー対策や施設整備の需要が見込まれるため、堅調な投資が継続することを想定し、2025年度・2026年度も2025年度ともに前年度比増加が予測されます。
民間建築補修(改装・改修)は、2025年度第2四半期の改装・改修工事の受注高は前年度比35.8%増でした。住宅分野では、政府の「住宅省エネキャンペーン2025」の効果が堅調で、建替えから大型リフォームやリノベーション計画へシフトすることにより、今後も堅調な投資が期待されます。
非住宅分野では、設備投資がDX、GX、供給網強靭化などの投資を中心に拡大傾向を維持し、引続き堅調な投資が見込まれます。2025年度は前年度比で増加と予測され、2026年度も引き続き高水準を維持すると想定し、前年度比で微増と予測されます。
まとめ
建設投資額は、翌年度投資も前年以前に建設計画が決定しているため、一気に増減することはありませんが、政府、民間ともに景気動向に左右される傾向があります。
2025年度は、雇用・所得環境が改善する下で緩やかな景気回復が期待されていますが、各国の通商政策の影響や物価上昇の継続による消費者マインドの下振れにより景気が下押しされるリスクが高まりました。
2026年度の景気は、海外経済とともに緩やかな持ち直しが見込まれていますが、米政権の関税措置の影響や、日中関係の悪化、未だ不安定なウクライナ、中東情勢などを含めて、各国の今後の展開や物価動向を巡る不確実性が高く、引き続き十分注視する必要があるでしょう。
わが国では、2025年度は大手建設業で、資材高騰や労務単価上昇の価格転嫁が進んできたことから、売上高や利益は過去最大値を更新している状況がありました。
一方で、建設業の2025年の倒産件数は前年比6.9%増の2,021件に上り、過去10年で最多になり、2013年(2,347件)以来12年ぶりに2,000件を超えました。
背景には中小・零細事業者では、人件費の急騰や工期の延長、建材価格の上昇など積み重なるコストアップ要因に、価格(請負単価)の転嫁が追い付いていない現状があり、多重化する委託-受託構造や人手不足・高齢化など、将来に向けて構造的な改革も求められます。(倒産件数は出典元:帝国データバンク)
大手・中堅の建設企業では、M&Aをはじめとする経営統合やグループ企業化など業界再編の動きが活発になっています。
業界・企業研究では、国際的な経済動向や企業の決算状況の把握、中期経営計画や受注状況から、数年先を予測していくことなど、情報を深堀りして全容を大枠で理解していく姿勢がますます重要となってくるでしょう。
(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)




