「研究開発職」の仕事内容とやりがい、向いている人のポイントについて【建設業の仕事】

建設業界にはさまざまな仕事がありますが、常に技術革新を進めている業界の進歩を支えているのは、日々切磋琢磨して取組んでいる研究開発職です。

建築・土木を学ぶ学生は、学部3年後期になれば、自身の専門領域をどこに置くのか、強く意識するようになります。所属する研究室を選び、卒業研究に向けて自身が目指す課題やテーマを模索するようになります。建設系の学部生では、これと本格的な就活を意識するタイミングがほぼ同時期に訪れます。

建設系学生で設計職や専門技術職を志望する学生は、多くが大学院に進み、専門研究に励み、修士論文へと研究を進めていくなかで、将来も研究を継続できる研究開発職を志向する学生も生まれてきます。

本記事では、建設業界で活躍する研究開発職の仕事や職場を取り上げていきます。

すでに具体的なビジョンをもって研究を進めている人から、研究開発職に興味があって自分に合っているかどうか知りたい人まで、どんな人が研究開発職に向いているのか?適性を判断するポイントも紹介していきますのでご一読ください。

建設業の研究開発職とは?

研究開発職には、大きく分けて「基礎研究」「応用研究」「開発研究」の3つがあります。

研究開発職は、新製品や先端技術の創出を目的とした研究や、実用化を見据えた開発活動を担う専門職です。

特に建設業分野においては、新材料や工法の開発や最適化などを通じて、生産性向上や安全対策の強化などが求められています。研究職と開発職には、事業領域や専門分野ごとに多様な職種が存在し、それぞれ業務内容も大きく異なる点が特徴です。

本記事の限られたスペースで、そのすべてを網羅することはできませんが大枠を理解できるように解説を進めていきます。

研究職の具体的な仕事内容は?

研究職における「基礎研究」と「応用研究」について順番に解説します。

基礎研究とは?

基礎研究とは未開拓分野に目を向けて、新たな発見から研究を深めていくことです。

それは、「0から1を生み出す」地道な研究活動といってよいでしょう。

即時の実用化や製品化よりも、将来的な技術基盤となる未知の現象を解明したり、理論を形成したりすることを目的としており、実験を何度も繰り返して再現性を検証するような、絶えることのない探究心を必要とする仕事です。

■建設業における基礎研究の具体例など

・新材料の探索

超高強度コンクリート、自己修復コンクリート、炭素繊維など、従来の材料を越えた新素材の材料物性や化学的特性を解明し実用の可能性を探ります。

・構造、機能の理論化

地震に強い新たな構造形式や災害時の機能維持など、レジリエントな都市システムに理論的裏づけを求め確立していきます。

・環境、エネルギー技術

建設資材の低炭素化や建設現場に投入されるAIやロボットの基礎理論研究など。

■研究目的の特徴

基礎研究は特定の製品開発(応用研究)とは異なり、長期的な視点で理論の裏づけを獲得することに焦点を当てています。建設分野の基礎研究は、大学や公的研究機関などと産学官共同で行われることも多い分野です。

応用研究とは?

応用研究とは基礎研究で解明された基礎的な技術や知見を元にして、さらに特定の課題解決や新技術の実用化を目指す研究です。

例えば、AIによる自動点検や高性能コンクリートなど新素材の採用、建設工事の工法改善など、安全性や品質・効率を直接向上させる目的で行われます。

■建設業における応用研究の具体例など

・新材料、新素材の現場適用

高耐久コンクリートや軽量部材などを開発し、施工への適用を実証する。

・省力化、自動化技術の活用

AI、ロボット、ドローンなどを活用した自動施工や点検技術を確立する。

・構造解析技術の向上

3Dモデリングや解析技術、パラメーター等を用いて、設計を効率化し高度化をはかる。

応用研究の多くが、ゼネコンやサブコン、ハウスメーカーの研究所や技術開発部門で行われ、実験室や実験場、建設現場などで実験・検証されています。

基礎研究が「原理の解明」を目的とするのに対して、応用研究では「実際の現場でどう役立てるか」に焦点を当てているのです

開発職の具体的な仕事内容は?

開発職には「研究開発職」「商品開発職」「技術開発職」の3つがあります。これらを順番に紹介していきます。

研究開発職とは?

研究開発職とは、研究で明らかとなった成果をもとにして、実際に製品開発を行う職種です。

製品化には市場マーケティングで需要を汲み取ったり、現場での使われ方や顕在化している問題点、潜在化した課題などを把握したりして、解決策を製品に取り入れていくことが必要となります。

商品開発職とは?

商品開発とは、商品企画部門が作成した企画・仕様書に基づいて、商品を具体化する職種です。

企画された商品が実現できるように試作し、試用を重ねていきます。

近年は建設DX推進により、ICTツールや遠隔施工システム、自動運転建機、建設ロボットなど、生産性や安全性向上につながる商品開発が進んでいます。

技術開発職とは?

技術開発とは、研究開発と同様に研究結果に基づいて、技術面を分析して実用化する職種です。

研究開発と商品開発を中継する役割を持つこともあり、実用性の高い技術開発では社会に大きく貢献できる仕事となるでしょう。

研究開発職が活躍するフィールドとは?

建設業界で、研究開発職を募集している職場を紹介します。

1.シンクタンク

研究開発を専門とする業界としてシンクタンクが挙げられます。シンクタンクは、それぞれが専門領域の課題について、研究や分析を実施して、解決へ向けた報告や提言・助言を行う業態です。シンクタンクにはさまざまな領域があり、「研究所」「研究機関」とも呼ばれます。研究に特化した企業が多く、独立・中立的な環境で研究を継続したい方に向いている業界といってよいでしょう。

建設・土木・都市計画分野で、調査・企画・政策提言や技術開発を担う「建設系シンクタンク」には、大手建設コンサルタントの調査部門、設計事務所の研究所、そして建設経済専門の機関などがあります。

2.ゼネコン・サブコン

ゼネコン・サブコンは建設業界では特に研究開発に力を入れています。道路や橋、トンネルなど大規模インフラ工事を請け負うためには、安全で迅速に工事を進める技術を磨く必要があるため、社内の技術研究所で施工技術や商品開発などを進めています。工法や安全技術、省エネルギーに加えて、近年は建設DXやICT施工に関する技術開発が多く行われています。

3.マリコン

マリコンは主に海洋土木工事や港湾工事に注力している総合建設業です。マリコンの研究開発職は、地震や津波、洪水など防災分野における技術開発や、環境保全やリサイクルなどの技術開発、洋上風力発電など再生可能エネルギーに関連する施工法の研究開発も行っています。

4.ハウスメーカー

ハウスメーカーでは住宅建設に関する構造、材料、耐震性能や防災などに関する研究開発を行っています。住宅にはデザインや間取りの他に、安心して暮らせる耐久性の高い家作りや、スマートハウスやZEHなど省エネ、創エネ、エネルギー管理設備の商品開発が欠かせません。コストパフォーマンスを高めることも重要なポイントになっています。

5.建材メーカー

建材メーカーでは建材を開発するための技術研究や、既存商品を改善するための研究開発を行います。製品としての建材だけではなく、建材を製造するために必要な素材や製造技術に関する研究開発を行う企業が多くなっています。

経験者が語る「研究開発職の魅力とやりがい」5つの事例

研究開発職として活躍している人に、魅力ややりがいを感じる点を聞いてみました。その中から5つの事例を紹介します。

1.地図に残る建設物への技術的貢献

自分が研究・開発した技術や材料などが大規模なビルや公共インフラなど、実際の建設プロジェクトに採用されることに誇りを感じます。建設物が完成した瞬間だけではなく、将来に渡り社会を支え続けていくことに大きな達成感を感じます。

2.安全性・快適性を追求し社会に貢献する

耐震技術、防災材料、環境配慮など、人々の生命を守りより良い生活環境を創造する技術開発に直接携わります。日本の厳しい防災基準をクリアする技術力は高く、社会貢献度が高い仕事であることに誇りを感じます。

3.先端技術(建設DX・ICT・AIなど)を現場に実装させる

建設現場のDXを進め、ICTによる自動施工やAIによる生産性向上を実現する研究は、建設業の最先端を担うやりがいが感じられます。

4.専門性を深めて現場の課題を解決する

「現場で発生した問題を新材料で解決する」「施工効率を向上させる」など、建設現場と連携した研究開発が強みです。学生時代に培った専門知識(土木・建築・材料工学)を研究実務でさらに深めて、実証できる仕事に喜びを感じています。

5.持続可能な未来のまちづくりに挑戦

脱炭素につながる新素材の開発や、CLTなどの木材活用技術など、持続可能な開発に貢献できる、環境技術への挑戦は次世代に向けた誇り高い仕事です。

建設業における研究開発職は、地図に残る構造物や人々の安全を守る技術を生みだす「ものづくりの原点」に携わる重要な職種です。

研究開発職に向いている人の特徴とは?

1.粘り強い探究心がある人

想定外の失敗や試行錯誤にも諦めることなく、原因究明を続けられる粘り強さや探究心をもつことが必須条件です。

2.高度なコミュニケーション能力

研究室に閉じこもるだけではなく、現場で施工担当者やクライアント、他部門技術者に協力を求めて、実用化をまとめる協調性や研究成果をわかりやすく説明できる能力が求められています。

3.論理的思考力と計画性

緻密に仮説検証する思考力や、工期・予算を見据えたプロジェクト管理スキルを持つ人が向いています。

4.専門性を高めたい人

建築・土木・環境など専門分野で深い知識を積み上げ、業界の最前線で成長していく意欲にあふれた人が向いています。

まとめ・狭き門でもチャンスはいっぱい!

建設業の研究開発職について、仕事内容や活躍できる業界、向いている人のポイントなどについて解説しました。

研究開発職は建設業界でやや特殊な部門・職種になり、新卒を対象とした大量採用とは無縁なポジションです。しかしながら自身の知識や専門研究を活かせる仕事として前向きに調べていくことは大変有効です。

応募対象としては、研究論文など専門分野で一定の実績が証明できることが望ましいです。研究開発職になるには、耐震や工法、環境保護や建設材料に関する豊富な知識と実際に研究開発に携わった実績が大きなアピールポイントになります。

新卒で最初の配属が研究開発職という例は非常にまれで、施工現場や設計・生産実務を積み、社会人研究者として、或いは大学院に籍を置き、社会人ドクターとして専門研究を続けた結果、研究開発部門や技術研究所に配属されたり、研究開発職として研究機関に転職したりする進路が多くなっています。

ゼネコンの技術研究所で研究開発職として勤務した後に、民間研究所や大学教員に転身していく事例も多く、人生の大半を専門研究や技術指導に関わることも珍しくありません。このように生涯を専門研究に捧げたい方には相応しいレールが引かれています。大学院で指導教員や研究開発職として働いている先輩達に相談しながら、道を切り拓いていきましょう!

総合資格ナビは、研究開発職を目指す皆さんを応援しています!

 

(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)