ミサワホームグループ等4社が月面基地構築技術を共同提案・JAXA研究公募で採択【住宅業界NEWS】

2026年1月22日、ミサワホーム、ミサワホーム総合研究所、YKK、カンボウプラスの4社による共同提案が、JAXA宇宙探査イノベーションハブが実施する第13回研究提案募集「Moon to Mars Innovation」※に採択内定されたことが公表されました。

この提案の研究テーマは、「月面基地構築に資するフレキシブルで施工性の高い空間連結技術の開発」です。

本記事では、この提案の概要と実証に向けた展望について紹介します。

※「Moon to Mars Innovation」とは

JAXAと民間企業等が月探査へのニーズ等を踏まえた出口戦略を共創することで、将来のJAXAによる宇宙探査ミッションと企業等の宇宙事業化の創出を目指す共同研究制度です。

南極から月面へ、住宅メーカーが宇宙へ挑む

ミサワホームとミサワホーム総合研究所は、2017年にJAXA宇宙探査イノベーションハブが実施した、第3回研究提案募集で採択されたことを契機として、南極での研究開発を通じて「フレキシブルで施工性の高い空間連結技術」を培ってきました。

ミサワホームは半世紀以上にわたり南極・昭和基地の建物建設を支援してきた実績があります。

2019年には「南極移動基地ユニット」を設計し、JAXAや国立極地研究所と連携した実証実験も実施しています。南極という過酷な環境における居住空間づくりで蓄積したノウハウを、月面へ展開していく計画なのです。

宇宙産業の市場規模は、2040年までに1.1兆ドルに達すると見込まれており、月面開発は国際的な競争が激化しています。

その持続的な推進には、「輸送コスト」と「施工の手間」という大きな課題が存在します。地球から巨大な建物をそのまま月へ運ぶのは非現実的で、月面の環境で複雑な溶接工事や組立作業を行うことも、宇宙服を着た飛行士やロボットにとって非常に困難です。

そこで、小型モジュール型の居住ユニットを地球から運び、月面で連結することにより居住空間を段階的に拡張する方式が有力視されるようになりました。

この連結技術の要となるのが、今回、集結した4企業による共同提案です。

中核を担うミサワホームグループは、建築物の工業化技術や断熱・気密性能に関する高度な知見とノウハウを提供します。さらに、居住ユニット間の連結構造にはYKK製のスライドファスナーとカンボウプラス製の膜材が採用されています。

建築では、建物の接合には一般的にボルトや金具が用いられています。今回の提案では、ファスナー技術を使い、より簡単で気密性の高い接続を目指しています。

これに膜素材を組み合わせることで、軽量かつ柔軟に基地を拡張できるシステムの構築を目指しているのです。

2028年3月までに宇宙実証を見据えて研究を開始

この技術は共同提案4社に加えて、「Moon to Mars Innovation」での採択を受けて、JAXAが宇宙環境に関する情報・知見を提供する役割でプロジェクトに参画し、産学連携で宇宙実証を見据えた共同研究を開始していきます。

今後のスケジュールでは、2026年3月までに宇宙環境での利用を見据えた「空間連結技術」確立に向けた具体的な研究項目を策定します。

その後、2026年4月から2028年3月にかけて、宇宙特有の環境条件を踏まえながら、要素レベルで宇宙実証も視野に入れた技術開発に取り組んでいく予定です。

下表は本共同提案の概要です。

(参考)JAXA 宇宙探査イノベーションハブHP

まとめ

本研究が高い実現性を予感させる理由は、その背景にある「南極」での実績です。

ミサワホームは半世紀以上にわたり、南極・昭和基地の建設を支援してきました。

ブリザードが吹き荒れ、作業時間が限られる極地において、いかに素早く、確実に暖かい住まいを作るか。その極限環境で磨き上げられた「工業化技術」と「簡易施工」のノウハウが月面という次のフィールドで活かされようとしています。

本提案のベースとなっているのは、2019年に南極で行われた「南極移動基地ユニット」の実証実験です。そこでは、専門的な知識を持たない作業者でも容易に建物の拡張・縮小ができる「セルサイクル工法」が検証され、その過程でYKKのファスナーやカンボウプラスの膜材の有用性がすでに見出されているのです。

さらに重要なのは、これらの宇宙技術開発が一方通行ではない点です。宇宙開発で培われた知見は、すでに私たちの生活へと還元され始めています。

2023年にミサワホームが発売したトレーラーハウス「MOVE CORE」は、南極での移動基地ユニットの技術を応用したものです。

災害時には即座に被災地へ移動し、安全で高品質な居住空間を提供するこのプロダクトは、まさに「宇宙技術の地上実装」の好例といえるでしょう。

写真出所:ミサワホームプレスリリース

「月面基地を作る」挑戦は、遠い未来の話のように聞こえるかもしれません。

しかし、そこで求められているのは、限られた資源を有効に使い、過酷な環境から人間を守り、快適な暮らしを作るという人類にとって普遍的な課題への回答です。

南極から宇宙へ、そして再び地上へ。日本のものづくり企業が描く技術の循環は、私たちの未来の暮らしをより安全で豊かなものへとアップデートしていくでしょう。

出典:JAXAの「Moon to Mars Innovation」に採択内定され 月面拠点の構築に資する空間連結技術の確立を目指す(ミサワホームプレスリリース)

 

(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)