
世界初の3Dプリンター駅舎「JR初島駅」で利用開始、約2時間で組み上げ完了【建設NEWS】
セレンディクス株式会社は、JR西日本グループと共同で、JR紀勢本線「初島駅(和歌山県有田市)」に、世界初となる3Dプリンター技術を用いた駅舎の建設を行いました。この新駅舎建設は、2025年3月26日に完了しましたが、7月22日から利用が開始されました。本記事では、セレンディクスプレスリリースをもとに新駅舎の概要をご紹介します。
世界初の3Dプリンター製「初島駅新駅舎」の概要
新駅舎は面積9.9㎡で鉄筋コンクリート造平屋建てです。駅舎内部には、2人掛けのベンチのほか、券売機と簡易ICカード改札機を備えています。また、外壁には積層痕を意匠として生かし、有田市特産品のミカンとタチウオをモチーフにした装飾を施しています。新駅舎の設計、施工体制は下記の通りです。
初島駅 新駅舎建設までの経緯
JR初島駅は、1948年に完成した木造駅舎で運用してきましたが、現在は無人駅となっており、駅舎の老朽化に伴う保守コストや、維持管理の効率化が課題となっていました。
一般的に、駅舎など線路に隣接する建物の建設工事は、安全面から夜間に行う必要があり、通常の建設工事より長期化する傾向があります。鉄筋コンクリート造駅舎の場合には、屋根や壁など躯体の設置工事に1~2カ月を要します。
今回のプロジェクトでは、セレンディクスが3Dプリンター住宅で培った技術を応用し、終電から始発までの「6時間」以内で躯体工事を完了することを目標に掲げました。
工事当日までの準備(3Dプリンターによるパーツ出力)
駅舎の部材は、熊本県水俣市の協力工場(立尾電設株式会社)で製造しました。建設用3Dプリンターを使い、専用の特殊モルタルをロボットアームの先のノズルから吐出してパーツを出力します。プリンターで出力したパーツは、内部に鉄筋とコンクリートを充填して一体化させ強度を向上させています。製造に要した日数は7日間で、完成した合計4つのパーツをトラックで現地に輸送しました。
2025年3月25日、午後11時57分に最終列車が通過した後に作業を開始しました。駅前ロータリーにパーツを積んだ合計4台のトラックを順番に入れ、荷台からパーツをクレーン車で吊り上げて、直接、建築場所に設置していきました。
パーツの設置や組み上げ作業はスムーズに進行し、約2時間で工程を完了しました。この2時間のうち約45分は車両入替えで要しており、実質の組み上げ作業時間は、1時間15分でした。設置終了後は、運搬用金具の取り外しや固定作業などを行い、翌朝午前5時には全工程を終了することができました。
まとめ
施工当日の様子は多くのメディアを通じて発信され大きな反響を呼びました。国内だけでなく、ニューヨーク・タイムズで報じられるなど、北米、欧州、中東、アジアなど様々な国と地域で拡散し、国内外300以上のメディアで驚きをもって迎えられました。
〈一部抜粋〉
欧州メディア「日本人はわずか6時間で3Dプリントの駅を建設した」(Antena3 CNN)
インドメディア「日本がまたもや脅威の偉業を成し遂げた。鉄道駅を一夜で建設」(ABP News)
世界初となる「新築駅舎1棟」をわずか6時間で建設した本事例により、今後も3Dプリンター技術を活用した建設工事はますます増加していくと思われます。
最後にセレンディクス株式会社がプレスリリースに掲載している、同社の概要について掲載します。
出典:世界初の3Dプリンター駅舎、JR初島駅が利用開始(セレンディクスプレスリリース)
(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)