積水ハウスが共同開発「木杭による環境配慮型の新地盤補強工法」12月より販売開始【住宅業界NEWS】
積水ハウス株式会社と、地盤改良などを手掛ける兼松サステック株式会社は、環境負荷低減を実現する新たな地盤補強工法「SH-KPパイル工法」を共同開発し、2025年12月1日より販売開始しました。
国産間伐材の活用で林業活性化やCO2排出量削減を実現
「SH-KPパイル工法」は、国産スギの間伐材などを有効活用した木杭を採用し、国産材の利用拡大による林業活性化や、二酸化炭素（CO2）の排出量削減による環境負荷低減を実現します。
この工法は、兼松サステックが2009年に開発した「環境パイル工法」の地盤適用範囲を拡大した新工法で、高品質な防腐・防蟻処理を施し、高耐久性を確保する地盤補強法です。
「SH-KPパイル工法は2025年7月24日に、一般財団法人日本建築総合試験所にて、性能証明を取得しました。
軟弱地盤の地盤補強工法は、大きく分けると鋼製杭やコンクリート杭を補強材として打ち込む工法と、地盤そのものをセメントなどで固める工法があります。
「環境パイル工法」は木製杭を補強材として打ち込む工法で、杭と土の摩擦力によって生じる周面摩擦力と安定地盤まで杭先端を到達させることによって支持する先端支持力によって、建物を支持する工法です。
「環境パイル工法」では杭長が短くなる地盤条件では十分な摩擦力が得られず、支持力が小さくなるため、採用しづらいという課題がありました。「SH-KPパイル工法」は、これを改良して、高い先端支持力が確保でき、適用可能な地盤の範囲を拡大することに成功しました。
「SH-KPパイル工法」で工夫した2つの改良点
「SH-KPパイル工法」で高い支持力の確保に成功した、2つの改良点について紹介します。
■地盤調査方法の改良
「環境パイル工法」では、地盤調査を簡易的な手法で行いますが、先端支持力の算定に用いるN値（地盤の固さを表す）の上限値が10までの評価となっていました。杭長が短くなる地盤条件では周面摩擦力が小さくなるため、先端支持力への依存度が高まります。
そこで「SH-KPパイル工法」では、より精密な地盤調査を実施することで、N値50まで採用できるようになり、高い先端支持力を確保することが可能となりました。
■木杭の先端部を保護する工夫
木杭をN値50レベルの硬質地盤である支持層まで、杭先端部を到達させるには、「環境パイル工法」で使用する杭では強度上難しかったため、「SH-KPパイル工法」では、木杭先端を鋼製の部材で保護することで、材料の品質を損なうことなく、より硬い地盤である支持層に到達させることが可能となりました。
N値20以上の硬さをもつ地盤に杭を打ち込む際、先端に鋼製部材を取り付けて強度を高めるものですが、キャップ状の部材をはめ込み、中央をくぎで固定するだけというシンプルな構造を採用しています。（下図）
これら2つの改良により硬質地盤に適用できるようになった「SH-KPパイル工法」では、杭に高品質な防腐・防蟻処理を施すことで、地下水位より浅い位置に打設できるよう工夫しており、耐用年数60年以上の耐久性を確認しているとのことです。
木杭は最大長6mですが、3本を継いで最大18mの深さまで施工が可能です。
性能証明では、地上3階建て以下、建物高さ16m以下、延べ面積1500m2以下（平屋は3000m2以下）の構造物に採用でき、延べ面積100m2の住宅に適用した場合、40本程度の木杭を使用する想定となります。
「SH-KPパネル工法」によるCO2削減効果
積水ハウスと兼松サステックは、今後「SH-KPパイル工法」を積極的に採用し、環境負荷低減を目指していきます。兼松サステックの試算によると、延べ面積が100m2程度の住宅に「SH-KPパイル工法」を適用した場合、戸建て住宅1棟に対して、鋼管杭やコンクリート杭と比べて約10tのCO2削減効果が期待できます。（下図）
出典：木杭を使用した環境配慮型の新地盤補強工法「ＳＨ－ＫＰパイル工法」を共同開発し、12月1日より販売開始（積水ハウス ニュースリリース）
（本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。）
