特集【13】土木設計の仕事で活躍するには?【建設知識~土木編~】

土木系の学部学科で学ぶ学生ならば、将来は土木設計で活躍したいと思う人は少なくないのではないかと思います。ただ土木構造物については、建築以上に専門性が高く、実際にはどのような流れで仕事をしていくのかイメージしにくい面があるのではないかと思います。

そこで、本記事では土木設計の仕事内容や取得すべき資格などについて紹介していきます。

土木設計の仕事とは?

土木設計とはインフラ整備に必要な構造物・施設の「設計」を担う仕事です。

インフラ整備に必要な構造物・施設の一部は民間事業者が発注者となる場合もありますが、その大半が国、地方自治体、公共団体や施設運営団体などが発注者となっています。

土木構造物・施設には次のようなものが挙げられます。

・鉄道施設

・道路施設

・エネルギー施設(ガス、電力等)

・ダム

・河川施設

・治山施設

・上下水道施設

・港湾施設

・空港施設

このように社会全体で利用されている、建物を除く施設のほとんどが、土木業務のなかで設計されており、土木設計は社会を支える重要な職種として知られています。

土木構造物を形態別に分類すると、下記のような種類となります。

・橋梁、高架橋

・平面、曲面構造物

・空間構造物

・搭状構造物

土木設計では業務のすべてに「図面に起こす工程」が必要です。また図面の作成に伴い、数量算出、金額算出、構造計算や安全性の検討、地質条件の把握など、理系分野における幅広い専門知識が求められます。

一般的には、土木構造物の方が建築構造物よりも規模が大きく、また専門性が高くて、設計技術や仕様などもそれぞれ構造物ごとに定められています。

土木設計の工程・流れとは?

土木設計では以下に示す工程を経て、構造物等を設計していきます。

上記のうち、「計画・調査」の工程では建設コンサルタント会社や調査会社・測量会社などと協力しながら設計段階に入る前の業務を進めていきます。

なお、基本設計に入る前には、調査位置・範囲の選定など設計の立場から関わることも少なくありません。

詳細設計では、実際に施工するために必要な実施設計書を作成して発注用図面とします。建築設計とは異なり、発注者側が施工する構造物の仕様を全て指定していくのが土木設計の特徴で、施工者は発注者(設計者)が決めた通りの材料、工法で指定された通りに構造物を完成させます。

成果物作成は設計した土木構造物の設計を総括して発注者内部で報告とする主旨と、工事期間は長期にわたり、公共性の高い構造物を建造するため、事前に一般公開用の設計概要や模型などを制作して報道・発表することも必要です。

土木設計で使用する主な技術・ソフトについて

土木設計の実務では、多様なソフトウェアが活用されており、土木設計で欠かせない「構造の安全性」「法令順守」「地形・地質のデータ活用」などに対応しています。

特に近年では、建設DXの観点からBIM/CIM対応ソフトの活用が必須となっています。

■土木設計で使用する代表的なソフトウェア

BIM/CIMソフト

CADソフト

解析ツール

GIS(地理情報システム)技術

自動化ツール(RPAなど)

これらソフトウェアは大学の専門研究でも使用されることが多く、土木設計志望者は関連研究室で使用経験を積んでおくとよいでしょう。

土木設計の仕様について

前項で示したように、土木構造物には施設ごとに細かく決められた「仕様書」があります。これら仕様書は、国土交通省が公開している「土木設計・測量・地質調査等の業務関係共通仕様書(案)(令和7年度)」にて詳しい工程や検討情報がまとめられています。

土木設計を行う際には、受注した業務ごとに適切な知識に基づき、仕様書に沿った設計をしなければなりません。本記事では、仕様書の分類と内容について、列記しますが、国土交通省が公開している仕様書にリンクしておきますので、必要な方は確認をしてみましょう。

注)仕様書は数十頁から200数十頁にわたる膨大な量になりますのでご注意ください。

土木設計・測量・地質調査等の業務関係共通仕様書(案)令和7年度

第1編 共通編

第2編 河川編

第3編 海岸編

第4編 砂防及び地すべり対策編

第5編 ダム編

第6編 道路編

※以上は、国土交通省の該当頁にリンクしています。

実際の土木設計業務では上記の仕様書だけではなく、全国の自治体や組織、協会などが公開している「基準書」「手引き」「要領」などを用いて検討を行う必要があります。

適用する情報については仕様書共通編の巻末に掲載されているため、常に最新版をチェックすることが大切です。

土木設計は大変だがやりがいがある仕事

土木設計は大変な仕事であるとよく言われています。その主な理由は次のようなものです。

・公共インフラに関わる設計であるためミスが許されない

・行政・施工・住民など多くの関係者との調整が必要である

・納期が限られているため残業が発生しやすい

土木設計を実施している行政部門や建設コンサルタント業界では、近年、働き方改革を進めており、大幅な改善を図るとともに、今後も継続ができる仕組み作りに取り組んでいます。また人材の育成や定着を目指して、業界の魅力を伝える活動にも取り組んでいます。

前記事では、これらの取組について紹介していますので土木設計を志望する方はぜひ確認をしておきましょう!

特集【12】建設コンサルタント業界が進めている働き方改革について【建設知識~土木編~】

土木設計に向いている人とは?

どのような人が「土木設計に向いているのか」?適性など向いている人の特徴をまとめていますので、参考としてください。

1.計算・分析など理数的な思考力を持っている人

2.慎重で責任感が強く正確に進められる人

3.新しい知識を学び続ける意欲がある人

4.チームで協力して作業ができる人

5.まちづくり・都市計画に興味がある人

土木設計は個人で図面を作成する知識や技術以上に、多くの人(設計者・外注業者・発注者・住民)とコミュニケーションを取り、意見や仕事をまとめあげていくことが重要な仕事です。

すべてが計画通りに進むわけではなく、時には意見が対立したり、計画を変更したりする柔軟性を兼ね備える必要がありますが、多くは業務を通して習得されていくものですので最初からすべてに秀でている必要はありません。

土木の仕事自体が思うようにならない大自然や人々を相手として、さまざまな調整をしながら成し遂げていくものであるといってもよいでしょう。

土木設計に必要な資格には何があるか?

土木設計は特に資格がなくても開始できる仕事です。しかし、資格を取得したほうが有利に業務受注・進行ができる点がありますし、知識や技術、経験の裏付けとなる資格として、必携とされている資格があります。以下に、取得すべき資格をまとめました。

土木設計職が最終目標として取得を目指したいのが技術士(建設部門)であり、土木設計における最高峰の国家資格です。

技術士は、国主体の案件受注のほか、自身で建設コンサルタントを立ち上げる際に必要な資格となります。30歳までに取得できない場合は、先にRCCM(シビルコンサルティングマネージャー)を取得しておくと安心です。

RCCMは設計業務共通仕様書等において規定されている管理技術者、照査技術者または業務担当者として、業務の適正な執行を管理、業務成果の照査、および業務に関する技術上の事項の処理の任にあたる者と定義されています。

対して、土木設計技士の資格は品確法(公共工事の品質確保の促進に関する法律)にもとづき正しい設計ができることを証明できる資格です。

新たに注目を集めているBIM/CIM管理技士資格とは?

「BIM/CIM管理技士資格」は、BIM/CIM に関する専門資格です。民間資格ですが、2015年には国土交通省登録資格に認定されるなど、建設DX時代において特に重要性や注目度が高まっている資格の一つです。

BIM/CIM導入と活用が当たり前となっている現在では、取得意義が高まっている面があると思います。受験資格は土木技術関係業務の実務経験が3年以上あるか、指定学科を卒業した学歴+土木技術関係業務の実務経験2年以上などとなっており、資格試験の内容なども、本年変更されていますので注意が必要です。

また近い将来にはより上位の「BIM/CIMマネジャー」という国家資格が創設される予定です。建設DX時代において、BIM/CIMに関する知識と実務経験は、今後ますます必要とされていくでしょう。

土木設計職のキャリアプランについて

土木設計職のキャリアプランは、従事した先にもよるため、決して固定されたものではありませんが、通常は実務経験と保有資格に応じて昇進昇格を重ねていくことになります。

土木設計の実務では、毎年、仕様書に変更があり、仕様書、マニュアル、基準書を読み込むことが重要であり、実務者はセミナー講習に参加するなど、常に最新の技術などスキルアップや知識習得を続けていく必要があります。

厚生労働省が公開している土木設計技術者の平均年収は603.9万円と発表されていますが、日本全体の平均年収である461万円よりも高い数値を示しています。また平均年収のピークは50〜54歳の720.9万円で、安定した収入を期待できる仕事でもあります。

まとめ

土木設計は社会インフラを支える重要かつ専門性の高い仕事です。責任の重さや業務の大変さから「きつい」と言われる場合もありますが、キャリアや年収、将来性の面でも非常に魅力的な職種といえるでしょう。なにより国やまちを支える社会インフラの整備になくてはならない職務であり、設計を通してつくられる構造物は公共性が高く、その計画段階から完成までを担うやりがいに満ちた仕事です。

土木設計に興味がある方は、本記事を参考にさらに業界研究を進めていきましょう!

 

(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)