「建設コンサルタント」の仕事内容とやりがい、向いている人のポイントについて【建設業の仕事】
建設コンサルタントとは?
建設コンサルタントとは、道路・鉄道・ダム・上下水道などの社会資本(インフラ)整備において、企画立案・調査・計画・設計・施工管理・維持管理まで、建設プロジェクトのすべての段階で専門的な技術サービスを提供する業界・企業です。
国や地方自治体は社会資本整備事業を進めています。社会資本とは、道路や河川、上下水道、電気など私たちの生活に欠かせないもので、一般的には「インフラ」と言われています。
下図は代表的な社会資本(インフラ)を図示したものです。
これら社会資本整備(インフラの建設)は、公平性・透明性の観点から、設計と施工を別の事業者で分担することがルール化されてきました。
これを「設計・施工分離の原則」といいます。
社会資本は多岐にわたり、国や都道府県・地方公共団体が計画的に整備事業を進めていくには、調査結果から将来を予測する分析力や、高い専門知識が求められます。建設コンサルタントは独立した責任ある立場で、発注者に対してプロジェクトの全課程を技術的に支援していきます。
具体的には企画構想から基本計画策定を行ない、事業者の企画立案・計画策定を支援します。
調査・設計を通して整備方針が決まれば、建設コンサルタントが詳細設計を行い、事業者はその設計に基づいて、建設会社に工事を発注します。
建設コンサルタントは、工事の際に、建設会社の施工を管理する役割を担い、事業者を支援します。
工事完了後も維持管理をしていく必要があります。建設コンサルタントは定期的な施設点検を行い、修繕や長寿命化計画などを策定して事業者に助言していきます。
下図は、「社会資本整備の流れ」を図示したものです。
社会資本整備において、建設コンサルタントが果たす役割は、建築設計事務所にも似ていますが、社会資本整備事業の「ものつくり」以外のこと、例えば都市・まちづくりの計画策定や景観保護、防災計画や都市交通など、地域の特性や抱えている課題をとらえ、土木建設の幅広い技術と知見で解決策を導き出し、将来にわたって安全で快適な毎日を支えられるよう、インフラをプロデュースしていくのです。
次項では、より具体的な仕事内容について解説していきます。
建設コンサルタントの具体的な仕事とは?
建設コンサルタントは、発注者(国・地方自治体)の立場に立ち、中立・公正な立場で技術的なアドバイスやサポートを提供する専門家です。
その業務を通して、快適で安全な生活を支え、自然災害から人々を守るなど、社会貢献度が高い仕事です。
建設コンサルタントは、実際に建設工事を行う「建設業」とは異なり、企画・設計・管理を中心とする技術サービスを提供する「サービス業」に分類されています。
建設コンサルタントが担う、具体的な仕事内容は以下の通りです。
■企画
インフラ整備など事業の構想を練り、基本方針や事業概要、事業計画を策定します。
■調査・計画
現地調査(測量、地質調査など)、環境影響評価、交通量調査、文化財調査など、多岐にわたる調査を実施して、プロジェクトの実現可能性を検討し、基本方針に盛り込みます。
「企画」と「調査・計画」は同時進行で進められますが、その成果は、主に国や地方公共団体の事業決定や予算化、事業計画の策定に向けて提供されるものです。
■設計
調査計画の結果に基づき、工事に必要な設計図書を作成します。
道路、橋、トンネル、ダム、河川、上下水道、公園など構造物の詳細設計に加えて、景観設計や機能設計を行うこともあります。
国や地方公共団体は、建設コンサルタントが提示する基本設計をもとに、設計発注計画を詰めていき、建設コンサルタントに実施設計の発注を進め、施工業者(ゼネコン等)に工事発注を行います。
■施工管理(監理)
建設工事を行うゼネコン等の工程を管理し、施工が設計図書通りに安全に行われているか、品質・コストなどの監理を行います。
■維持管理・保全
インフラ完成後は、点検や補修計画、長寿命化計画など、長期的な視点に立ったサービス支援を継続していきます。
■その他
新規・既存インフラの整備以外にも、近年は国や地方公共団体が課題としている、地方創生に向けた地域活性化対策や都市再開発、防災・減災対策、海外インフラ支援など、扱う業務は多岐にわたります。
経験者が語る「建設コンサルタントの魅力とやりがい」5つの事例
建設コンサルタントは、魅力とやりがいにあふれた仕事です。経験者の事例から紹介します。
1.自分が関わったインフラが地図に残る
道路、橋、トンネル、河川改修、上下水道など、公共インフラ整備の計画や設計に携わるなど、自身が担当したプロジェクトで完成した構造物が形となり、何十年も地域の人々の生活を支え続ける様子を目の当たりにできる点が魅力です。
未来に残る仕事を担っている誇りと達成感に大きなやりがいが感じられます。
2.地域社会の安心・安全に貢献できる
自然災害が多い日本で、自身が提案した防災・減災対策やインフラ整備計画が、実際に地域住民の安全を守り、災害リスクを低減させていることを実感できる点にやりがいを感じます。
社会貢献度が高く、人々の生活を根本から支えているという使命感を持つことができます。
3.多様な専門家と協力し、大規模プロジェクトを推進する
国や地方自治体から依頼される大規模事業において、地質調査、測量、設計など、様々な分野の技術者と協力して、プロジェクト全体をマネジメントする役割を担います。
一人では成し遂げられないような、大規模かつ複雑なプロジェクトを、チーム一丸となって計画から完遂まで導くことに達成感を感じます。
また経験を積むごとに、多様な専門知識と調整力が身につくことが実感できます。
4.最先端技術や新しい知識に挑戦できる
人口減少や高齢化といった社会課題に対して、新しい技術(AI、IoT、ドローンなど)を活用した維持管理手法や効率的な計画立案を試す機会が多く、従来のやり方にとらわれず、常に新しい知識や技術を取り入れながら課題解決に取り組める点に魅力を感じます。
専門性を深めつつ、技術者として継続的に成長できる環境にやりがいを感じます。
5.発注者や地域住民からの感謝を直接感じられる
計画段階での住民説明会や、プロジェクト完了後の発注者からの評価などを通じて、直接の反応や感謝の言葉を受け取ることができます。
クライアントや利用者の喜びや笑顔に直結していることが実感できた時には、大きなモチベーション向上につながります。
このように建設コンサルタントの仕事は「街や人の未来を考え、人々に幸せをもたらす夢のある仕事」です。
「人々の暮らしに役立ち、社会から求められる仕事」であり、社会貢献性の高い、やりがいのある仕事といえるでしょう。
建設コンサルタントに向いている人の特徴とは?
建設コンサルタントに向いている人には、次のような特徴が挙げられます。
1.課題解決能力・論理的思考力がある
複雑な社会インフラの課題に対し、専門知識や調査データを駆使して本質を見抜き、解決策を導き出す力が必要です。論理的に物事を組み立て、筋道を立てて考えることが得意な人が向いています。
2.知的好奇心と探求心を持ち、学び続けられる人
常に新しい技術や法規制を学び、専門性を高める必要があります。知的な探求心を持ち、学習意欲が高い人は、変化の多い業界で成長し続けることができます。
3.責任感が強く、粘り強く業務に取り組める人
大規模プロジェクトでは困難に直面することも多いため、プレッシャーの中でも諦めずに、最後までやり遂げる粘り強さと、強い責任感が求められます。
4.コミュニケーション能力と協調性がある人
発注者、協力会社、地域住民など、多様な関係者と円滑に意思疎通を図り、信頼関係を築く能力が不可欠です。チームで成果を出すためにも協調性は重要です。
5.社会貢献に意欲的で、ものつくりが好きな人
公共の利益に貢献し、人々の生活を支えるインフラを作ることにやりがいを感じる人、形に残る「ものつくり」に魅力を感じる人は、仕事へのモチベーションを高く維持できます。
これらの特徴を持つ人は、建設コンサルタントで活躍できる可能性が高いと言えるでしょう!
建設コンサルタントに向いていない人の特徴とは?
1.長時間労働や体力的な負担に自信がない人
建設コンサルタントでは、急速に「働き方改革」が進んでいますが、業界全体に慢性的な人手不足の傾向があり、プロジェクトの締め切り前などは長時間労働や休日出勤が避けられない状況がありがちです。現場への出張や立ち会いも多くなるので、元気で活動的な人でなければ、体力的な厳しさを感じることがあるかもしれません。
◆「建設コンサルタントの働き方改革」については、下記特集記事を掲載しています。
特集【12】建設コンサルタント業界が進めている働き方改革について【建設知識~土木編~】
2.臨機応変な対応が苦手な人
建設プロジェクトには、予期せぬトラブルがつきものです。計画通りに進まない状況や、頻繁な転勤、毎回、新しいプロジェクトへの適応が求められるため、変化に柔軟に対応できない人やストレスを感じやすい人には向いていません。
3.コミュニケーション能力を重視しない人
発注者のニーズを正確に把握し、協力会社や現場作業員など多数の関係者と連携して業務を進める必要があります。
黙々と一人で作業をしたい、チームで協力関係を築くのが苦手という人は、業務遂行に苦労する可能性があります。
4.プレッシャーに弱い、責任感が重いと感じる人
社会資本整備という公共性の高い事業に携わるため、責任は非常に重大です。税金が投入される事業であることからも、業務に対するプレッシャーや責任の重さに耐えられない人には向きません。
5.新しい知識や情報・技術の学習意欲が低い人
建設技術は日々進化しており、関連する法律や規制も更新されます。技術者として常に専門知識や最新情報をアップデートし続ける必要があります。
学び続ける意欲がない人は、長期的に活躍することが難しい業界です。
建設コンサルタントに必要な資格・スキル
■建設コンサルタントに求められるスキル
・専門知識:土木工学、環境科学、建築、地質など
・分析・企画力:課題分析、解決策の立案、技術提案書の作成能力。
・デジタルスキル:CAD、BIM、最新の測量技術(GPS、ドローン等)、データ分析スキル。
・問題解決・論理的思考力:複雑な問題を解決し、論理的に思考する力。
・コミュニケーション・マネジメント能力:発注者や関係者との調整、プロジェクト管理能力。
■建設コンサルタントに必要な資格
建設コンサルタント会社に入社して仕事を始めるのに、必須な資格は特にありません。入社後はキャリアアップや大規模プロジェクトに参画するために、実務経験を積みながら資格取得を目指していくのが一般的です。
1.技術士 (建設部門など)
建設コンサルタント業務における管理技術者(照査技術者)の要件となる、最も権威のある国家資格で、専門性と技術力の高さを証明します。
2.RCCM(シビルコンサルティングマネージャー)
建設コンサルタント業務に特化した民間資格で、技術士と並び管理技術者等の要件となるなど、公共事業で重視されています。
◆技術士とRCCMは調査・設計等業務委託における資格要件
建設コンサルタント業界では、技術士とRCCM(シビルコンサルティングマネージャー)が二大重要資格とされています。国や地方公共団体のインフラ整備業務は入札で勝ち取らなければなりませんが、調査・設計等業務委託においては「管理技術者(照査技術者)※」を定めて配置しなければならず、道路・河川・砂防等の管理技術者の資格要件は、技術士かRCCMの資格保有者なのです。
そこで、建設コンサルタントでキャリアアップや独立を目指すには、両資格が必備資格ということになります。
※管理技術者(照査技術者)は、建設業法で定める建築・土木工事の監理技術者のことではなく、主に建設業法や測量法、そして各省庁・自治体の設計業務等共通仕様書(契約書第10条、11条等)に基づいて配置される、調査・設計技術者です。
管理技術者は工事全体の管理・統括、照査技術者は成果物の技術的な内容をチェックする役割を持ちます。
◆RCCM・技術士比較表
RCCM資格について詳しく知りたい方は、ぜひ下記記事を参照してください。
RCCM資格を紹介!建設コンサルタント志望者必見の徹底解説【建設業の資格】
以下、3.~7.は扱う業務分野で役立つ推奨資格といえるでしょう。
3.測量士・測量士補
測量計画の立案や精度保証に関わり、インフラ整備の土台を支える重要な資格です。ドローン測量など最新技術にも関連します。
4.土木施工管理技士(1級)
大規模土木工事の施工管理が可能で、土木分野で実務経験を証明するのに役立ちます。
5.建築士(一級・二級)
建築設計・監理業務を行う場合に必要となる資格です。建築物件を主体的に扱う建設コンサルタントでは、必須の位置づけになるでしょう。
6.情報技術関連資格
ICT分野のニーズが高まる中、情報技術に関する資格も有利になることもあります。
7.地質調査技士
地質調査業務に携わる場合に関連します。
まとめ
建設コンサルタントは、社会インフラの最上流(企画・調査・設計)から携わり、人々の生活を支えるやりがいに満ちた仕事です。単にモノを作るだけでなく、社会の仕組みや生活の基盤を「考え、つくる」仕事であり、専門性を高めながら社会貢献と自己成長を同時に追求できる魅力的な職種といえるでしょう。
一般社団法人 建設コンサルタンツ協会によると、国土交通省に登録している建設コンサルタントの企業数は2023(令和5)年3月時点で3,959社あり、大手から特定分野に特化した建設コンサルタントまで、多数の企業が存在します。
建設コンサルタントの事業分野は、下表21部門に分かれています。
総合資格ナビでは、建設コンサルタントの業務額や業務分野別ランキングも掲載していますので、業界研究・企業研究の参考としていただければ幸いです。
2025年 建設コンサルタント業務額上位30社・業務分野別上位10社ランキング【建設知識 土木編】
大変な仕事といわれることが多い建設コンサルタントですが、経験を積み、技術士・RCCMなど専門資格を取得することにより、高い市場価値とキャリアの安定性、ダイナミックなプロジェクトへの挑戦と、幅広い分野でスキルアップに挑戦できる仕事です。
また近年、急速に進む「働き方改革」により、自動設計など最新技術の導入や、ワークライフバランスが考慮されるようになった点などは魅力的な業界といえるでしょう。
総合資格ナビでは、建設コンサルタント業界での活躍を目指す建設系学生の皆さんを引き続き応援していきます!
(本記事は、総合資格naviライター kouju64が構成しました。)








